消防ってめっちゃおいしいやん!

運動神経も体力も劣る私が、なぜ体力勝負の消防に就職したのか、ということなんです、問題は。

大学4年になって就活を始める前に、東京に残るか、鳥取県へ帰るか、迷いました。

学校の勉強はほとんどやらず、好きな小説ばかり読みふけっていた私は、基本的には働かずにひきこもって本の山にうずもれていたかったんです。

社会に出て、魂を売り渡して、身も心も資本主義の奴隷と化した上司にアゴで使われたくない!

70年代フォークソングを聴いて思春期を過ごしたわたくしは、退廃的な4畳半ソング的世界にひきこもりたい、と切望しました。

でも、ひきこもる場所もないので、それならなんとか本に関係した仕事がしたいと思いました。

普段は行かない学校に行き、就職ガイダンスを受け、出版カンケーの仕事につきたい旨を申し述べました。

国語・社会系にはめっぽう強く(本だけは読んでましたから)、就職模試の一般教養部門だけは予想以上の好成績だったので、

「関東なら、もちろん講談社とか集英社とかはぜっっったいに無理だが、ちーさい、すごーくちーさーい出版社だったら、なんとか紹介できるよ」

と言われたのです。

いろいろ迷ったのですが、出版社は断念しました。

危ないところでした。

思わず、基本的なミスを犯すところでした。

私はあくまで読書が好きなだけで、編集とか企画とか書店周りの営業とか広告集めとか、そーゆーことが好きなわけではないのです。

編集者の書いた文書を読むと、退社後に寝る間を惜しんでバーやらスナックやらで飲んではグダをまくのが日常なようです。

そんな生活を送れば、読書なんかできないではないか!!

その頃すでにつき合っていた彼女と結婚の約束をしていて、帰省して一緒に住む方向に二人の意思は固まったのです。

同級生達が次々内定をもらった話をするのに、私はいっこうに決まりませんでした。

時代は超就職難で、さらに鳥取はとことん田舎です。求人があること自体が非常にレアなケースでした。

途方にくれている私に、親戚のおっちゃんが囁いたのです。

「達ちゃん、消防署の求人が市報に出とったぞ」

「ダメ!ダメ! 俺は火を消したりよおせんわ。体育会系じゃないし、危ないことはしたないわ」

と、即座に断りました。

それでもいっこうにひるむ気配を見せずに、おっちゃんは語るのです。

「あんなぁ、達ちゃん、消防なんかなぁ、火事消しに行く以外は何にもすることあらへんのだぞ」

「おっちゃん、でもなぁ、俺は火事場に行くこと自体が怖いわ」

「何を言っとるんだ、火事なんてほどんどあらへんわ。年に一回あればいいほうだ」

「マジで!?」

「それに勤務して次の日はまるまる休みだぞ。休みが多すぎて退屈するくらいらしいぞ」

「マ・マ・マジでか!?」

これこそ天職ではないか!!

そう思いました。ヨダレが出るくらいニヤニヤしていたんだろうと思います。

本、読み放題やん!!

「でも、競争率高いぞ」というおっちゃんの声はすでに意識から遠のいていました。

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