飲み放題地獄

「まぁ飲め! いいから飲め! とにかく飲め!」

かつて、酒席ではそんな言葉が必ず飛び交う職場にいました。

今まで何度もこのブログでカミングアウトしましたが、私は体育会系ではありません。

どちらかと言えば、マンハッタンの雑踏をドライに歩くのが似合う個人主義的ロックンローラーであります。

今はずいぶん変わりましたが、私が入った頃の前職の酒席では、新人が入ると、宴会スタート1時間後には屍のように横たわるまで「まぁ飲め!」攻撃が続けられます。

もちろん、私も何度も屍と化しました。

これが急性アルコール中毒患者を救急搬送する側の人間のすることだろうか、と目を疑いました。

中には見事な成長を遂げて、一気飲みブームの頃には先輩を押しのけてその主導権を握る側にまわった者もいます。

酒に強い奴は大野ですが、仲にはフツーにピッチャーでそのまま飲んだりする奴もいました。

ウィスキーを原液で何杯も一気飲みする奴も。マジでいたのです。

その直後に倒れていましたが。

人がスタート10分で泥酔する、まるで早送りで見るような光景でした。

「俺の酒が飲めんのかぁ!」

と、平常時でも横柄な上司が、さらにアルコールにより横柄度ピークな状態で、何度も徳利を両手に持って詰め寄って来たものです。

「あ・明日が勤務なもので」

「男が何を言うとる。心配するな、明日は俺が当直司令だ。救急隊も外してやるし、ゆっくりしとりゃええ」

ほれ! とジョッキに日本酒をどぼどぼと注ぐので、

ええい、やってやろうじゃねぇか!と飲み干し、翌日はゾンビのようにフラフラな足取りで出署すると、

「こらぁ! 二日い酔いになるほど飲むな!」と一喝。

お前のその口が、昨日はなんと言うたぁ、こらぁ!!

と言いたい気持ちを抑え、「すいません」と頭を下げつつトイレに直行しました。

そして救急隊になっていました。

ストレッチャーに横たわる人を見ながら、

「絶対にこの人より、はるかに俺のほうが苦しいわ」と思いながら搬送したものです。

もちろん、公務員に対する風当たりが強くなり、何かあるとすぐに投書されたり、苦情電話かけられたりするようになってからはそんなことはなくなりました。

が、おそらく現在も皆無というわけではないと思います。

とにかく「放題」をつけた店は、消防署員が来店するとヒヤヒヤしているのです。

焼き肉食べ放題などに行こうものなら、生肉でも「ぜんぜんいいぞ。生肉大歓迎」くらいの勢いでどんどん平らげていく猛者が何人かいて、エンドレスでした。

飲み放題になるとピッチャーを補給するのが間に合わないくらい。

なので仲の良かった後輩が何人か息子達がやっている居酒屋を気に入ってリピーターになってくれていますが、その後輩らには何度も釘を刺しています。

「消防の連中に教えるなよ。間違っても歓送迎会なんかに使ってくれるなよ」と。

今度、息子達にくれぐれも言っておきたいと思います。

入口に張り紙しとけよと。

「関取、プロレスラー、消防署員の方は飲み放題対象外」と。

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