私は若い頃、よく金縛りになっていました。

私は霊が見えたりするほうの人ではないし、見ないほうが絶対にいい、と思っています。

数年前までは霊の存在も否定的でした。

子供の頃から頻繁に金縛りになっていて、寝ている自分の周りを行列になって歩く人達の声が聞こえたり、烏帽子をかぶった神主さんのような人が、私が寝ている布団の隣に座っているのが見えたり、ということがありました。

が、そんなものは熟睡する前の幻覚みたいなもんだと思っています。

仲良しの職場の先輩で、霊感が強いと自ら言っていた先輩がいて、ある夏の暑い夜に、仮眠室に寝ずに、講堂の机の上に横になっていることがありました。

どうしたのか、と聞くと、

「来た、親子で。この前、交通事故であいつらが救急に出た時に連れて帰ったんだわ」

と言うのです。

もちろん、私は100%信じていませんでした。

が、面白いので詳しく聴きました。

確かに、数日前、別の職員が出動した救急で、親子が亡くなるという悲惨な交通事故がありました。

当時のK署の仮眠室は、真中に通路があり、両サイドが畳敷きになっていて、職員は通路側を頭にして縦列で並んで寝ていました。

先輩が寝ていると、救急車の駐車してあるところのドアから親子の霊がやって来て、寝ている自分の顔の上で、キーホルダーをチリンチリンと鳴らしたんだそうです。

たまらずに、講堂に移って横になったと言うのです。

それを聞いた後輩達がビビりまくり、

「石川さん、俺、怖いです」

などと言うので、

「お前なぁ、考えてみろ。今までこの救急車の中で何百人の人が亡くなったと思ってんだ。もし霊がいるとしたら、救急車ん中、超満員でわしら入れんがな」

と言いました。

ぜんぜん納得していませんでしたが(^_^;)

ちなみに、霊の存在は否定していながら、私は怖い話が大好きでした。

夜勤の時など、住職をしている友人から聞いたり、霊が見えるという友人から聞いた話をしては、後輩を怖がらせていました。

夜間の庁舎見回りというのがあって、それがまた絶好の脅かしタイムでした。

筋骨隆々ででかい男なのに怖がり、という仲良しの後輩がいました。

見回り時間が近づくと、私らは目配せをして配置につきました。

展示用の防災頭巾や防煙マスクをかぶり、何か所かに分かれて待ち受けるわけです。

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数分後には絶叫が聞こえてきました。

当直司令は、何事が起ったかと身構えるんですが、そこで私が、

「また、なんかじゃれとるんですわ」とごまかします。

まぁこんな息抜きがあったから32年間勤務できたのかなぁ、と思います。

そして、その怖がりな後輩が、奥さんと付き合っている頃の話です。

奥さんは、たまに霊が見える人らしいのです。

二人で夜のドライブに出かけ、ある山の頂上付近にある展望台の駐車場に車を停めたそうです。

まあ、交際中なので、そこで愛を囁きあっていたのか、それ以上の行為に及んでいたのかどうかまでは、この際テーマではないので、追及しないことにします。

奥さんは、そこで車の近くに霊がいて、こちらをうかがっているのが見えたそうです。

で、その未来の旦那が超怖がりなので、それを話したらパニックになるだろうと、ずっと我慢して、山からおりて町中に入ってから話したそうです。

素晴らしい配慮ではありませんか!

もちろん、後輩は、町中で聞いてもフリーズしたことにはかわりありません。

よくあるホラー映画みたいに、突如幽霊が現れたら、間違いなく彼女を置いて、いや、押しのけてでも逃げ騒ぐだろうと思われます。

夜の署の食堂で、そんな話に花が咲き、深夜まで仮眠することもなく語り続けたものです。

いい年してもイタズラ好きな私は、驚かしたり、怖がらせたりする方法をいろいろ編み出しました。

幸い、消防署には素晴らしい素材がふんだんにあるのです。

まず、救助訓練で使うダミー人形があります。

damy

訓練用なのである程度重量もあり、顔はマネキンみたいで、あまりリアルではないものの、髪もあります。

顔は、しょっちゅう訓練で使われているので傷だらけで、暗いところで見るとけっこう怖いルックスになっていました。

それを夜間の庁舎見回りコースに、事前に配置しておくのです。

懐中電灯の明かりに照らし出されたダミー人形が、「チャイルドプレイ」のチャッキーよりはるかに怖い顔で浮かび上がったはずです。

各署には、防火広報用に、腹話術人形があります。

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あれ、お年寄りが見ると、「可愛い~!」となるんですが、保育園に行くと、何人か「怖い!」と言う子がいます。

よくみると、可愛いと言うより「怖い」顔ですよね。

K署以外の署は、全て仮眠室は個室になっています。

そこで、後輩が夜勤中に、部屋に忍び込み、布団をめくってその腹話術人形をもぐりこませるわけです。

人形内部で、操作者が片手で操って目とか口を動かせるようになっているんですが、口をビローンと開けた状態で固定させておくわけです。

後輩の夜勤が終わってしばらくすると、仮眠室から「ギャー!」と悲鳴が響くので、私が駆けつけ、わざと大きい声で、

「○○君、何を考えてるんだ! 仮眠している者の迷惑だろうが、いい加減にしろ!」

と、一喝するのです。

仕返しに、その後輩は、数時間後に、私が寝ていると思って、こっそりとドアを開けようとしました。

腹話術人形を私の布団に入れようとしているのを、即座に察知した私が、大声で、

「コラー!!」と怒鳴ると、ビックリして、

「ギャーッ!!」と声を上げました。

百戦錬磨の私に挑戦しようなんざ、一生早いのです(^_^;)

ちなみに、一番怖いのは、CPR実技用のレサシアンです。

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これはもう顔がリアルに作ってあって夜中だと、人形だと分かっていても、見ると一瞬ハッとします。

これを投入すれば効果絶大ですが、非常に高価で、もし壊しでもしたら、しかもイヤズラに使ったなんて知られたらえらいことなので、残念ながら未投入です。

やはり、職場でもこんな「遊び」「笑い」「息抜き」が必要です。

そうじゃないと、事故現場で悲惨な状況の真っただ中に突入したりするストレスは解消されません。

仕事も機械も道具も、精度の高さだけではなく、「遊び」が必要ですね。