脱サラ願望を刺激してくれた上司

思えば、脱サラ願望はずっと前からありましたが、本気で辞めようと思ったのは、さかのぼること4年半前のことです。

いつもどおりに出勤し、事務所に入って順次あいさつをしてまわり、当直司令(その日の出動隊最高責任者)に歩み寄りながら、

「待てよ、こいつに挨拶することもなく、背を向けて、さっさとどこか行きたいところに行くっていう選択もアリだよな」

と思ったのです。

その日の当直は、「空気が読めない」というより「空気を読む気がまったくない」人でした。

必ず相手の嫌がる毒舌を吐かねば気が済まぬタイプで、年上、年下にかかわらずその速射砲を浴びせるのです。

おそらく何人ものプチうつ患者を生み出してきたに違いありません。

私は、前書いたように「ハムラビスト」なので、あんまりしつこく言われると言い返していました。

その元上司はモロに反撃されると、それ以降は言わなくなる傾向があるので、何度か反撃しました。

言いやすい相手には徹底的にからみ、相手が打撃を受ければ受けるほど、悦びを感じるタイプなのです。

何を言われても平気とはいえ、受け応えするのがおっくうで、いつか早期退職をするにしても、あと何十回この人の相手をしなければいけないかと思うと、やってらんねえなあ、とあらためて思ったのです。

そうか、マジで自由になろうと思えばなれるじゃん!

その時は、はじめて脱サラがリアリティを帯びて感じられたのです。

よおーし、辞めるぞー!!

そう思うと、心の中をそよ風が爽やかに通り抜けたんです。

予想どうり、その上司は何やら憎まれ口を叩きましたが、その時の私にはそれさえも鳥のささやきに聞こえました。

ちなみに、私はその人のモノマネも得意でした。

それから早期退職を意識して、デールカーネギーの「道は開ける」とか、ナポレオン・ヒルとか、「成功の9ステップ」とか、自己啓発系の本を読みまくりました。

すると、どうもこの口の悪い空気読む気皆無男は、自分に与えられた試練なのだな、と認識せざるを得なくなりました。

「自分が変われば、受け止め方を変えれば、うまくいく」

どうもそういうことなんだぞこれは、と思いました。

そして、これが典型的な「自分は変えられても、他人は変えられない」ということでもあるのだぞ、とも思いました。

こいつは私の修行のために、あえてヒールを演じているのだ。

そう思ってみようとしました。

runing

しかし実践は困難を極めます。

でかい腹は悪役レスラーっぽさを十分備えてはいるものの、速射砲を浴びると、とても演じているように思い込むことができませんでした。

「おい、石川君。お前、非番の日に歌ってまわって副業になっとるんとちゃうんか!?」

と、言われた瞬間に、

「なに言ってんですか。あんたこそ、非番の日にめいっぱい農業して、作物を市場に出荷してるじゃないですか。あれこそ副業というもんでしょ。

て言うか、どっちが本業だか分からんくらいでしょ。ちゃんと申告してます?

そもそも副業の定義知ってますか?
弁護士やってる友達に送ってもらった判例のコピー見せましょか。

Yさん、あんた金があるあるっていつも自慢するけど、同じ給料表に基づいて給料もらってんのに、あんただけが自慢しまくるほど蔵建てて金持ちっておかしいんと違いますか。

莫大な副収入を得とるとしか考えられませんな」

と、言っていました(^_^;)

「そ・そんなことはない。農業機械を買って赤字だ!」

と言ったきり、二度とその話題に触れることはなくなりました。

これはマズイ、自分を変えずに他人の態度だけを変えてしまっただけという結果になってしまったではないか、と反省しました。

実践の困難さが身にしみました。

その直後に上司の机に置いてあった本のタイトルを見て、めまいがしました。

「他人に理解される人、誤解される人」

その本のタイトルを目にした署員は、全員同じセリフを口にしていました。

「お前に理解も誤解もあらへんわ!」

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