今年に入って、2022年5月に出版した一冊の本に、再び評価やレビューがつくようになりました。 出版から4年以上が経過し、もう多くの本の中に埋もれ、すっかり存在を忘れられているものと思っていました。
しかし、久しぶりにAmazonの該当ページを開くと、2桁だった評価数が3桁に増えていたのです。
今もどこかで誰かが、私の言葉を見つけて読んでくれている。 その事実に驚くと同時に、言葉にできないほどのありがたさと感動を覚えました。
そしてこの出来事は、私に「自分の人生経験を振り返り、言葉にして残すことの本当の意味」を改めて教えてくれました。
講演できなくなったことが、執筆の始まりだった

私がこの本を書き始めたきっかけは、コロナ禍でした。
講演は、私にとって単なる仕事ではく、自分の経験や学んだことをお話することが、私自身の生きがいにもなっていました。
ところが、コロナ禍によって、予定されていた講演がすべてキャンセルになりました。
人前で話す機会がなくなり、自分の思いや経験を伝えることはできなくなりました。
そこで考えたのが、書籍という形で残すことでした。
講演には時間の制約があります。
限られた時間の中では、伝えたくても話せない出来事や、そのときの心の動きがあります。
また、家族のことや消防現場で体験したことを、壇上では十分に言葉にできないこともありました。
本であれば、講演で話してきた内容だけでなく、これまで十分に語れなかったことも含めて、より深く伝えられるのではないかと思いました。
同じように家族の心の問題で悩んでいる人に、自分たちの経験が何かの参考になるかもしれない。
一人で苦しんでいる人に、「自分だけではない」と感じてもらえるかもしれない。
そんな思いから、執筆を始めました。
講演という伝える場所を失ったことが、別の形で思いを伝える一歩につながったのです。
過去と向き合う「人生の棚卸し」

この本には、
私が消防士として現場で直面したときに知った自分の心の弱さにどんな意味があったのか、
悲惨な現場での活動や、悲しい救急搬送経験で教わった人生の大切なこと、
家族の心の病気を通して経験した苦しみなど、飾らないありのままの体験を書きました。
執筆当時、私はマインドマップを使い、これまでの人生で起きた出来事や感情を一つひとつ整理していきました。
楽しかったことだけでなく、つらかったこと、悩み、失敗したこと。
頭に浮かぶ記憶を枝分かれさせながら書き出す作業は、自分の過去と真正面から向き合う時間でした。
しかし、その過程で「自分が何を経験し、そこから何を学んだのか」、そして「本当は誰に、何を伝えたいのか」を何度も問い直すことで、徐々に明確にすることができました。
一見すると無駄に思えた遠回りや、当時は意味が見出せなかったつらい経験も、一枚の地図に描いて眺めてみると、思いがけない共通点が見えてきます。
そしてそれが「自分らしさ」や「大切にしたい価値観」の輪郭を浮かび上がらせてくれたのです。
心に残る言葉には、体験の「温度」がある
講演家として15年以上活動する中で、私はある確信を持つようになりました。
それは、人の心を動かすのは、流暢な話し方、理路整然とした完璧な言葉だけではないということです。
言葉につかえながらでも、真摯に伝えようとする姿や、その人が背負ってきた「体験の重み」こそが、聞き手の胸を打つことがあります。
今はAIを使えば、誰でも簡単に、きれいに整った文章を作れる時代になりました。
私が出版した時は、校正に膨大な時間を費やしましたが、今ではAIの力で、ごく短時間で誤字脱字を訂正し、矛盾した表現やわかりにくい表現の改善案を提出してくれます。
内容についての壁打ちができ、構成案も考えてくれます。
しかし、体験したときの痛みや喜び、迷いながら考え続けた時間までは、AIが代わりに生み出してくれるわけではありません。
人の心に残る言葉には、その人が実際に通ってきた道筋と、そこから生まれた生の「体験の温度」が確実ににじみ出ています。
過去の経験が「生きがい」に変わる瞬間

自分の人生を棚卸しし、そこで見つけた想いを自分の言葉にして誰かに届けること。
それは単なる記録ではなく、自分自身の「生きがいの種」を見つけるプロセスそのものです。
4年前に、自分と向き合いながら絞り出した言葉が、時を超えて今、誰かの心に届き、何かの役に立っているかもしれない。
これほど、自分の歩んできた人生が肯定され、生きがいを感じる瞬間はありません。
特別な才能や、華やかな実績がなくてもいいのです。
あなたが迷い、悩み、それでも歩んできた経験は、言葉にすることで必ず誰かの共感や気づきにつながります。
もし今、これからの生き方やキャリアに漠然としたモヤモヤを感じているなら、まずは一度立ち止まり、自分の歩んできた道を棚卸ししてみてはいかがでしょうか。
あなたがこれから進むべき道を示す「宝」は、すでにあなた自身の過去の経験の中に眠っているはずです。
本文で触れた本はこちらです。もしご興味があれば覗いてみてください。
「人生を変える幸せの気づき: 消防現場32年間で学んだ本当の幸せとは」
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