誰でも弱音やグチが必要な時期がある

気がつくとグチをこぼしていたり、思わず弱音を吐いている
そんな自分を責めたりしていませんか?

日頃から「ありがとう」「感謝します」「嬉しい」「楽しい」「素敵」「最高」そんなプラス言葉を口にした方が、マイナス言葉を口にするよりいいということはわかっていても、人にはそうはできない時期があります。

多少マイナスな出来事があっても、笑顔を作ることや、プラス言葉を口にすることで、気持ちも明るくできるメンタル状態であれば、プラス思考で行くべきかもしれません。

しかし多くの人は、心が悲鳴を上げそうに苦しかったり、何日も心の疲労が続いても、弱音を吐く自分を責め、グチをこぼす自分を嫌悪します。

そんなときには、無理にプラス言葉を口にする必要はありません。
無理してプラス思考になろうとすると、体や心を壊すことになります。

大切な自分の心と身体の健康を壊さないように、ときには心許せる人に弱音を聞いてもらい、親しい人にグチをこぼすことが大切な理由を、私が消防士時代に教わった話を含めてお伝えします。

なぜグチをこぼす自分を責めてしまうのか

自分を責めてしまいがちな現代人
最初に、どうしてグチをこぼしてしまう自分を責めてしまうのか、ということをお話します。

今の時代の風潮は、プラス思考至上主義ではないかと思えるほど、マイナス思考を悪者にしています。

弱音を吐いたり、グチをこぼすと、組織、団体の中では、覇気がない、仕事への意欲が低下している、協調性がないとみなされ、浮いてしまう。
プライベートでも、「あの人マイナス思考で、暗い人」と友人からレッテルを貼られてしまうことが怖い。
そんな気持ちから、「マイナス思考は悪いこと」と自分を責めてしまうようになるのではないでしょうか。

そもそも、「不安」「心配」「恐怖」「嫌悪」などというマイナス感情は、生きるために必要な感情だったはずです。
マイナス感情が生まれるから、危険を回避する対策をねったり、克服しようと努力するモチベーションにできるわけです。

それを、「悪いこと」とフタをして隠して表面だけ明るくしても、逆にマイナス感情を引きずり、身体的、精神的にも健康を損ねることになります。
幸せになりたいためにプラス思考になったり、プラス言葉を口にしたいのに、それでは逆効果です。

マイナス感情を抑えることが健康に悪い

救助訓練をする消防士

弱音やグチには、いい効果もちゃんとあるんです。
それは何かというと、心がつらいときに口にすると、気持ちが楽になるということです。

私が消防士時代の実例からお話します。

近年は、大惨事が毎年のように起こります。
私が消防士だったころにも、大災害がありました。

もともと日常的に悲惨な状況に対面する職業ですから、ストレスをためやすい業務ではあります。
それが大災害となると、さらに激烈なものになります。

多くの消防士が(おそらく警察官、自衛官、海上保安監、医師や看護師も同様でしょう)、心の病気になりました。
自治省消防庁(現総務省消防庁)は対策本部を立ち上げ、ドクター、心理学者なども含めて検討を重ねました。
何度も送られて来た文書には、こんなことが書かれていました。

「惨事ストレス」という言葉がまだ一般的ではない頃です。

眠れなくなったり
記憶がとぎれたり
無感情になったり
仕事に対する意欲が低下したり
事故や災害の何ヶ月あとも思い出しては苦しむような状態
になった人が多かった。それでも消防士は、
仕事だから常に冷静じゃないといけない
強くないといけない
弱音を吐いたりグチをこぼしてはいけない

という意識を常に持っているので、自分の苦しみを外に出せない。
自分だけが弱いんだ、と自分を責めてしまう。
そうすることで、症状が長引いたり、状態が悪化する人が多かった。そうではなくて、そんな状況で起こる自然な症状なのだ、と認めることが大切

という内容でした。
誰かに心のうちを話すということがとても大事だ、ということも書いてありました。

私が消防士を辞め、メンタルヘルスを学ぶようになってから教わった心理学でも、共通したことが言われていました。
大災害や大事故のときだけではなく、ふだんの日常生活を送る中で、ぶつかるトラブルや悲しい出来事でショックを受けたときも同様だということでした。

無理にプラス思考にすることで病気に

無理に元気に振る舞うと病気になる

メンタルヘルスを学んだ中で、とても感動したのは、
感情にいいも悪いもない。その感情には理由がある
という言葉でした。

逆に、マイナス感情に封印して、無理してプラス思考にすることは健康によくないということも知りました。

マイナス感情を抑圧すると、免疫系の病気、気管支喘息、高血圧、がん、うつ病に結びつく。
(ハートマス財団の研究)

「偽善のポジティビリティ」は、人の怒りの感情と同様に冠動脈性疾患を起こす危険性を持っている。
(「ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則」バーバラ・フレドリクソン著)

以上のことからも、自分のほんとうの心をまずは認める、ということが重要だということがよく分かります。

心が回復してからプラス言葉を口にする

プラス言葉は元気になってから

こんなことでくよくよしている私は本当にだめな人間だわ
なんてついつい自己批判してしまいがちなのが、多くの日本人ではないでしょうか。

でも、自己批判をくりかえしていても、心が強くなるわけではありません。
まず、弱った心を回復するために、心許せる人に弱音を聞いてもらい、親しい人にグチをこぼすことも大事です。

かといって、ずっとマイナス思考がよくて、グチや弱音を言い続けた方がいいというわけではありません。
グチが習慣になると、今度は本格的に「あの人マイナス思考で、暗い人」と敬遠されてもいけませんし、自分も楽しめません。

つらい時期を乗り越えたら、今度はプラス思考で生活を楽しみましょう。
そのプラス思考は、マイナスを乗り越えた分だけ抵抗力が増し、より強くて厚いプラス思考になっているはずです。