広い大会議室に、参加者の姿はありません。
拍手もなければ、笑い声もありません。
目の前にいるのは、ケーブルテレビの担当者と市役所の担当者だけです。
2022年1月20日、加東市企業人権教育協議会の社員研修会で、講演を収録しました。
演題は、「誰もが笑顔で働くために~消防現場で学んだこころの健康~」です。
いつもの講演会とはまったく違う環境でしたが、後日、ケーブルテレビやYouTubeでご覧になる皆さんに届くよう、気持ちを落とさずにお話ししました。
対面の社員研修会から収録講演へ

この講演は当初、加東市企業人権教育協議会の「令和3年度第3回社員研修会」として、参加者を会場に迎えて開催される予定でした。
年が明け、新型コロナウイルスの感染状況も少し落ち着いてきたように見えたため、予定どおり開催できそうだと喜んでいました。
私にとって、その年最初の講演になる予定でもありました。
ところが、オミクロン株による感染が急速に拡大しました。
開催日の前週になり、対面形式ではなく、ケーブルテレビとYouTubeで配信するための収録へ変更するとの連絡をいただきました。
ニュースを見ながら、変更の可能性は覚悟していました。
中止ではなく、収録という形で講演を届けられることになり、気持ちを切り替えて内容を調整しました。
「誰もが笑顔で働くために」必要なこと
今回のご依頼では、人権と自殺予防についてお話ししてほしいというご要望がありました。
そこで、32年間の消防士生活で経験した救急現場や災害現場での出来事をもとに、心の健康についてお話ししました。
私には、友人を自死で亡くした経験があります。
以前の明るい姿からは想像できない出来事でした。
人の心の苦しさは、外から見ただけでは分からないことがあります。
いつも元気に見える人が、誰にも言えない悩みを抱えているかもしれません。
本人も、自分の心がどれほど疲れているのか気づいていないことがあります。
仕事の悩み、人間関係、家庭の問題、健康への不安。
一つひとつは小さく見えても、それが重なり、誰にも話せない状態が続けば、心は少しずつ追い詰められてしまうことがあります。
だからこそ、悩みを一人で抱え込まないこと、そして周囲の人がいつもと違う様子に気づいたら、声をかけることが大切だと感じています。
職場の人権は身近な声かけから
「人権」という言葉を聞くと、少し難しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、職場で働く一人ひとりの心や命を大切にすることも、人権を考えることの一つではないでしょうか。
元気がない同僚に、
「最近、どう?」
「何か困っていない?」
と声をかける。
話してくれたときに、すぐに正論や解決策を返すのではなく、まずは話を聞く。
自分がつらいときには、無理に元気なふりをせず、信頼できる人や相談窓口につながる。
そうした小さな行動が、誰もが安心して働ける職場につながるのだと思います。
講演では、救急現場や災害現場での体験とともに、オリジナルソングも交えてお伝えしました。
当たり前の日常は、当たり前ではない
消防・救急の現場では、それまで続いていた日常が突然失われる場面に出会います。
そのような現場で活動する中で、私は普段の生活がどれほどありがたいものかを考えるようになりました。
風邪をひいて熱を出したとき、元気に動けていた日常のありがたさに気づくことがあります。
心が弱りそうなときにも、自分を心配してくれる人がいることや、今日も生きていることに目を向けると、暗い気持ちの中に小さな光が見えることがあります。
もちろん、「今ある幸せを考えれば悩みは解決する」という単純な話ではありません。
つらいときには、一人で我慢せず、周囲の人や専門の相談先へ助けを求めることが必要です。
そのうえで、身近な人の存在や何気ない日常を、当たり前だと思わずに見つめ直すことも、心を守る一つの支えになるのではないかと思っています。
人権啓発情報誌で紹介していただきました
講演の様子は、加東市の人権啓発情報誌「夢☆きらめいて」でも紹介していただきました。
情報誌では、交通事故、労働災害、自死に関わる救急現場など、消防士として経験したさまざまな現場を通して、心の健康の大切さを歌とともに伝えた講演として取り上げていただきました。
会場に参加者はいませんでしたが、ケーブルテレビとYouTubeによって、多くの方に講演を届ける機会をつくっていただきました。
形式が変わっても、伝えたいことは変わりません。
悩みを一人で抱え込まないこと。
身近な人の変化に気づいたら、声をかけること。
そして、自分も相手も、かけがえのない一人として大切にすることです。


4年後、同じ会場で対面講演へ
それから4年後の2026年8月29日、再び加東市から人権講演会のご依頼をいただきました。
会場は、4年前に誰もいない客席を前に収録した加東市役所の大会議室です。
今度は、目の前に参加者の皆さんがいらっしゃいました。
笑顔やうなずきを受け取りながらお話しする中で、講演は講師が一方的に言葉を届けるものではなく、参加者の皆さんと一緒につくっていくものなのだと、あらためて感じました。
4年前の無観客収録と、今回の対面講演で感じた違いについては、次の記事で詳しく紹介しています。
加東市人権講演会|4年前の無観客収録から対面講演へ
開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研修会 | 令和3年度加東市企業人権教育協議会第3回社員研修会 |
| 開催日 | 2022年1月20日 |
| 演題 | 誰もが笑顔で働くために~消防現場で学んだこころの健康~ |
| 場所 | 兵庫県加東市・加東市役所 |
| 開催形式 | 加東ケーブルビジョン放送・YouTube配信のための収録 |
| 主な内容 | 人権、自殺予防、心の健康、職場の声かけ |
企業の人権研修・社員研修を企画されている皆さまへ
私は、32年間の消防・救急現場での体験をもとに、命の大切さ、心の健康、家族や職場での人とのつながりについてお話ししています。
人権という言葉を知識として伝えるだけではなく、参加された方が自分の職場や身近な人を思い浮かべられる講演を心がけています。
企業の人権研修、社員研修、心の健康をテーマにした講演については、開催目的や参加される方に合わせて内容を調整します。

