人権講演会で歌う「今が最高」

人権講演会、人権研修会などで、数年前から私自身が救急出動で体験した交通事故現場のことをお話しするようになりました。

幼い子供、帰宅途中の高校生、就職まもない若者、どれも現場で大きな衝撃を受けたケースです。

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消防局を退職して一年以上が経過した頃、道路を走行していて路肩のガードレースに花束がくくりつけてあるのが何ヶ所も目につきました。

それまで、退職してフリーでなんとかやっていかねば、という思いで余裕がなかったのか、その時期になってふいに目につくようになりました。
その何ヶ所もある花束がくくられるきっかけとなった事故の多くに、私自身が出動していたことを思い出しました。

数十年前だったり、5、6年前だったりと事故の時期はさまざまですが、そのどれもの情景を鮮明に思い出せることに気づきました。

処置して搬送する私自身が、大きな衝撃を受けた事故でした。

すでに亡くなっていたり、搬送途上で亡くなったり、搬送直後に死亡診断されたり、どのケースでも言いようのない無力感でいっぱいでした。

呼吸のたびに血を吐きながらも必死に生きようとする子供の姿を目にして、

「頼む! 生きてくれ! 死なないでくれ!」

と心の中で叫びながら搬送しました。

生きるということは、それほどすさまじいまでに尊いことなのだ、と教えられているような気持ちになりました。

差別事象の話を聞くたびに、生まれた土地や、置かれた環境や、身体状態などでいわれのない差別をする人たちにその姿を見せたいと思いました。

あの苦痛に耐えながらも必死に呼吸しようと、生きぬこうとする姿に、命の輝きの尊さ以外に何物があるのだ、と言いたいと思いました。

亡くなった方には失礼な言い方になるかもしれませんが、平凡な、特別なにかいいことが舞い込んでくるわけでもない、普通の一日を送れることがこんなに幸せなのだ、と心の底から思えるようになりました。

そんな思いを込めて作った「今が最高」という歌を、ここ一年、ほぼすべての講演会で歌っています。