今年、消防OBとして出初め式の案内状が来ていました。

もちろん、見に行く気は毛頭ありませんでした。

だって、寒いじゃないですか(笑)

32年間勤めたので、その間、おそらく25回くらいは出初め式に出たのではないかと思います。

残りの7回のうち、1回は昭和天皇が崩御された年で、もう1回は職員の不祥事で取りやめになったのと、あとは署で当番勤務をして出なかった年が5回くらいでもあったと思います。

私の元いた消防の出初め式は、最近になって県の防災ヘリを要請したり、はしご車を使った訓練を披露したりと、見せる演出を考えるようになったんですが、寒い時期の河川敷に観覧に来る人はごくわずかです。

鳥取県には東部・中部・西部と3つの消防局があります。

だいたい似たような時期に出初め式があり、さらに各市町で消防団の出初め式もあります。

なので、来賓の祝辞は、「県知事は所用のため、副知事の私が代読いたします」というパターンです。

そのほか、局長訓示があり、広域連合長、連合議会議長などの祝辞があります。

さらに、優良職員表彰的なものがあります。

その間職員は、雨が降ろうが雪が降ろうが、制服姿で整列し、「きょうつけぇい! やすめぇー!」などの号令をかけられて、延々と話を聞かなくてはならないのです。

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毎年、出初め式の数日前は、職員の関心はどんな防寒対策を講じるか、という一点に絞られます。

ぱっと見は、白カッターシャツに制服、としか見えないのですが、ちゃんと下には各人が工夫をこらした対策が施されているのです。

参加職員は100名近くですが、その大半の職員が、おそらく式の数日前からホームセンターに買物に行っているのです。

ホッカイロ的なもの、貼り付け式の普通のサイズのものから、靴中に貼り付けるやつなど。

カッターシャツの下に雨合羽を着こむ者、フリースを着こむ者、上下つなぎの防寒着を着る者など様々です。

私は、山登りをしていたので、吸湿速乾性の下着を着て、その上に山用のレインウェア、その上に薄いフリースを着て、白カッター。

もうパンパンの肥満児状態です。

下は、同じく吸湿速乾性のタイツを履き、レインウェアの下、そしてズボン。

足には、その時の気象により、靴下を2重に履き、そらにそれをビニール袋で包み、半長靴を履きます。

場所が河川敷なので、雪が積もっていたり、あるいは水たまりだらけだったりして、合皮の半長靴ですが、水がしみて来るのです。

しかも、河川敷は風が強く、体温を容赦なく奪うのです。

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白手袋を着用するのですが、プラスチックグローブ(手術用の薄い手袋)を下にはめ、その上に白手袋を二重にはめるのです。

激しい雪の時は、メガネに雪が解けずに付着したままで、整列して長広舌を拝聴している身なので、メガネをはずして拭くわけにもならず、次の一斉放水に移る時に転ばないようにするのが大変でした。

当日の気温、風速、降雪の有無など、毎年状況は違うのですが、すべての条件が最悪な年は、もう来賓の話なんて聞いていません。

寒さで体を震わせながら、容赦なく準備した挨拶を語り切ろうとする来賓の顔を、ひたすら睨みつけるばかりでした。

「皆様の希望に満ちたお顔を拝見いたしますと、一地域住民として、まことに心強く」

などと言っている言葉を聞いて、震えてしかめたこの顔のどこが希望に満ちているのだ! と、推定8割、いや9割の職員が思っていたはずです。

「休め」の態勢で、腕を後ろに組んだ状態で聞いているので、少しでも強く温もりが感じられるように、背中に貼ったホカロンをギュッと押さえるのでした。

靴中に貼ったホカロンは出初め式が始まった30分後くらいには、1℃も足にカロリーを伝えることもできなくなります。

風速によっては、腹部、背部にそれぞれ何枚も貼ったホカロンがまったく効果を示さなくなることもよくあります。

苦行です。

ただひたすら苦行です。

これが、ギャラリーの100人でもいれば、私としてもこの式典に意義を見い出せるんですが、まばらなギャラリーを目にしながら、心はひたすら帰宅後にいかにぬくもるかに意識は集中するのでした。

しかし、気象はなかなか予想がつかないものです。

何度か著しい誤算がありました。

バッチリと防寒対策した体に、季節外れのポカポカ陽気で、体にびっしり貼り付けたホカロンが容赦なく体を加熱し、汗がダラダラ流れた年もありました。

「栄えあるぅ20××年を象徴するようにぃ、輝かしい日差しが皆様のぉ」

ナメとんか! おっさん、わしら暑いんじゃ。頼むからはよ終わらせてくれんかぁ、そのダラダラ話を。毎年おんなじ文面やないかい!

と、もしかしたら思念が音声化するんではないか、というぐらい心で叫び声をあげていました。

後輩の話によると、今年の出初め式は穏やかな天気でつつがなく終了したそうです。

荒天じゃなかったのが、とても残念です(^_^;)