講演で子育ての話をすると、参加されたお母さん方が泣かれていることがよくあります。
ステージ上からも、子育てで相当ストレスを溜めこんでいらっしゃるのがうかがわれます。
そんな時、私の持論である「無条件の愛情は裏切られない」というお話をします。
もちろん、多様な親子関係があるので、それはある意味極論になるのかもしれません。
あんなに愛情を注いできたのに、裏切られた
そうおっしゃる方もあるかもしれません。
しかし、私は自分の経験や友人の体験から、親が子供を心配する関係のある家庭からは、子供の頃にいわゆる問題行動を起こしたとしても、そのまま悪さを成長させて大人になった者はいないのではないかと思っています。
私の友人に、今の真面目で熱心に仕事をする姿からは想像もつきませんが、若い頃暴走族に加わった経験を持つ者がいます。
そんな彼も、バイクを連ねて暴走行為にくり出す時には、「母さん、ごめん」と心の中で叫んでいたそうです。
私自身も、小学生の頃から問題をよく起こし、学校に母親が呼び出されることも何度かありました。
高校生の頃は、親と口もきかなくなり、食事を一緒にとらない時期もありました。
親の説教に大声で怒鳴り返すたびに、自分自身の胸が痛んでいました。
申し訳ない、という気持ちがありながら、それを上まわるモヤモヤや、言葉にできない苛立ちや、原因のわからない怒りに突き動かされていました。
そんな反抗期のさなかでも、ただ一人、いつでも素直に心を開いて話せる人がいました。
母方の祖母です。
母にも大きな愛情をもらっていたのですが、いつでもおおらかに私のことを無条件で愛してくれた祖母が大好きで、会いに行ってはいろんな話をしました。
どれだけ厳しい反抗期を迎えた子供でも、親から注がれる愛情は感じ取っているはずです。
そして、自分という存在を認めてくれる人がいれば、いずれどんな問題が起きても、それを乗り越えて行こうとする意欲を持つようになると思っています。
親である私も、子供がどんな問題を起こしたとしても面倒から逃げないぞ、という決心を忘れないように心がけていました。
そして、「何があっても、お父さんはお前の味方だぞ」と、思いを伝えるようにしていました。
我が家もかつてはいろいろあり、親の醍醐味を味あわせてもらったことが、今ではとても大切な思い出となっています。
(日本海新聞「潮流」2014年8月8日掲載)