意外に知られていませんが、消防っていろんなことをやっています。

一般的には、というか、本来業務は火災、救急、救助なのですが、ほかにもいろいろやります。

まず、交通事故があると、救急出動し、状況によっては救助工作車も出て、救出します。

車両前部が衝突によってつぶれた場合、変形によって足が挟まれていることが多いのです。

そして、交通事故でけっこう多いのがエンジンオイル漏れです。

怪我人がいなくても、道路上にオイルが漏れているとすぐに消防に連絡があります。

もしかしたら、それは全国的にそうだというわけではないかもしれません。

基本、消防本来の業務ではないからです。

道路管理をやる部局の業務なのです。

国道であれば国だし、県道であれば県の担当部局なのです。

交通事故現場であればすでに消防が処理剤を用いて処理していることがほとんどですが、怪我人がいなくて救急車が出ない場合でも、やはり消防車両で処理に出かけます。

なので、本来担当部局も消防を当てにしているのが実態です。

夜間にいたっては担当者に直に電話をかけるようになっていましたが、出たためしがありません。

警察さんも、オイル漏れがあればすぐに消防へ連絡します。

何事にもまず「住民サービス」と言われてしまうのですが、本来法令に基づいて担当部局が処理するのが本当ではないか!

と思っていましたが、実態はそんなふうに消防は「なんでも屋」状態傾向にありました。

それも、かつての上司が消防組織法や消防法を理解していなかったからというのも大きかったと思います。

道路維持管理課と話し合いをしても言いくるめられて帰ってくる始末です。

「うちにスズメ蜂が巣を作っていてえらいことです!」

という119番も、シーズンにはかかってくるのですが、今は駆除業者を紹介するなどしていますが、かつては上司によっては「出ろ!」という人もいました。

駆除している間に本来業務の火災があればどう対応するんだ、という発想がないのです。

「ミミちゃんがぁ! ミミちゃんが大変なんです!」

愛猫のミミちゃんが橋の欄干に登って降りて来ない、という要請がありました。

それを、行って救出して来い! という上司もいたのです。

確かに、要請者にとっては家族同然のミミちゃんかもしれません。

しかし、それに対応したとしたら、ペットがケガをしたら全部救急隊が出なければならなくなるではありませんか。

ただでさえ人間相手の救急出動件数は年々増加の一途をたどっているのに、ですよ。

救急要請が重なる時は重なるもので、同時に複数の要請が入ることなんてザラなんです。

管轄署の救急車が出払ったら、他の管轄署救急車が出動するわけですが、それ以上重なると、救急車が病院収容して次の現場に急行するまでに、消防車両に乗って応急処置をしに行くこともしばしばありました。

そんな状況でペットの対応をしていたら納税者たる市民は、そりゃ怒るでしょ。

なのに、たまにニュースで他県の消防機関がペットを救助して、すごい美談に仕立て上げてたりします。

いかがなものかと思うわけですよ、私としたら。

しかしかつて、上司によっては「出ろ!」という人がいたんです。

テレビのそんなニュースを見るから、出ないと市民から非難されるんではないか、とそっちを危惧しているわけです。

私が消防に入りたての頃、まぁはっきり言って「美青年」とは言い難いビジュアルだったかもしれませんが、それでも爽やかな細面で、ぱっちりとした一重マブタの目を見開いて、バシッと、

「署長、あなた消防組織法の第1条をちゃんと把握しているのですか!

消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、水火災又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うことを任務とする。

とあるではないですか。その猫は『国民』に該当すると考えているんですか。

まぁ、千歩譲ってその猫を『国民の財産』と捉えたとしても、その状況は災害なんですか?

それとも昇任試験で馬鹿のひとつ覚えみたいに『第1条を記せ』なんて毎回出題しているくせに、あなた自身は理解していないんですか!

おなたのような無知蒙昧な輩に、署長になる資格は断じてない!」

と厳しい口調で言って、、、

やりたいとは思うわけですが、「上司が『カラスは白い』と言ったら、カラスは白いんだ!」と言い聞かされて来た私は、同僚と、

「こいつ、アホや」と目配せをして、うなだれながら車両に乗り込んだのです。

事実そのミミちゃんは消防機関によって救出されました。

ずいぶん前の話ですが。

jhyoushi

kiji

この記事がきっかけで、週刊女性自身の「公共マナーを考える」という特集で私のコメントが掲載されました。