「幸せ」に気づくきっかけは本当はたくさんあるのに、気づかずに生きていたんだなあ、と思う瞬間があります。

消防士時代、元々体育会系ではなく、どちらかといえば本にうずもれて生きて行きたいと考えていた私でした。

そうは言っても、消防士であるかぎりは過酷な訓練から逃れられるはずもなく、毎日訓練、訓練の日々でした。

暑い真夏に必ず開催される消防局独自の大会に向けての訓練を、へとへとになってやっていました。

水平に張られたロープを何度も何度もわたり、腕はパンパンになって限界だと思いながらも、上司の罵声をあびながら立ち上がってはロープをつかみました。

渡り切って、地上へ降りるとフラフラで、耳鳴りがして、視界がきかなくなりました。

吐き気をがまんして熱いアスファルトの上に横たわりました。

しばらくたってまぶたを開けるとようやく視界が戻り、真っ青な空が見えました。

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非番の日には、視界に入っても気にもとめなかった空が、とてもきれいで、じっと見つめていたいと思いました。

ゆっくり、ゆっくり流れて行く小さな白い雲を、目の中に流れ入る汗を手の甲でぬぐいながら眺めていました。

なんでこんなきれいな空を見上げなかったんだろう

そう思いました。

目の前にある幸せも、普段はその存在さえ忘れていたのかもしれません。

苦しくなったり、悲しくなったり、さびしくなった時に、やっと気づくのかも。

せっかく気づいたなら、忘れずにいたいのに、やっぱり何度も思ってしまいます。

なんでこんなきれいな空を見上げなかったんだろう、と。