焼死体

かつて消防局在籍中、火災原因調査も担当していました。

タイトルにある件ですが、消防職員でも、苦手な人がいますから、一般の方はなおさら想像もしたくない方もいらっしゃるかもしれません。
具体的な描写は避けたつもりですが、グロテスクに感じられる部分もああるかもしれないので、苦手な方はスルーして下さい。

「それでも」とおっしゃる方には、読んでいただいて火災の怖さを知っていただけたら幸いです。

厳冬期の火災現場で消火水で濡れてガクガク震えても、まったく風邪をひかないように、現場ではアドレナリンが分泌するせいか、日常生活で出くわしたら正視できない状況でも、仕事となると視覚的なショックはあまり受けずに仕事を進められます。

視覚的ショックより、火災調査を進めていくうちに亡くなられた方の半生を、ごく一部ですが知ることで、愛惜の念がだんだん強くなってつらくなりました。
もっと心にこたえるのは、悲嘆にくれる家族を見るときでした。
いたたまれない気持ちになりながら消防士も警察官も、漏れのないように調査を進めなくてはなりません。

焼死者がいた場合、警察さんと一緒に写真を撮影したり、倒れていた位置を計測して図面におとしていました。

焼死体も、焼けた状況はまちまちで、かなり炭化が進んでいても、床面に接していた背面は炭化を免れている場合も多かったです。
焼損状況によっては骨が露出していたり、筋肉が露出したり、腹部では腸が出ていたりしました。

それ以上の検視は、警察さんがやり、その後は医師の「検死」があります。

血液を採取して、その中のヘモグロビンの量を調べて、一酸化炭素中毒かそうではないのかを調べるわけです。
その採血する注射器が、炭化した体になかなか刺さらなくて、医師が逆手に持って、ガシッと差し込んで採取、というシーンを見たことがあります。

あとは、気道にが付着しているかどうかを調べます。
煤が付着していれば、火災時に呼吸をしていたということになり、出火時点では「生活反応」があったと判断されます。

付着していなければ、火災時にはすでに呼吸をしていなくて「生活反応」なし。
そうなると急病か、あるいは殺人という可能性も出てくるわけです。

そこには消防職員はまったく関与できません。
そもそも消防がやるのは「調査」で、警察さんのような「捜査」はでできません。

焼死体というのは、何も建物火災だけではなく、他でもあります。
屋外での焼身自殺があったり、ゴミの焼却中に衣類に火がついたり。

交通事故による焼死体も何度か見ました。
単独事故の時もあれば、普通車が反対車線の大型ダンプに突っ込み、車体の下にメリ込むように潰れて入り込み、そして炎上という状況もありました。
やはり交通安全を祈念してやみません。

そして、「建物火災対策に『住宅用火災警報器』を」と、かつて管轄内の公民館をまわって説明会をしていた頃を思い出します。
「なんでそんなものつけなきゃならんのだ! お前らが金を出してくれるんか!!」
と怒る住民もけっこういらっしゃいました。

そんなとき、あの変わり果てた痛ましい焼死体の話をしてあげたいと思いましたが、さすがにそうもいかないので、具体的な描写はせずに、就寝中に起こった火災の実例などを話しました。

法制化された当初はけっこう高価でしたが、今は有名メーカーの製品もかなり安価になりました。
消火器とともにぜひ設置していただきたいものです。

もうひとつ大切なのは、整理収納も大事かなと思いました。
勝手口まだもうあとわずかという場所で亡くなっていたケースも見ました。
避難時の障害物の有無で生死が分かれることもあります。

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