エコノミー消防官の話

在職中は仲良しだった同僚もたくさんいるんですが、生活が変わるとなかなか会うことがありません。

ずいぶん前に一緒にバンドをやったことのある後輩がいるんですが、今はどこの署に配属されているのかさえも知りません。

素晴らしいエコ意識を持った男でした。

「エコ」といっても、環境のエコロジーではなく、経済のエコノミーの方です。

彼は洋楽ロックコピーバンドをやっていて、定期的にライブハウスで演奏していました。

「それは不法行為ではないか!」とか、

「著作権侵害に該当するのではないか」

などのお叱りメールをいただいても、今では彼と職業も異なり、顔を合わせる機会もないし、それを伝達する意思もないので、そこはひとつよしなにお願いいたします。。

洋楽のメジャーバンドの曲はコピー譜が楽器店に並んでいますが、1冊がひとつのアルバム全曲のコピー譜だったり、ベスト曲集だったりで、1曲ごとの楽譜バラ売りはありません。

そして、普通はアルバム全曲コピーすることはありません。

彼は、ライブでやる予定の曲が入ったコピー譜を行きつけの楽器店に買いに行き、そのまま家に帰って練習・・・・・

しないで、まっすぐコンビニに行ってその予定曲のページだけをコピーし、Uターンしてまた楽器店に戻るのです。

「すいません、間違えて買っちゃいました。ほんとはあっちのを買うつもりだったんです」

と言って、もう一曲やる予定の入っていたコピー譜にチェンジしてもらうのです。

素晴らしいです!!

我が家のウォシュレットが壊れた時、その彼に聞きました。

「どこかいい水道工事屋さんを知らん?」

「何言ってるんですか、ネット通販で、ウォシュレットだけを買うんですよ」

「でも取替工事せんといかんだろ」

「自分でするんですよ。そんなことにお金使ったらいけませんよ」

「そうか、じゃそうするかなぁ」

「あっ、貯湯式の奴はいけませんよ。すぐ湯がぬるくなちゃいますから。それに保温するのに電気代がかかりますから」

「へぇー、研究しとるなぁ。じゃあ、便座の温度のこともあるし、節電機能付きの奴がいいかなぁ」

「さぁ、僕は便座の温度入れたことがないから分かりません」

そういう意味じゃ「エコロジー」な男です。

この男はスラッとした二枚目で、努力家で、優しくて先輩に好かれ、後輩にも慕われる奴です。

この男は、笑い上戸という弱点を持っていて、私はいつもそこを刺激してやりました。

毎日無線の試験をやるのですが、その時は必ず私から離れるようにしていました。

私がそばにいるだけで、無線機に向かってしゃべろうとすると吹きだしてしまうからです。

彼が持っている携帯無線機の呼び出しがまわって来る頃に、こっそり近づき、彼が応答する寸前に後ろから顔を見せます。

パブロフの犬状態で、私の顔を見ただけでプルプルするのです。

「ち・ちゅうぶ・・・く・くらよし・・・107メ・・・メリ・・・メリットぉ・・・プゥー!」

と吹いてしまい、後で当直に呼び出され、こっぴどく叱られることになります。

kunren

常に緊張を強いられる職場の中で、あえて小さな笑いを提供する私って、やはりこの頃から「人の心を明るくしたい」という使命感を持っていたのですね。

私が就職した当初はまだ大らかな時代だったのですが、年々公務員に対する一般の目が厳しくなり、何かあるとすぐに投書なり市・町会議員に告げ口されるようになりました。

ある時、ある先輩が救急車を運転していて、病院収容後に、運転席の隊長と雑談をしながら署に帰る時に、つい笑ってしまい、その光景をある市会議員さん見られたのです。

またその先輩が前歯に金歯を入れているので、笑うとギラリと目立ってしまうのです。

公務中に歯を見せて笑っていた、ということでえらい勢いのクレームが来た、ということがあり、全職員に「笑うな」とお達しがあった直後にK君と救急出動しました。

当時、救急隊になると彼が機関員(運転手)になり、私が隊長になることが多かったのです。

傷病者を病院に収容して帰りに、

「K君、間違ってもTさんみたいに金歯ギラギラさせて笑うなぁよ」

と言ったとたん吹きだし、それでも左手で自分の口を隠しながら運転していました。

その後は、一緒に出動するとき彼は必ず大きなマスクをするようになりました。

彼が現在も、うつなどにならずに元気に現場で職務を遂行できるのも、あの頃あんなふうに私が職場のメンタルヘルス対策に真摯に取り組んだおかげだと思っています。

ちなみに、「笑いと健康」というテーマで講演依頼が来ることがあるんですが、こんな話はまったくしません(笑)

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