消防のくせに!

「おお、消防が来た。何しに来たぁ?」

私が火災原因調査をやりはじめた頃に、大きな火災がありました。

夜中に召集を受け、調査にあたりました。

その近所の人達が避難している場所へ、質問調書を取りに先輩と2人で行った時のことです。

酔っぱらったおじさんが私らを見て言いました。

「こいつら馬鹿ばっかしですわぁ。おい、何しに来た?」

一瞬私は状況を理解しかねました。

救急出動などで絡まれることはあっても、質問調書を取る時に、しかも関係ない人に絡まれたことなどそれまでなかったのです。

先輩に、「Yさん、このおっさん誰?」と小声で聞きました。

先輩は、顔をしかめて囁きながら、相手にするな、と言いました。

この頃は、「消防のくせに」などという罵声を浴びることもしばしばありました。

苦情の電話をかけてくる人の口調も、そういう感じの話しぶりが多かったのです。

「だから、隣のゴミ焼きの火が危ないから、すぐに注意しろ! お前らはそれが仕事だろう! 早くしないと○×議員に言うぞ!」

なんてのはしょっちゅうでした。

もう言いたい放題です。

「お前ら若いモンじゃ話にならんから、署長とかわれ」

何か抗弁でもしたら、

「おい、お前の名前はなんだ? 市長に言っておくぞ」

こんな感じです。

もちろん、市会議員がすべてそうではありません、ごく一部の特定議員さんがそうでした。

署長に面会に来る時も、「おいお前、署長はいるか?」、とこんな感じです。

我々市町村職員は議員さんの使用人みたいな扱いでした。

市民にも個性的な人がいるので、一方的にからまれることもよくありました。

そんな人に限って、議員を使って自分の要望をねじ込ませようとするのです。

消防署の車庫前に自分の車を横付けにして、来署した議員さんがいました。

緊急車両の真ん前にです。

一分一秒を争う出動時に、そんな車があったらいったい何分到着時刻が遅れるか、という想像力すらないのです。

それを指摘した消防職員に、その議員は激怒し、

「お前の名前は? お前は一生出世させないからな!」

と言い放ったそうです。

冒頭の話に戻りますが、「こいつら馬鹿ばっかし」発言の人の所有地の野焼きが燃え広がったことがありました。

ダイオキシンが問題になるより前の、まだゴミ焼却や野焼きに対しておおらかだった頃です。

消火後に本人に注意しました。

「いやあ、すいませんなぁ」

「『火煙発生届け』を事前に提出する必要があるって知ってますよね。しかも、日没までという条件を知ってますよね。消火の用意もないし、見張り人もいなかったし」

「いやまぁ、焼けたというほどのもんでもないし。うちの土地だしなぁ」

「なんならもう一回裏に行って見てみますか? これだけ焼いて火事じゃないって言うんですか!」

10年ぶりでもはっきり顔を覚えているその人に、いつもは仏の石川なのに、5割増しのボリュームで、変身後の大魔神のような顔で言っていました。

「すいません、すいません」

晩酌のアルコール摂取量が10年前よりずいぶん少なかったのか、絡んで来ることもなく、少なくとも表向きは低姿勢で謝罪の言葉を連呼するのでした。

やはり人間、野放図に慢心してはいけませんね(^_^;)

ちなみに、いかに自分の財産だと言っても、自分の家に火をつけたら放火の罪でしょっぴかれますので、念のため。

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