思えば、私が32年間勤めた消防というところは、ストレスの多い職場でした。

まぁ、考えてみれば、火災・救急・救助・災害現場に行くのが仕事ですから、ストレスはあって当然です。

基本マイナスな状況にしか行かないわけですから。

まかり間違っても、
「おー、消防さん、よく来て下さった。まぁまぁお上がり下さい。さぁさぁ、座布団をあてて下さい。今お茶をいれますから。いやぁ、なにね、つい一時間前に呼吸が止まりましてね」

なんて状況には絶対にならないわけです。

いくら迅速に現場到着したところで、要請者にとっては長い長い時間なんです。

「早く! 早く! こっち、こっち。何とか助けて下さい!」

という感じです。

署から遠方の場合は、

「何やってたんだ! もっと早く来いよ! もしものことがあったらお前らのせいだからな!」

なんてことも往々にしてありました。

いくら速やかに到着しても、です。

まぁ、そんなものはまだストレスのうちに入らないくらいです。

救助現場で、事故車両に閉じ込められた人を、エンジンカッターや油圧拡張機を使って救出作業中に、

「おーいこらぁ、税金泥棒が! 早く助けろ!」

なんてヤジが飛び交ったりすることもよくありました。
そんな職場だからメンタルをやられないように、「笑い」が必要ではないか、と考えていたのです。

その頃はまだ「笑い」がNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させて免疫力をアップさせるなんてことはまったく知りませんでした。

ただ実感として、現場活動で肉体的にも精神的にもクタクタになって帰署したとき、同僚とたわいもない冗談を言い合うことで、とても癒される思いをしました。

常に出動に備えていることは、いくら慣れた職場でも緊張はありました。

休憩時間や食事中に、ジョークを言い合っていましたが、ふっと気が抜ける時間でした。

笑っている瞬間が楽しくて、けっこう気持ちがブルーになりがちだった時期も、それで切り抜けることができたのかもしれません。