おじいちゃん、おばあちゃんが子育てに口を出してきて、つらい。
助けてもらっていることには感謝していても、毎日のように自分の育て方を否定されれば、ストレスがたまるのは当然です。特に同居している場合は、簡単に距離を置くこともできません。
この記事では、祖父母を一方的に悪者にせず、親だけに我慢を求めることもなく、子育ての方針と家庭の境界線をどう伝えればよいのかを考えます。
講演会で、返答に困った質問
以前、保育園で保護者を対象にした講演会を行ったときのことです。
講演後、あるお母さんから、同居している義理のお母さんが子育てにいろいろ口を出してくるので困っている、という相談を受けました。
私は、その場ですぐに、納得してもらえるような返答ができませんでした。
祖父母には祖父母の思いがあります。一方で、毎日の子育てを担っている親にとって、繰り返される口出しは大きなストレスになります。
しかも同居していれば、少し距離を置いて気持ちを落ち着かせることも簡単ではありません。
(これは、ひと言で答えられる問題ではないな)
そう感じたことが、この記事を書くきっかけになりました。
良かれと思った言葉でも、つらいものはつらい
祖父母の口出しには、孫を心配する気持ちや、かわいがりたい思いが含まれていることがあります。
しかし、悪意がないからといって、親が我慢し続けなければならないわけではありません。
「その育て方ではだめ」
「私たちの頃は、そんなことはしなかった」
そんな言葉が何度も続けば、自分の子育てを否定されたように感じることもあります。
疲れているときや、初めての子育てに迷っているときなら、なおさらです。
祖父母に感謝していることと、やめてほしいことを伝えることは両立します。
まずは、「こんなことで腹を立てる自分が悪い」と責めなくてもよいのだと思います。
助言と過干渉は同じではありません
祖父母からの言葉がすべて過干渉というわけではありません。
自分たちの経験を伝えたり、親が気づかなかった子どものよいところを教えてくれたりすることもあります。
一方で、次のようなことが繰り返されれば、単なる助言では済まなくなります。
- 親の方針を伝えても無視する
- 子どもの前で父親や母親を否定する
- 親に無断で食べ物や物を与える
- 医師から指示されたことや安全上の決まりを守らない
- しつけや進路について、祖父母の考えを押し通そうとする
- 親子だけで過ごす時間や部屋に入り込む
子育ての最終的な責任を負い、判断するのは親です。
祖父母の経験を尊重することは大切ですが、親が決めた方針を祖父母が上書きしてよいわけではありません。
祖父母の口出しにどう対応するか

では、関係を壊さずに、どう伝えればよいのでしょうか。
すべての家庭に同じ方法が通用するわけではありませんが、一つの考え方として、次の順番が役立つと思います。
1.夫婦で方針をそろえる
最初に必要なのは、祖父母に話すことではなく、夫婦で子育ての方針を確認することです。
「食事について、どこまで守ってほしいのか」
「叱るときに、どんな言葉は使ってほしくないのか」
「親に確認せず決めてよいことは、どこまでか」
夫婦の意見が違ったままでは、祖父母も誰の考えに合わせればよいのかわかりません。
全部を細かく決める必要はありません。「ここだけは譲れない」という点を、まず二人でそろえます。
2.義理の親には、できるだけ実の子から伝える
義理のお母さんに対して、お嫁さんが一人で伝えようとすると、内容が正しくても「嫁から注意された」という感情が先に立つことがあります。
夫の母親であれば夫から、妻の両親であれば妻から伝えるほうが、関係がこじれにくい場合があります。
「妻が嫌がっているからやめて」ではなく、夫婦の考えとして、
「二人で話し合って、こう育てようと決めたんだ。協力してもらえると助かる」
と伝えることが大切です。
配偶者が間に入らず、義理の親との調整を一方に任せきりにすると、その人だけが家の中で孤立してしまいます。
3.感謝とお願いを分けずに伝える
口出しをやめてほしいときほど、最初に感謝を伝えると、話を聞いてもらいやすくなります。
「いつも子どものことを気にかけてもらって、助かっています。そのうえで、お願いしたいことがあります」
感謝したからといって、言いたいことを曖昧にする必要はありません。
「子どもの前で、私たちの決めたことを否定するのはやめてほしいです」
「おやつをあげる前に、ひと言確認してください」
「このことは、私たち夫婦に決めさせてください」
「口を出さないでください」だけではなく、何をどう変えてほしいのかを具体的に伝えます。
4.昔の子育てを否定せず、今の情報を共有する
子育ての常識は、時代とともに変わります。
そのとき、「昔のやり方は間違っています」と言えば、祖父母は自分の子育てまで否定されたように感じるかもしれません。
「昔の子育てを否定したいわけではありません。今は医師から、このように説明を受けています」
「安全に関わることなので、この決まりだけは同じように守ってください」
と、理由と一緒に伝えるほうが受け入れてもらいやすくなります。
食事、アレルギー、薬、睡眠、チャイルドシートなど、健康や安全に関わることは、家族の経験だけで判断せず、医師や保健師、公的機関の現在の情報を確認することが大切です。
5.守られない場合の対応も決めておく
何度伝えても同じことが繰り返される場合は、お願いだけではなく、境界線を示す必要があります。
「この約束を守ってもらえない間は、子どもを一人で預けることはできません」
「子どもの前でその話をする場合は、いったん席を外します」
これは祖父母を罰するためではありません。
親として、子どもと自分たちの生活を守るための対応です。
関係を保つためにも、どこまでなら受け入れられ、どこからは受け入れられないのかを明確にすることが必要な場合があります。
同居している場合は、生活のルールを決める
同居していると、子育てと生活の境目が見えにくくなります。
たまに会う祖父母なら受け流せることも、毎日続けば大きなストレスになります。
お互いが「家族なのだから、言わなくてもわかるはず」と思っていると、かえって不満がたまりやすくなります。
たとえば、次のようなことを家族で話し合っておくとよいでしょう。
- 食事やおやつを与えるときの決まり
- 叱る役割と、使わない言葉
- 親がいないとき、祖父母が決めてよい範囲
- 子どもの前で親を否定しないこと
- 親子だけで過ごす時間
- 部屋に入るときの声かけ
- おもちゃや高価な物を買う前の確認
紙に貼り出す必要まではなくても、家族の共通認識として確認しておくだけで違います。
話し合うときは、子どもの前や、誰かが腹を立てているときは避けます。一度にすべてを解決しようとせず、困っていることを一つずつ取り上げるほうが話しやすいと思います。
私にも、母へ強く言ってしまった後悔があります
私自身が子育てをしていた頃、母が「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」と、アドバイスのつもりで口を出してくることを、うるさく感じたことがありました。
仕事で疲れ、気持ちに余裕がないときには、腹立たしくて仕方がありませんでした。
「もう、口を出すなよ!」
強い口調で言ってしまったこともあります。
母は黙って引き下がりました。
今になって思い出すのは、そのときの母の寂しそうな顔です。
母はもう、この世にいません。
もっと違う伝え方ができたのではないか。
母の思いを受け止めながら、自分たちの方針を穏やかに話すこともできたのではないか。
そんな後悔が、今も心に残っています。
ただし、この経験を理由に、「親なのだから我慢したほうがよい」と言いたいわけではありません。
我慢を重ねて、ある日感情を爆発させてしまうより、困っていることを早めに、小さな言葉で伝えるほうが、互いの関係を守ることにつながると思うのです。
祖父になってわかったこと
今の私には孫がいます。
孫の顔を見ると、何かしてあげたくなります。
自分の経験を伝えたくなる気持ちもわかるようになりました。
しかし、かわいいと思う気持ちと、親の決めたことを尊重することは別です。
祖父母の役割は、親に代わって子育てを決めることではなく、親子を支えることではないでしょうか。
親とは違う視点で子どものよいところを見つけたり、話を聞いたり、昔の遊びや歌を伝えたりすることは、祖父母だからこそできることです。
私自身も、子どもの頃、母方の祖母から愛情を注いでもらいました。その存在に支えられたという思いがあります。
祖父母の存在は、子どもにとって大きな支えになることがあります。
だからこそ、親と競い合うのではなく、親世代を主役として支える関係であってほしいと思います。
子どもが見ているのは「我慢」ではなく、関わり方
親を大切にすることは大事です。
しかし、親を大切にすることと、どんな口出しにも黙って耐えることは同じではありません。
子どもは、大人同士が相手を尊重する姿を見ています。
同時に、嫌なことや困ることについて、感情をぶつけずに境界線を伝える姿も見ています。
「ありがとう」と言うこと。
「ここからは私たちに任せてください」と言うこと。
その両方が、人と関わるうえで大切なのではないでしょうか。
家族だけで解決できないときは
同居の問題は、家族だけで話し合おうとすると、これまでの関係や感情が絡み、前に進まないことがあります。
そのようなときは、保健師、子育て支援センター、園の先生など、家庭の事情に応じて相談できる人に間に入ってもらう方法もあります。
安全に関わる行為、激しい否定や暴言、生活への過度な介入が続く場合は、「家族なのだから」と一人で耐え続けないでください。
祖父母と親は、同じ側に立てる
あの講演会で質問してくださったお母さんに、今ならこうお伝えしたいと思います。
義理のお母さんの思いを理解しようとすることは大切です。
しかし、親であるあなたの考えも、同じように大切です。
感謝を伝えながら、守ってほしい境界線を具体的に話す。
夫婦で同じ側に立ち、必要であれば配偶者から自分の親に伝える。
それでも守られないときは、距離や頼り方を見直す。
祖父母と親が、どちらが正しいかを争うのではなく、子どもの安心と成長を中心に考えられたら、同じ側に立つことができます。
すぐに理想的な関係にならなくてもかまいません。
まずは一つ、いちばん困っていることを、夫婦で話し合うところから始めてみてはいかがでしょうか。
子育てや家族の絆を、講演でお伝えしています
私の講演では、家族の絆、言葉、感謝について、消防士としての体験や子育ての失敗、オリジナルソングを交えながらお話ししています。
正しい子育てを一方的に教えるのではなく、親も祖父母も迷いながら家族になっていくことを、一緒に考える時間にしたいと思っています。
学校、PTA、保育園・幼稚園、地域の研修会などで講演を企画されている方は、子育て講演会の内容をご覧ください。

