2025年6月21日、よなご傾聴しあわせの会主催の講演会「心を込めてリッスン~笑って泣いて心の健康講演会」で、講師を務めました。
会場は鳥取県米子市淀江の米子市淀江文化センターです。
当日は、準備された椅子が足りなくなり、急きょ追加されるほど多くの方がお越しくださいました。
講演後のアンケートにあった、次の言葉が忘れられません。
「おもしろい、とにかくおもしろい。笑って、笑って、そして泣いた。」
笑いと歌を交えながら、私が消防・救急現場や家族との関わりの中で学んだ、命、感謝、言葉の大切さについてお話ししました。
消防現場で痛感した「相手の思いを聴くこと」

私が消防士だった頃、消防内部で「傾聴」という言葉を学ぶ機会は、ほとんどありませんでした。
それでも、相手の話を聴くことの大切さを痛感する場面は、何度もありました。
火災現場では、消火後に原因を調べなければなりません。ところが、消防側が自分たちの業務を進めることばかり考え、被災された方の思いへの配慮を欠くと、相手をさらに傷つけてしまいます。
「消防は自分らの用事だけ優先している。わしらがどんな思いをしているのか知ろうともしない。わしらは、今晩寝る家さえ無くなったんぞ!」
その言葉を受けた時、正しい手順で仕事をするだけでは足りないのだと気づかされました。
家を失った人の悲しみや不安を受け止めずに、こちらの説明だけを続けても、言葉は届きません。
救急現場でも同じでした。傷病者だけでなく、そばにいる家族も大きな不安を抱えています。配慮を欠いた一言によって、訴訟問題に発展しかけた事例もありました。
私は傾聴の技術を教える専門家ではありません。しかし、32年間の消防生活を通して、目の前の人を大切に思う気持ちがなければ、言葉は届かないことを学びました。
心が弱っている人に、正論が届かないこともある

いつもは元気な人でも、心が弱っている時には、普段とは違う受け止め方をすることがあります。
励ますつもりで言った「気にしすぎだぞ」「考えすぎだぞ」という言葉が、かえって相手を苦しめることもあります。
私自身も、心の病気になった家族に対して、何とか元気にしよう、考え方を変えてもらおうとして、気持ちを十分に受け止められなかったことがあります。
相手が求めていたのは、立派な助言ではなく、まず「つらい」という気持ちをわかってもらうことだったのかもしれません。
その経験があるからこそ、私は講演で、うまく励ますことよりも、「あなたのことを大切に思っている」という気持ちでそばにいることの大切さをお伝えしています。
笑って、歌って、そして涙を拭う人たち

この日の講演は、質問の時間を含めて最長2時間と伺っていたため、いつもより歌を多めにしました。
最初の方言ソングでは、笑いながら涙を拭く方があちこちにおられました。
その後、消防・救急現場で出会った命の話や、母への感謝を込めた歌をお届けすると、今度は静かに涙を拭う方の姿が見えました。男性の参加者にも、涙を拭っている方が何人もおられました。
人の悩みや苦しさを受け止める活動は、支える側の心にも負担がかかります。
この時間が、日頃から誰かの話に耳を傾けている皆様にとって、笑ったり泣いたりしながら少し肩の力を抜く時間になっていたら、うれしく思います。
「話を聴くこと」は、命を孤立させないこと

悩んでいる人の問題を、周囲の人がすべて解決できるわけではありません。
私も、消防・救急現場で救えなかった命と向き合い、自分の無力さを感じてきました。家族が心の病気になった時にも、どう寄り添えばよいのかわからず、何度も迷いました。
それでも、声をかけること、話を聴くこと、必要な支援につながるまでそばにいることには意味があると思っています。
「一人ではない」と感じられるつながりは、孤独の中にいる人を支える小さな力になります。
特別な言葉が見つからなくても、
「あなたのことを気にかけています」
という思いは伝えられます。
それは、家庭や地域でできる、自殺予防につながる大切な関わりの一つではないでしょうか。
参加者からいただいた言葉

講演後、よなご傾聴しあわせの会から、アンケートの感想を送っていただきました。会で抜粋されたものの中から、一部をご紹介します。
「家族に優しい言葉をかけようと思いました。身内に鬱の人がいるので声掛けの参考になりました。」
「人の心に寄り添う大切さを学んだ。お母さんありがとうの歌を聴き感激した。」
「今ならまだ間に合うことがたくさんあるような気がしました。」
「長年うつ病を患っているので元気づけられました。」
「研修というと身構えるが、自分自身の荷物が少し軽くなった気がする。他者への受容、共感、非常に大切ですね。」
そして、この記事のタイトルに使わせていただいた感想が、こちらです。
「おもしろい、とにかくおもしろい。笑って、笑って、そして泣いた。」
講演でお伝えした命や言葉の話が、それぞれの方の大切な人を思うきっかけになったことを、ありがたく感じました。
消防・救急現場で学んだことを、自殺予防講演で伝えています
私は、傾聴の技法を教える講師ではありません。
32年間の消防生活で多くの命と向き合った経験、救えなかった命を前に感じた無力感、そして心の病気になった家族への接し方に悩んだ経験があります。
自殺予防講演では、こうした実体験とオリジナルソングを通して、命の大切さ、心が弱っている人への声のかけ方、孤立させない地域のつながりについてお伝えしています。
重いテーマではありますが、聞く方が身構えすぎないよう、笑いや歌も交えます。笑って、泣いて、自分や身近な人の命について考える時間を届けたいと思っています。
自治体、社会福祉協議会、地域団体、民生委員・児童委員の研修などで自殺予防講演をご検討の方は、以下をご覧ください。
講演会の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演題 | 泣いて笑って心の健康講演会 ~心を込めてリッスン~ |
| 日時 | 2025年6月21日(土) |
| 主催 | よなご傾聴しあわせの会 |
| 場所 | 鳥取県米子市淀江・米子市淀江文化センター |
よなご傾聴しあわせの会の皆様、ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。

