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【中学生・高校生への命の授業】「生きているだけですごい」と伝える理由

火災現場から少年を救出する消防士

「生きていてくれ」

火災現場から運び出した男の子をストレッチャーに乗せながら、私は心の中でそう祈っていました。

男の子は、苦しそうな声で激しく泣いていました。

その泣き声が、私には、

「生きたいよぉー!」

と必死に叫んでいるように聞こえたのです。

あれから何年たっても、私はその声を忘れることができません。

中学生や高校生を対象にした「命の授業」で、私がこの火災現場の体験を話すのは、恐ろしさを伝えるためではありません。

生きていること自体が、決して当たり前ではないこと。そして、何かができるかどうかに関係なく、命そのものに価値があることを伝えたいからです。

火災現場から運び出した少年

ある火災現場に、消防隊員として出動したときのことです。

消火活動をしていた建物の中に、小学生の男の子が取り残されていました。

男の子を屋外へ運び出すと、頭部にやけどを負い、かぶっていた野球帽が熱で焼けていました。

到着した救急隊へ引き継ぐ間も、男の子は苦しそうに泣き続けていました。

消防や救急の現場では、負傷して泣いている人に接することがあります。それでも、そのときの男の子の声は、私の心に強く残りました。

「生きたい」

言葉としてそう話したわけではありません。

しかし私には、泣き声の一つひとつが、生きようとする命の叫びのように聞こえたのです。

私は救急隊と一緒に男の子をストレッチャーへ乗せながら、ただ祈っていました。

「生きていてくれ」

その後、男の子は命に別状はなく、回復したと聞きました。

あの声が、後になって私自身を支えてくれた

生きていると、何もかも順調に進むわけではありません。

私にも、頑張っているのに結果が出ず、思い通りに生きられない自分には価値がないように感じた時期がありました。

目標を達成できない。

自分の力不足ばかりが目につく。

「何をやっているんだろう」と、自分を責めたこともあります。

そんなとき、不意にあの男の子の泣き声がよみがえりました。

火災現場では、成績も、肩書きも、誰かからの評価も関係ありませんでした。

ただ、生きていてほしい。

その願いしかありませんでした。

男の子に向けて祈った「生きていてくれ」という言葉が、何年もたってから、自分自身に返ってきたように感じました。

「いろいろあるけれど、生きているだけですごいことじゃないか」

そう思うと、完璧にできない自分を、少しだけ許せるようになりました。

投げ出さず、今できることをやってみよう。

格好よく生きられなくても、自分なりに今日を生きよう。

あの男の子の声は、そんなふうに私を支えてくれました。

「生きているだけですごい」は、頑張れという意味ではない

中学生や高校生は、心も体も大きく変化する時期です。

友達との関係、家族のこと、勉強や進路、自分自身への不安。大人には見えないところで、深く悩んでいる生徒もいます。

そんな生徒に「頑張れば何とかなる」と言いたいわけではありません。

頑張っても報われないことはあります。

学校へ行けない日や、何もする気になれない日もあるでしょう。周りの人が簡単にできることを、自分だけができないように感じることもあります。

それでも、成績がよいから命に価値があるのではありません。

目標を達成したから、生きていてよいのでもありません。

誰かより優れている必要もありません。

生きているということ自体が、すでにすごい。

私が伝えているのは、「つらくても一人で頑張り抜こう」ということではありません。

自分だけでは抱えきれないときには、家族、先生、友達など、話せる人に話してほしい。すぐに答えが見つからなくても、まずは今の苦しさを一人だけのものにしないでほしいと思っています。

命の授業で、生徒たちに持ち帰ってほしい言葉

学校から「命の大切さを生徒たちに伝えてほしい」と依頼されることがあります。

一度の講演で、生徒が抱えている悩みをすべて解決できるとは思っていません。

それでも、苦しくなったときに、

「あの元消防士が、生きているだけですごいと言っていたな」

と思い出してもらえたら。

その言葉が、自分を責め続ける心に、ほんの少しだけブレーキをかけてくれたら。

そんな思いで、消防・救急現場で経験したことを話しています。

講演では、重い体験を並べるだけではなく、オリジナルソングも交えます。

話と歌を通して、生徒一人ひとりに、次の言葉を持ち帰ってほしいと思っています。

うまくいかない自分にも、価値がある。

苦しいときには、一人で答えを出さなくていい。

今日を生きている。それだけでも、本当はすごい。

あの少年が教えてくれたこと

あの火災から、長い年月が過ぎました。

少年がその後どのような人生を歩んでいるのか、私は知りません。

ただ、火災現場で聞いた声は、今も私の中に残っています。

あの少年は、助けられた一人というだけではありません。

私自身がつまずいたときに、命の価値を思い出させてくれた人でもあります。

そして今、そのときに感じたことを、中学生や高校生へ伝えています。

誰かに評価されなくても、思うようにできないことがあっても、命の価値が小さくなるわけではありません。

苦しいときは、一人で抱え込まないでください。

生きているだけですごい。

私は、心からそう思っています。

中学生・高校生への「命の授業」について

32年間の消防・救急現場で経験したこととオリジナルソングを通して、命の大切さ、自分を責めすぎないこと、苦しい思いを一人で抱え込まないことを伝えています。

強い言葉で生徒を励ますのではなく、実際の体験を通して、自分自身の命について考えていただく講演です。

命をテーマにした講演の内容はこちら

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