以前から「笑い」というテーマで障がい者家族会、介護者教室などでお声をかけていただく機会がありました。

家族を介護していく中でどうしてもストレスを溜めがちになるので笑わせて欲しい、という講演依頼でした。

打合せ、会場の準備、片づけのときなどに家族の介護をしていらっしゃる方から伺う介護の苦労は、私の想像をはるかに超えたものでした。

そんな話の中に、先の見えない長い介護生活で心身ともに疲へいしきっているとき、寝たきりのおじいちゃんがふいに「プーッ」ととても長い、間の抜けた音階のオナラをしたため、家族で顔を見合わせて噴き出したことがあった、というエピソードがありました。

長い期間笑うことも忘れていたのに、ふっと心身の力が抜け、ほのぼのとした気持ちになって笑い、涙を流されたそうです。

「笑うって大事なことですね。もう限界だ、と思っていたのに、またがんばろうという気持ちになりました」と語られました。

ここ数年、「笑って心の健康」というテーマでの講演依頼を、企業、お寺、公民館などさまざまな団体から受けることが多くなりました。

免疫力を上げ、ストレス抵抗力を高めるために、日々の生活の中で「笑い」を見つけ、会話に「笑い」を取り入れる方法、さらには「笑い」を生み出すコツなどについて実例をあげ、歌を交えてお話しさせていただきます。

「笑い」を見つけ、取り入れるという行為は、私自身が笑えない時期を過ごしたからこそ取った方法でした。

自分の心が弱り切っているときに、同僚を笑わせたり、友人と笑いあったりすることが、エネルギーを充てんすることになりました。

笑うことで肩の力が抜け、相手との心の距離がぐんと縮まるというメリットもあります。

「笑い」にも多種あり、ブラックな笑い、攻撃的な笑いもあります。

時と場所、聞き手の心理的な状況などで、それが「笑い」になるかならないかが決まるデリケートなものでもあります。

そんな多様な「笑い」の中でも、自己開示を伴う「笑い」は優秀なコミュニケーションツールとなります。自己開示は、コミュニケーションの基本であり、信頼関係を築くための基本でもあります。

初めて訪れた土地での講演で、私が壇上に立つと、「あれは誰?」というアウェーな空気が充満することがあります。

そんなとき、「みなさん、せっかくお越しくださったのに、オーラのない講師で申し訳ありません」の一言に続く失敗談、挫折経験などを交えた自己紹介で笑いが起こると、空気が一転して、会場に笑顔が広がります。

私自身のストレスも「笑い」で見事に解消されることを、身を持って体験する瞬間です。

(日本海新聞「潮流」2014年10月11日掲載)