私が消防に入った頃は、今みたいにちょっとしたことで苦情電話があったり、投書されたり、訴訟問題になったりということがまず無かった時代でした。

当時は「インフォームドコンセント」なんて言葉は聞いたこともありませんでした。

そんな時代でも、極端に丁寧な接遇になる場合もありました。

まぁなんと言うか、バイオレンス組の方を搬送する場合です。

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「こらぁ、はよ車出さんかい!」

と要請者様はドスのきいた声でおっしゃるわけです。

「なにぃ、お前なぁ、なにを人に指図しとんじゃ! そもそもお前らヤクザな人間がだなぁ」

なんて勿論言うはずもなく、

「はい! すぐに出します」

と即答します。

「兄貴にもしものことあってみぃ、お前ら全員ただじゃすまんからなぁ!」

「はい! 分かっております。ちゃんとすみやかにお連れいたします」

なんて感じです。

こういうの、何度か体験しています。

私が就職する少し前、地元でバイオレンス組の抗争がありました。

それもまた元消防職員が拳銃で対立バイオレンス組員か組長を撃ち殺し、全国ニュースになりました。

余談ですが、撃たれた本人が助けを求めて近くの家に行ったそうです。

ちょうどその家では飲み会をしていて、けっこうアルコールの入っていた主が、その撃たれて出血している怖い人に説教をしたらしいです。

「あんたなぁ、心を入れ替えて真人間にならないかんぞ」などと。

その酒席は某会社の偉いさん宅に社員が集まっての会だったようで、私の高校の同級生の女子が参加していました。

後日その同級生から聞いたので事実のようです。

そんな悠長に説教なんかしとる場合じゃないだろ! と彼女は思っていたそうです。

話がそれました。戻ります。

その急な病に唸っていた「兄貴」を運んで署に帰ったら、仲のよかった先輩が、

「そんなんまだええわ」と自分のエピソードを語り出しました。

先輩がそっち系の負傷した方を運んだ時など、同乗した子分が日本刀を搬送中ずっと、救急隊長だった先輩の背中につきつけていたそうです。

「おい、どうなんだ! 兄貴は大丈夫だろうなぁ」

と聞かれると、

「は・はい!」

と、いつもより1オクターブ高い声で返事をしていたそうです。

やはり「接遇」というのは大切ですね。

そして、極度な小声でひっそりとこうも言いたいです。

「ぼ・・・暴力反対!!」