初任の頃、同期6人のうち、私だけが強力にいびられたのです。

私がどんくさかったというのもありますが、6人のうちただ一人東京帰りだったので、やはり首都生活のそこはかとなく洗練された物腰や言動が気にくわなかったのだと思います。

いくら東京弁を使わなかったとは言え、コテコテの方言も使えませんでした。

実際に就職して仕事をしてみて初めて、ここまでディープな方言があったのか、と思ったくらいでした。

「あいつはカッコつけてるぞ!」的な視線を照射されていました。

そういう意味では、その頃の私は空気が読めてなかったのです。

最初の1、2年はそんな感じでしょっちゅう叱られたり、怒鳴られたりしました。

年数が経つにつれ、次第に言葉を崩していきました。

あまり崩し過ぎると、「やっぱりあいつは生意気だ」となるので、その微妙なさじ加減を試行錯誤しました。

酒席でのタメ語混在しゃべりで、一気に距離をつめることによって、先輩諸氏とも仲良くなりました。

一方業務で、特に救急搬送中に、傷病者に生年月日や住所を尋ねる時なども、どうしても恥ずかしそうに丁寧な言葉でしゃべるので、

「こんな時に、住所まで言わんと運んでくれんのか!」

と怒鳴られたことが何度もありました。

丁寧なつもりが、どこか慇懃無礼な感じを与えたのでは、と考えるようになりました。

先輩の対応を見ていると、コテコテの方言で話しかけていました。

それには意外にすんなり答えるのです。

「石川君、あんまり丁寧にしゃべるから相手が警戒するんだぞ。もっと普通にしゃべらんと」

と先輩は言いました。

しかし、その先輩すら、時には傷病者を怒らせることもあったのです。

どうもこれは相手に受け入れられる万人共通のしゃべり方はなさそうだぞ、と考えるようになりました。

それからは、相手に合わせて口調パターンをチョイスするようになりました。

インテリ風な気むずかしいおじさんを運ぶ時に、

「すんませんなぁ、住所と生年月日を教えたってぇな」

なんて言葉づかいで迫ると、ムッとさせてし
まったり、

逆にワイルドなガテン系のお兄さんに、

「どのような経緯で、こんなに大きなケガするに至ったんですか?」

なんて感じで聞けば、

「うるせぇそ、てめぇ!」

なんてワイルドなご指摘を受けることになります。