「最近は、私と口もきいてくれないんです。親としての自信がなくなります」
保護者会の講演を終えたあと、お母さんからそんな話を聞くことがあります。
あんなにかわいかった我が子が、いつの間にか、
「うるせえなあ!」
と言うようになる。
かつて一緒にキャッチボールをしていた息子から、
「チッ!」
と舌打ちされ、お父さんが寂しい思いをすることもあるかもしれません。
子どもの言葉や態度に傷つき、
「自分の育て方が悪かったのだろうか」
「親として、ちゃんとできていなかったのではないか」
と、自分を責めてしまう方もいます。
けれども、子どもが思いどおりにならないからといって、これまで親として注いできた愛情まで否定する必要はないと、私は思います。
保育園の保護者会でお伝えしたこと

2018年4月21日、広島県福山市にある社会福祉法人わかば福祉会川口西保育所の参観日に、保護者の皆さんへ講演をさせていただきました。
前年に開催された日本保育協会中国・四国ブロック研修会で私の講演を聴いてくださった清水所長さんから、
「保護者の皆さんにも聴いてもらいたい」
と、ご依頼をいただいたのです。
理事長さんや所長さんとお話しする中で、話題は子育てから、私が消防士として経験した救急現場のことへ広がっていきました。
講演でも、救急現場で感じた命の重みや、家族が一緒に過ごせる日常の大切さについてお話ししました。
そのうえで、保護者の皆さんに伝えたのが、親としての自分を否定しないでほしいということでした。
「自分が親として駄目だった」と決めつけないで
子どもが言うことを聞いてくれない。
何度注意しても、同じことを繰り返す。
一生懸命に向き合っているのに、気持ちが届いていないように感じる。
子育てをしていると、自信をなくすことがあると思います。
周囲の家庭がうまくいっているように見えると、自分だけが親として十分にできていないように感じることもあるかもしれません。
しかし、悩んでいるということは、それだけ子どものことを考えているということでもあります。
迷わない親、失敗しない親、いつも穏やかでいられる親でなければならないと考えれば、親自身の心が苦しくなってしまいます。
子どもに向き合おうとしてきたこと。
子どものことで悩んできたこと。
今日まで育ててきたこと。
まずは、そこまで頑張ってきた自分を認めてもよいのではないでしょうか。
親としての自分を認めることは、「自分の子育てはすべて正しい」と思い込むことではありません。
うまくできなかったことがあれば振り返りながら、それでも自分の全部を否定しないことです。
反抗していた私も、母の愛情を感じていた
保護者の方から反抗期の子どもの話を聞くと、私は自分の母のことを思い出します。
私自身、激しい反抗期がありました。
当時の母も、私の言葉や態度に心を曇らせ、心配していたのだと思います。
今になれば、
「ずいぶん心配をかけたな」
と、心の中で母に手を合わせることがあります。
荒れていた当時の私は、素直に感謝を伝えることができませんでした。
けれども、心の中には、母に申し訳ないという気持ちがありました。
親に反抗的な態度を取っていても、その子が親の愛情に気づいていないとは限りません。
思春期には、自分でも整理できないモヤモヤを、一番身近な存在である親へぶつけてしまうことがあります。
親から注いでもらった愛情に気づき、それを感謝として表せるようになるまでには、長い時間が必要なこともあります。
私自身が、そういう子どもでした。
子どもは、親が頑張る姿を見ている
講演では、保護者の皆さんに次のようにお伝えしました。
「あんなにかわいかった子どもが、どうしてこんなに反抗的な態度を取るのだろう。自分が親として、ちゃんとしていなかったからだろうか」と、親としての自分を否定しないでください。
子どもは、気持ちをいつも言葉や態度で表してくれるわけではありません。
それでも、親が自分のために頑張っている姿を見ています。
すぐには分からなくても、注いできた愛情がなくなるわけではありません。
私がそうお話しすると、涙を拭いながらうなずいている方が何人もいらっしゃいました。
子育てに悩んでいるのは、自分だけではありません。
表面からは順調に見える家庭にも、その家庭にしか分からない迷いや心配があります。
だからこそ、周囲と比べて自分を責めるのではなく、まずは今日まで頑張ってきた自分を認めてほしいと思います。
親が元気でいることも、子どもへの愛情
子どもを大切にしようと思うと、自分のことを後回しにしてしまうことがあります。
けれども、まず親が元気でいることも、子どもにとって大切なことです。
何歳になっても、子どもにとって親は大きなエネルギー源です。
子どもは、悩みや不安をたっぷり運んでくることがあります。
その一方で、親にたくさんの力や愛情を与えてくれる存在でもあります。
すべてが思いどおりにいかなくても、親子の関係がなくなるわけではありません。
「今日も、よくやった」
一日の終わりに、まずは自分へそう声をかけてもよいのではないでしょうか。
子育ては、親だけで完成させるものではない
親としての自分を認めることは、何もかも一人で抱えることではありません。
迷ったときには、家族や身近な人へ話す。
保育所や学校の先生に相談する。
誰かの力を借りながら、子どもと一緒に歩いていく。
それも、子どもを大切にする一つの方法だと思います。
この日の講演では、皆さんによく笑っていただき、涙を流す方もいらっしゃいました。
講演を終え、子どもたちの声が聞こえる園庭へ出ると、藤の花がきれいに咲き、よい香りがしていました。
子育ての毎日は、きれいなことばかりではありません。
悩む日もあれば、腹が立つ日もあります。
それでも、親として今日まで子どもと向き合ってきた自分を、全部否定しないでください。
まずは親自身が、自分の頑張りを認めること。
そこから、子どもへ向ける表情や言葉も、少しずつ変わっていくのではないかと思います。
川口西保育所の皆さん、講演の機会をいただき、本当にありがとうございました。

保育園・こども園の保護者会講演をお考えの方へ
保育園やこども園、幼稚園などの保護者会講演では、消防・救急現場で感じた命と家族の大切さ、自身の子育てや親子関係を通して学んだことをお話ししています。
「完璧な親を目指す」のではなく、悩みながら子どもと向き合っている自分を認めることを、笑いやオリジナルソングの弾き語りを交えながらお伝えします。
こちらの記事でも、保育園保護者会での講演について紹介しています。
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