119番通報の話を何度か書きましたが、ほんとにいろんな電話が入ってきました。

いきなり英語でまくしたてられたり。

最初に取った職員が何度も聞き返していたのですが、たまたま隣に座っていたのが語学に堪能な私だったので、即座に的確なアドバイスを与えることができたからよかったのです。

「待て、これはどうも英語だぞ」

なんとこれほど的確な判断能力を持った職員が、この鳥取県の消防職員の中にほかにいたでしょうか。

私のそのひと言で相手が欧米人であることを理解したのです。

「こう言え、ぷりーず、すぴーく、すろーりー、すろーりー、オッケー?って」

「はい、えー、ぷ、ぷりーず、すぴーく、すろーりー、すろーりー、オッケー?

相手がゆっくり、しかも何度もリピートしたおかげで、私の内部の翻訳機能が作動し、どうもこれはある特定施設の電話番号を教えてくれと言っているんだなということが分かりました。

「うちは番号案内か!!」

とツッコみたかったんですが、私の語学力を持ってしても翻訳不能だったのでツッコみませんでした。
仲の良かった先輩から聞いた、記憶に強く残っている話があります。

建物火災で屋内進入して消火作業中に、そのうちの電話が鳴ったそうです。

先輩は放水しながら片手で受話器を取り、

「今ね、あなたが電話をかけたお宅は火事で、現在消火中です」

とお知らせしたそうです。

普通に電話をかけたらそのうちが火災の真っ最中だったと知り、相当慌てたことと思われます。
僕の経験ですが、交通事故で足を骨折したサラリーマンを搬送中、当然骨折ですからすごい苦しみようなのです。

いきなり彼の胸ポケットに入っていた携帯が鳴り響きました。

着メロのタイトルは「ミッキー・マウスマーチ」でした。

救急車のピーポーサイレンと傷者のうめき声が聞こえなくなるくらい高らかに響き渡っていました。

そのあまりにもなミスマッチ感に、不謹慎ながら吹きだしそうになりました。

しかし、そこは職責の重さを常に肝に銘じ続けていた私はぐっと堪え、代わりに電話にでて、

「今、○○さんは、事故でケガをされて、病院に搬送するところです」

と言うと、相手はしばし沈黙でした。

状況を把握するのに時間を要したようです。

その体験から、僕は携帯の着信音は地味なプリセットされているパターンの中のものしか使用しないようになりました。

たまに、硬いムードの会議の席で、急にアップテンポのダンサブルな着メロが響き渡ることがあります。

そもそもマナーモードにしておかない時点でかなり空気読めよ視線を浴びることになるわけですが、曲調によってはさらに非難の色合いが濃くなります。

こういう面でも、わたくしは非常時に備えているのです。

さすが防災士! という賞賛の声が聞こえてくるようですが、

それほどではありません。