32年間消防士として勤務しました。消防業務は、命の危険と隣り合わせの仕事で、役職とは別に階級があり、規律に厳しい職場でした。

達成感を味わう瞬間もあれば、他の職業とは異なる緊張感があり、息を飲むほど壮絶な事故現場で活動することもしばしばありました。

不景気な時代でも、地方公務員として安定した職業ではあり、やり甲斐もある仕事でしたが、いつか仕事を辞めて歌と話で食べて行けたら・・・、
そんな夢がいつしか芽生えました。

しかし、歌を本業にして食べて行けるだろうかと考えると、不安の方が大きく、脱サラの一歩を踏み出すことができませんでした。

迷い、悩み、大阪や東京にセミナーを受けに行き、独立のための準備をはじめたものの、決断するきっかけがつかめずにいました。

そんな中、同じ署に勤務する先輩が病気になりました。

普通の職場と違って24時間勤務なので、文字通り寝食を共にする仲間です。
春が来れば定年になり、その後は旅行に行ったり、自分の好きなことをやるんだと楽しそうに話していました。

しかし、定年の数ヶ月前にがんが発見され、短期間でみるみる痩せてしまいました。

結局、入院したまま定年を迎え、数ヶ月後には他界してしまいました。

仕事柄、たくさんの人の死に接して来ましたが、身近な人が、そんなにあっけなくいなくなってしまうという事実にショックを受けました。
今までありきたりだと思ってきた「一度しかない人生」という言葉を、真剣に考えました。

いつまでも明日があると思い、先延ばしにしてきた自分の「夢」に今向かわねば、絶対に一生後悔する、そう思いました。
そして、ついに「早期退職願」を提出しました。

夢に向かうことは簡単そうで
簡単ではないけど
迷うことや悩むこともあるけれど
ほんとに俺は生きている
そう自分に言いたいために
今日も僕は夢を生きます
「脱サラ」より