労働安全衛生 講演会
一番大切なものは「安全」
「安全」は一番大切なものです。
「安全」なくしてはどんな事業も成り立たない、基本的なものです。
そんなに大事なものなのに、「安全」はふだんはとても地味なものです。
ひとたび事故が起こってから、何事もなかった平穏な「安全」のありがたさに気づいても、もう遅い
そんな当たり前といえば当たり前のことを、いろんな業種の作業現場に救急出動・救助出動して、あらためて実感しました。
32年間消防士として、火災はもちろん、様々な事故・災害現場に出動しました。
現場活動が終っても仕事は終わりではなく、救急隊長、あるいは救助隊隊長として事故原因を調査しました。
火災現場では、長年火災原因調査を担当し、現場の発掘、鑑識も行ってきました。
労働災害での救急・救助も数多く出動し、調査も行いました。
安全管理のためには、マニュアルが必要です。
しかし、マニュアル遵守だけでは防げない事故があることを、実際の現場で思い知らされてきました。
「いつもならこの程度のことが事故につながったことはなかったのに」
そんな言葉を耳にすることが何度もありました。
ちょっとしたズレが生じてもいつもなら補正しながら作業を続けるのに、たまたまその時にいくつもの条件が重なり、事故に至ってしまう場合があります。
また、技能のすぐれた人が、いつもなら難なくこなせる作業が、その日に限っていつもどおりにいかなくなる場合もあります。
そんな僅かなほころびを見つけて、危険がやってきて事故へと引っ張りこもうとします。
また、かつての消防は、業務上のミスを個人の「精神論」で片付けがちな面があり、一件の事故が誰もが起こす可能性のある事故だと分析することもなく、「精神がたるんでいるからだ」ということで一方的にミスを犯した職員を処分するというケースもありました。
そのようなケースは、過失を隠すことにつながり、貴重な事故事例の蓄積となりません。
逆に過失の根本的改善から遠のき、大きな事故へ至る可能性が高まります。
実際の救急・救助出動での体験談をお話しすることで、安全管理の重要精を身近なものとして感じていただけます。
厚生労働省発表の「労働災害原因要素の分析」を見ると、「不安全な状態」「不安全な行動」という客観的事実に対する分析はなされているものの、なぜそいう状況になったのか、なぜそういう行動をとったのかという心理状態までの分析はなされていません。
人の心理の解析までは、なかなか客観的にできるものではないようです。
しかしながら、消防職員が事故の背景を調査していくと、安全管理面に問題があったケースもあれば、負傷した作業担当者本人の精神健康状態に問題があることも、本人や関係者との会話の中で知る場合が少なくありません。
「自殺対策白書」によればこの10年減少傾向のようですが、現状ではうつ病は珍しい病気ではなくなり、心の病気で苦しむ人は増加傾向にあります。
自損行為の現場に何度となく出動してきた私の実感では、とても減少しているようには思えませんでした。
安全を守るために必要な職場でのチームワークを良好に保つためにも、労働者各人のスキルを存分に発揮するためにも、心身の健康は欠くべからざるものです。
私自身、家族が心の病気になったことがきっかけで、消防局退職後、心理学を学びました。
「心の健康」についての講演、「会話術」「コミュニケーション術」のセミナー講師をつとめ、小〜高校教師、福祉施設職員対象のメンタルヘルス研修会の講師をつとめてきました。
個人のストレス対策から職場内でのコミュニケーションについて、私の消防士時代の現場体験をまじえてお話しさせていただきたいと思います。
多くの方から、「安全大会や衛生週間の講演会や研修は難しくて退屈」という話を聞きます。
中には、「正直言いますと、安全、安全としつこく言われると、またか、と気持ちがマヒしてしまうところがあって、お話を聞いて大いに反省しました」と率直な意見を言われる社員さんもいらっしゃいました。
心の状態だけではなく、体の不調も事故につながりやすくなります。
熱中症予防対策、不眠や運動不足の解消など、消防士時代に応急手当指導員の育成もしていた経験もありますので、ご要望がありましたら体調管理についてもお話させていただきます。
「安全」は、ふだんはとても地味なものです。
地味であっても、一番大切なものです。
ひとたび大惨事となってから気づいては遅いのです。
まずは退屈しないで聞いていただきながら、しっかりと安全意識を高めていただくことを心がけています。

参加者様の感想
演題例
・心の健康づくりで災害ゼロに
・笑顔で働くための心の健康
・誰もが笑顔で働くために
~消防現場で学んだこころの健康~
・救急現場から学ぶ命の大切さと安全意識
講演実績
建設業労働災害防止協会姫路分会(兵庫県)、大分県西部地域林材業労働安全大会(大分県)、株式会社丸永建設株式会社(島根県)、株式会社大島工務所(島根県)、鳥取県危険物保安協会連合会、鳥取県中部危険物保安協会研修会、鳥取県産業安全衛生大会、第21回全国トラック運送事業者大会、鳥取県中部総合事務所、鳥取県管工事業協会、鳥取県労働基準協会東部支部、倉吉地区安全運転運行管理者協議会(鳥取県)、八橋地区安全運転運行管理者協議会(鳥取県)、福上工業株式会社安全大会(鳥取県)、打吹建設株式会社安全大会(鳥取県)、株式会社藤原組(鳥取県)、イワタ建設株式会社(鳥取県)、TVC株式会社(鳥取県)、馬野建設株式会社(鳥取県)、中央建設株式会社(鳥取県)、NTT西日本鳥取支店(鳥取県)、大和設備株式会社(鳥取県)、株式会社田中建設(鳥取県)、中一建設株式会社(鳥取県)、福井土建株式会社(鳥取県)、株式会社井木組(鳥取県)、株式会社大協組(鳥取県)、美保テクノス株式会社(鳥取県)、日ノ丸自動車株式会社(鳥取県)、やまこう建設株式会社(鳥取県)、大同端子製造株式会社(鳥取県)、山陰酸素工業株式会社(鳥取県)、大和建設株式会社(鳥取県)、アオキ建設株式会社(鳥取県)
死に瀕した多くの人たちに対応する火災・救急・救助現場場では、必死に生きようとする力に圧倒され続けました。単なる言葉ではなく、実感として「命の重さ」を思い知らされました。命だけではなく、他人の人権にも、自分自身の人権にも意識を向けることの大切さをお話します。
「心の病気」を予防することの大切さを思い知らされた救急現場活動経験、心の病気に苦しんだ家族の対応経験で学んだ心の健康を保つための方法について、お話させていただきます。笑いと涙でストレス解消をしていただきながら、楽しく聞いていただいています。
様々な労災事故に救急隊、救助隊として対応してきました。現場活動だけではなく、事故の原因なども調査するため、背景も知ることができました。個人のストレス対策から職場内でのコミュニケーションについて、私の消防士時代の現場体験をまじえてお話します。
「子育て」は人生の一大事業なので不安になるのも当然です。人生観と子育て観が激変した交通事故現場での体験を通して、親自身が元気で子どもに向き合う方法や、落ち込まないようにするコツ、子どもと共に成長するための考え方をお話します。
大変な「今」が、宝物のように素晴らしい親子の時間です。ともに楽しみながら「親育ち」をしましょう。
火災原因調査時に、焼死した友人を発見した経験が、周囲の人間の関わり方や、心の病気の予防の重要性を教えてくれました。自損行為の現場に出動するたびに、日頃のメンタルヘルスの重要性や、周囲の人間がどう関わるべきかを教わりました。彼らが身をもって教えてくれた大切なことをお話します。