私の講演には様々なテーマがありますが、その根底には常に「感謝」があります。
それは、消防士だった頃に活動した現場で、自分の命がある間に、何がなんでも「感謝」を伝えたいという強い思いを経験したからです。
永遠に忘れられない一日
ある日、軽自動車とトラックの衝突事故の現場に救急車出動しました。
並んだ野次馬をかきわけ、事故で破損した軽自動車のドアを開けると、時間が止まったと感じるほどの衝撃を受けました。
後部座席には2人の幼い兄弟。
かわいい盛りの年頃で、お揃いの洋服を着ていました。
しかし、弟の小さな命はすでに息絶えていました。
涙を必死に堪えながら搬送しながらも、胸が張り裂けそうでした。
私の2人の息子と同じ年頃だったので、彼らの姿と重なり、よけいに胸が痛みました。
運転していた母親と兄弟を病院に搬送後、署に戻り、救急車内を清掃・消毒中、ただ一つの思いが胸を占めていました。
「今すぐに、大切な息子たちの元気な姿が見たい」
私は、救急車のシートに座り、声をあげずに泣きました。
翌日の非番日の午後、保育園から帰って来た2人の息子を抱きしめました。
腕の中で、子どもたちは目を輝かせながら、
「お父さん、どうしたの?」
「お父さん、どうして泣いているの?」
と、聞いてきました。
「お父さんは、君たちが元気でうちに帰ってくれたのが嬉しいんだよ」
そう言うと、2人は不思議そうな顔をしました。
腕の中の温かい存在。
呼べば返事をしてくれる2人。
愛おしさで胸がいっぱいになりました。
その瞬間、私の中で何かが大きく変わりました。
やんちゃ盛りの騒々しい息子たち。
しょっちゅう喧嘩しては、大騒ぎするので、うるさいとさえ思う瞬間もありました。
いつも目の前にいることが当たり前だと思っていた家族の存在。
すべてが奇跡のようにありがいことだと思えてきたのです。
感謝を伝える
この体験から、私は感謝を言葉にして表すことを始めました。
子どもたちには、誕生日に「生まれてくれてありがとう」
母へ「産んでくれてありがとう」
父へ「育ててくれてありがとう」
うつ病で苦しんできた妻へ「いてくれてありがとう」
感謝を伝えたことで、伝えた相手はとても喜び、笑顔になってくれました。
そして、驚いたことに、伝えた自分自身がとても大きな幸福感に包まれました。
なんとも言葉には表現できない温かさが、日を経るごとに心に広がっていくのです。
そして、日常生活で小さなことにでも感謝の言葉を口にするようになりました。
本講演が目指すもの
この「感謝の力」をテーマとした講演では、日々の感謝の実践が組織にもたらす可能性について、皆様と共に考えていきたいと考えています。
以下のような観点から、感謝の力が個人に、家庭に、そして組織に与える影響について、一緒に探求できればと願っています。
一人一人のかけがえのない存在に感謝することで、互いの人権を尊重する社会づくり
日々の感謝の気持ちが、メンタルヘルスにもたらす驚くべき効果
仲間への感謝がチームワークの向上につながり、職場の安全意識を高め、事故を防ぐ力になる
「ありがとう」の言葉が、家族の絆を深め、幸せな家庭を築く基礎となること
もちろん、こうした変化は一朝一夕に実現するものではありません。
しかし、小さな「ありがとう」の積み重ねが、やがて大きな変化を生み出す可能性を秘めていると信じています。
ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。