私は32年間、消防士として働き、多くの命と向き合ってきました。
救急、火災、救助の現場では、それまで当たり前だと思っていた日常が、一瞬で変わってしまうことがあります。
その中でも、今なお忘れることのできない救急現場があります。
私が講演でお伝えしている「命のメッセージ」の原点となった出来事です。
生きづらさの中にいた私

「どうして、こんなに生きづらいのだろう」
「なぜ、苦しいことばかりあるのだろう」
「生きていることに、どんな意味があるのだろう」
悩みや悲しい出来事が重なると、心は大きく揺れます。
不安定な状態が続けば、物事を悪いほうへ考え、そこから抜け出せなくなることもあります。
消防士として働き始めて数年が過ぎた頃、私自身も同じような状態に陥っていました。
そんなとき、ある救急現場での出来事が、私の命や人生に対する考え方を大きく変えました。
忘れられない救急現場

夕暮れ時、部活動から帰る途中の男子中学生が交通事故に遭いました。
私たち救急隊は、必死に心肺蘇生を続けながら、少年を病院へ搬送しました。
病院では、救急隊員、看護師、医師が一丸となり、少年の命を救おうとしました。
しかし、長時間にわたる救命活動にもかかわらず、少年の心拍は再開しませんでした。
息子を呼び続けるお父さん
病院へ駆けつけたお父さんは、目の前で起きていることを受け入れられず、少年に呼びかけ続けていました。
「おーい、どうしたんだ。目を開けろよ。息をしてくれよ。お前なら大丈夫だ。
お前は、毎日、どんな暑い日でも一生懸命に部活を頑張ってきたじゃないか。
お前ならできないことはない。頼むから、息をしてくれよ!」
その声は、少年を助けることができず、無力感に襲われていた私たち救急隊員の胸にも突き刺さりました。
朝、いつものように元気に家を出ていった息子。
家へ帰ってくることを、誰も疑わなかったはずです。
昨日までそこにあった、平穏で大切な日常。
最愛の息子が突然いなくなることを、すぐに受け入れられるはずはありません。
子どもを持つ親として、想像するだけでも胸が苦しくなりました。
その場にいた3人の救急隊員は、全員が子を持つ親でした。
耐えきれなくなった私たちはベッドに背を向け、救急服の袖で涙を拭いました。
明日は当たり前にはやってこない

この救急活動を経験したことで、私は気づきました。
大切な命について考えることは、大切な時間について考えることなのだ。
当たり前にやってくると思っていた明日は、決して約束されたものではありません。
当たり前にあると思っていた命も、当たり前ではありません。
あの少年は、未来に向かって精いっぱい生きていました。
そして私たちは今、少年が生きることのできなかった未来の時間を生きています。
あれから月日が流れても、息子を呼び続けるお父さんの声が、私の心の中で繰り返し響いています。
命を考えることは、今を考えること
命や時間について考えると、自分が一人で生きているのではないことにも気づきます。
家族、友人、同僚、地域の人たち。
多くの人に支えられながら、私たちは今という時間を生きています。
それでも、身近な人の存在に慣れてしまうと、そのありがたさを忘れることがあります。
伝えたい言葉があっても、
「また今度でいい」
「いつでも伝えられる」
と思ってしまいます。
けれど、その「今度」が必ずやってくるとは限りません。
命を大切にすることは、今日という時間を大切にすること。
そして、大切な人へ伝えられるうちに思いを伝えることではないかと、私は感じています。
講演でお伝えしていること

32年間の消防人生は、私に数え切れないほど多くのことを教えてくれました。
危機的な状況の中で見た人の強さ。
家族を思う心。
人と人とのつながり。
そして、命のかけがえのなさ。
講演では、消防・救急現場で経験した出来事を通して、命、時間、言葉、家族、感謝についてお話しします。
ただ体験をお話しするだけではありません。
参加される方が、自分自身や身近な人の存在を思い浮かべられるよう、講演テーマに合わせたオリジナルソングの弾き語りも交えています。
重い出来事も含まれますが、悲しさだけを持ち帰っていただく講演にはしたくありません。
今、生きていること。
大切な人がそばにいること。
呼びかければ、返事をしてくれること。
その一つひとつを、あらためて見つめる時間になればと思っています。
今、伝えられる言葉を大切に
私たちは、いつまで生きられるかを知ることはできません。
だからこそ、今という時間を大切にしたいと思います。
「ありがとう」
「大切に思っているよ」
「生まれてくれてありがとう」
心の中にある思いは、言葉にしなければ伝わらないことがあります。
大げさなことをする必要はありません。
今日、目の前にいる人へ、伝えたい言葉を一つ伝えてみる。
それが、命と時間を大切にする小さな一歩になるのではないでしょうか。
講演について、まずはお気軽にご相談ください
命の大切さ、言葉の力、家族への感謝など、開催の目的や参加される方に合わせて講演内容を組み立てます。
開催日や講演内容、ご予算など、まだ決まっていない段階でもご相談いただけます。
お電話でのお問い合わせはこちら:0858-35-4388
