「俺は長生きなんてしようと思わない。太く短く、生きたいように生きる」
お酒を飲むと、そう話す知人がいます。
同じようなことを口にする人は、少なくないのかもしれません。
一方、消防士として多くの病人やけが人を救急搬送してきた私は、現場で何度も、
「助けてください。苦しいんです。早く病院へお願いします」
という切実な声を聞いてきました。
「もう十分に生きたから、このままでいい」と救急搬送を断る人には、出会いませんでした。
多くの救急現場で、人には「生きたい」という強い思いがあるのだと感じてきました。
では、長くなった人生を、できるだけ心豊かに過ごすために何ができるのでしょうか。
2019年3月5日、鳥取県の湯梨浜町文化大学閉講式記念講演会で、約120人の皆さんにお話ししました。
演題は、
「人生100年時代に向けて」
心の元気と身体の健康、ストレスとの向き合い方、感謝や笑いの大切さについて、消防・救急現場での経験とオリジナルソングを交えてお伝えしました。
「長生きしたくない」という言葉の奥にあるもの
「長生きにはこだわらない」
そう思う気持ちも、分からなくはありません。
老後について考えると、不安なことがいくつもあります。
年金制度は、この先も維持されるのだろうか。
病気になったとき、医療費を払い続けられるだろうか。
家族や友人と離れ、一人で過ごす時間が増えたら、その孤独に耐えられるだろうか。
将来のことを考え始めると、次々に不安が浮かんできます。
長生きすること自体が不安なのではなく、病気や孤独、生活への心配を抱えたまま年齢を重ねることが不安なのかもしれません。
だからこそ、寿命の長さだけではなく、これからの日々をどのように過ごすかを考えることが大切なのだと思います。
救急現場で何度も聞いた「助けてください」
消防士時代、私は何百人もの病人やけが人を搬送しました。
救急現場では、年齢にかかわらず、多くの方が必死に助けを求めます。
「苦しいんです」
「早く病院へお願いします」
その言葉から伝わってくるのは、生きたいという強い思いでした。
元気なときには、「長生きなんてしなくてもいい」と言えるかもしれません。
しかし、命の危険が目の前に迫ったとき、生きたいと願う。
救急現場で命と向き合う中で、私はその思いを何度も感じてきました。
命には限りがあります。
その限りがいつ訪れるのかは、誰にも分かりません。
だからこそ、遠い将来の不安だけに心を奪われず、今ある一日を大切にすることが必要ではないでしょうか。
人生100年時代をどう過ごすか

湯梨浜町文化大学は、町内に住む60歳以上の方が、趣味や学びのさまざまな講座を受講する取り組みです。
毎年度、受講者を募集し、年度末には閉講式が行われます。
学ぶことや、新しいことに関心を持つこと。
誰かと同じ時間を過ごし、話したり笑ったりすること。
文化大学へ参加すること自体が、これからの日々を元気に過ごす一歩になっているように感じました。
人生が長くなれば、悩みや不安がすべてなくなるわけではありません。
年齢を重ねたからこそ生まれる心配もあります。
それでも、今の自分にできることや楽しめることへ目を向け、心と身体をいたわりながら毎日を過ごすことはできます。
心の元気と身体の健康はつながっている
身体が疲れていると、気持ちまで沈みやすくなります。
反対に、悩みや不安を抱え続けていると、身体まで重く感じることがあります。
心と身体を別々に考えず、両方の状態に目を向けることが大切です。
講演では、自分に合ったストレス解消法を選ぶことについてもお話ししました。
誰かにとって気分転換になることが、自分にも同じように合うとは限りません。
その日の体調や気持ちによっても、必要な休み方は変わります。
「健康のためだから」と無理をするのではなく、今の自分の心と身体は何を求めているのか、少し立ち止まって考える。
疲れているときには休む。
一人で抱え込みそうになったら、誰かと話す。
自分が楽しいと感じられることを大切にする。
大きなことを始めなくても、日々の過ごし方を少し見直すことから、心と身体を守ることができます。
当たり前の日々は、当たり前ではない
講演では、消防・救急現場で経験した出来事を通して、感謝についてもお話ししました。
家族がそばにいること。
朝、いつものように目を覚ますこと。
誰かと食事をしたり、話したりできること。
私たちは、毎日繰り返されることを、つい当たり前だと思ってしまいます。
しかし、救急現場では、その当たり前だった日常が突然失われる場面があります。
元気なときには、家族や身近な人へ感謝していても、わざわざ言葉にしないことがあります。
「ありがとう」と思っている。
けれども、相手には伝えていない。
そんなことも多いのではないでしょうか。
命には限りがあるからこそ、伝えられるときに感謝を伝えることが大切です。
感謝の言葉は、受け取った相手だけでなく、伝えた自分の心にも温かさを残します。
消防・救急現場で感謝について考えるきっかけとなった出来事は、「当たり前にある日々は、当たり前じゃない」でも紹介しています。
笑いと歌で心を少し軽く
心と身体の健康、感謝についてお話ししたあとは、オリジナルソングを聞いていただきました。
まじめな話だけが続くと、聞いている皆さんの肩にも力が入ります。
そこで、日常の中にある面白さを歌にしたところ、会場に予想以上の大きな笑いが起こりました。
皆さんの笑い声を聞き、私自身も元気をいただきました。
最後に歌ったのは、湯梨浜町にちなんだ「梨のうた」です。
私も参加された皆さんと同じように、心と身体を大切にしながら、健康な100歳を目指して楽しく過ごしたい。
そんなことを思いながら歌いました。
長生きするなら、心も元気に
人生100年時代と言われても、誰もが不安なく年齢を重ねられるわけではありません。
病気、お金、孤独、家族のこと。
心配はなくならないかもしれません。
だからこそ、まだ起きていない不安だけに心を奪われず、今ある日々にも目を向けたいと思います。
疲れたら休む。
人と会って話す。
学びたいことや、楽しめることを見つける。
当たり前の日常に気づき、感謝を言葉にする。
そして、ときには一緒に笑う。
そんな一つ一つが、長くなった人生を心豊かに過ごすことにつながっていくのではないでしょうか。
湯梨浜町文化大学の皆さん、ありがとうございました。
高齢者向けの心の健康講演をお考えの方へ
自治体、公民館、高齢者大学、生涯学習講座、地域団体などで、人生100年時代の心と身体の健康、ストレスとの向き合い方、命、感謝をテーマにお話ししています。
消防・救急現場での実体験と、オリジナルソングの弾き語りを交え、笑いながら自分のこれからを考えられる講演をお届けします。
詳しくは、心の健康講演会の内容をご覧ください。
講演についてのご相談は、お問い合わせページから承ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 講演会名 | 平成30年度湯梨浜町文化大学閉講式記念講演会 |
| 日時 | 2019年3月5日(火) |
| 演題 | 人生100年時代に向けて |
| 会場 | 湯梨浜町中央公民館 |
| 所在地 | 鳥取県東伯郡湯梨浜町 |
| 参加者 | 湯梨浜町在住の60歳以上の方、約120人 |

