「今日も子どもを怒りすぎてしまった」
「ほかのお母さんやお父さんのように、ちゃんとできていない」
子育てに疲れたとき、子どもではなく、自分を責めてしまうことがあります。
保護者会主催の講演会でも、参加された方から、こんな悩みを聞くことがあります。
「仕事で疲れて帰ると、子どもたちが兄弟げんかをするので、イライラしてつい怒ってしまいます。そして、あとで落ち込むんです」
「子どもに、ちゃんとしてあげられていないのではないかと、毎日不安で苦しいです」
けれど、疲れてしまうのは、子どもへの愛情が足りないからではありません。
それだけ毎日、子どものことを考え、真剣に向き合っているということでもあります。
子育てに疲れたときに思い出していただきたいのは、子どもに向けている優しさを、自分自身にも向けてほしいということです。
子育ては楽しいことばかりではない
子どもはかわいい。
大切に育てたいと思っている。
それでも、仕事や家事に追われ、子どもの世話が重なると、心に余裕がなくなることがあります。
私も二人の息子を育てるなかで、
「この接し方でいいのだろうか」
「もっと違う言い方ができたのではないか」
と、悩むことが何度もありました。
仕事や人間関係の悩みに子育ての悩みが重なり、いっぱいいっぱいになることもありました。
子どもを愛していることと、子育てが苦しいと感じることは、決して矛盾しません。
親だからといって、いつも穏やかで、明るく、正しい判断ができるわけではありません。
親も一人の人間です。
疲れる日もあれば、腹が立つ日もあります。何もかも投げ出したくなる日だってあります。
子どもにしてあげたいことを、自分にもしてあげる

親は、子どもに対して、いろいろなことを心がけています。
- ほかの子どもと比べない
- 結果だけでなく、努力や過程を認める
- できなかったことより、できたことを見る
- 話をしっかり聴く
- 失敗しても、存在そのものを否定しない
ところが、子どもにはそうしてあげたいと思いながら、自分に対しては正反対のことをしている場合があります。
「よそのお母さんは、きちんと子育てをしているのに」
「あのお父さんは、子どもと上手に関わっているのに」
「それに比べて、自分はだめな親だ」
子どもをほかの子と比べないようにしているのに、自分のことは、ほかの親と比べて責めてしまうのです。
でも、誰も「親」として生まれてきたわけではありません。
子どもが生まれてから、迷い、悩み、失敗しながら、少しずつ親になっていきます。
満点の子育てができる人はいません。
だから、子どもを見るときと同じように、自分のことも減点方式ではなく、加点方式で見てください。
食事を用意した。
子どもの話を少し聴いた。
無事に一日を終えた。
怒りすぎたあとに「ごめんね」と言えた。
それも、今日あなたができたことです。
「満点ではないけれど、今日もよくやった」
そう自分に言ってあげてください。
自分の心の声も聴いてください
子どもの話をしっかり聴くことは大切です。
それと同じように、親自身が自分の心の声を聴くことも大切です。
「疲れた」
「少し一人になりたい」
「誰かに話を聴いてほしい」
その気持ちを、わがままだと思わなくていいのです。
親だからといって、いつも明るく振る舞う必要はありません。
疲れたときには「疲れた」と言い、助けてほしいときには誰かを頼る。そうやって自分を守ることも、子育ての一部だと思います。
心の中にたまった弱音やグチを誰かに話すことについては、こちらの記事にも書いています。
子どもと暮らす時間は、あとから振り返ると短い

二人の息子が幼かった頃の写真を見ると、
「この頃の一日一日が、かけがえのない時間だったのだな」
と思います。
けれど、実際に子育てをしている最中は、そんなことばかり考えてはいられませんでした。
毎日一緒にいると、一緒にいることが当たり前になります。
兄弟げんかをしている姿を見れば、「また始まった」と腹が立つこともあります。
出口の見えないトンネルの中を歩いているように感じる時期もありました。
それでも、子どもたちが成長してから振り返ると、長いと思っていた子育ての時間は、驚くほど短いものでした。
ただし、子どもとの時間が大切だからといって、その一瞬一瞬を楽しめなければいけないわけではありません。
苦しい日もあります。
子どもと少し離れたくなる日もあります。
一人になる時間を持つことは、子どもを大切にしていないということではありません。
消防・救急現場で感じた子どもの命
私が消防士として勤務していた頃、お母さんと幼い兄弟が乗った車の事故に出動したことがあります。
二人の男の子は、ちょうど当時の私の息子たちと同じくらいの年頃でした。
救急隊員三人が、涙を流しながら搬送しました。
その後も、亡くなった子どもたちの姿が何度もよみがえりました。
家に帰ると、私は自分の息子たちを抱きしめました。
また、救急出動には「分娩」という種別もあります。
私は、妊娠の早い時期に生まれた、とても小さな赤ちゃんを搬送したことがあります。懸命に処置を続けましたが、助けることはできませんでした。
その経験から、子どもが無事に生まれ、育っていくことは、決して当たり前ではないと感じました。
しかし、これらの経験を、「子どもが元気なのだから、つらいなどと言ってはいけない」と伝えるために書いているのではありません。
子どもの命が大切であるのと同じように、その命を毎日守り、育てている親の心も大切にしてほしいのです。
「宝物の時間」は、いつも笑顔で過ごす時間ではない
子育ての時間を振り返ると、楽しかった日だけが宝物なのではありません。
兄弟げんかに困った日。
思春期の子どもとの接し方に悩んだ日。
言いすぎて後悔した日。
どうすればよいのかわからず、途方に暮れた日。
そんな日々も含めて、子どもと一緒に過ごした時間だったのだと思います。
ですから、今を無理に楽しもうとしなくても大丈夫です。
今日も完璧にできなかったと、自分を責めなくても大丈夫です。
完璧を目指さない子育てについても、別の記事に書いています。
親だって休んでいい

子どもとずっと一緒にいることが苦しくなったら、少し離れる時間を作ってください。
パートナーや家族、親戚、友人など、頼れる人がいるなら、短い時間でも子どもを任せてみてください。
家事を一つ後回しにしてもかまいません。
一人で散歩をする。
ゆっくりお茶を飲む。
誰かに苦しい気持ちを話す。
わずかな時間でも、心を休ませることはできます。
身近に頼れる人がいない場合や、つらい状態が長く続いている場合は、自治体の子育て相談窓口や医療機関など、家族以外の助けを借りる方法もあります。
助けを求めることは、親として失格だということではありません。
一人で抱え込まないことも、子どもと自分を守るために必要なことです。
今日できたことを、一つ認めてください
もし今、子育てに悩み、疲れているのなら、今日できたことを一つだけ思い出してみてください。
子どもを起こした。
食事を用意した。
「おかえり」と言った。
子どもが眠るまで、今日一日を乗り切った。
それで十分な日もあります。
子どもの頑張りを認めるように、自分の頑張りも認めてください。
子どもに「失敗しても大丈夫」と伝えるように、自分にも同じ言葉をかけてください。
子どもに向けている優しさを、どうか自分自身にも向けてあげてください。
子育ての悩みや、子どもを認めること、親自身の心を守ることについて、講演でもお話ししています。

