2月に労働基準協会東部支部で労務管理講習会の講師を務める機会をいただきました。
今までの私の講演は、人権、子育て、心の健康というテーマが主で、高校の授業から高齢者学級などの年代の方まで、幅広い年齢層の方に聞いていただいてきました。
しかし、働き盛りの方に足を運んでいただける機会はそんなに多くありませんでした。
どのテーマでも「心」という視点での話をしてきました。「心をテーマに」と言うと、「お前はいかほどの人格者なのか!」と叱責されそうですが、勿論、そんな高みからの目線で言っているわけではありません。
心が壊れて行く様を身近に見てきて、ある時は命が失われる場面に仕事で立ち会ったことから、そこに至るまでになんとかできなかったのか、という当時の無念さと無力感から、心のバランスを保つことがいかに大切かを伝えたいという思いに転じたからです。
20代30代の一番の死亡原因は「自死」です。40代では二番目となっています。
働き盛りの、家族を支え、会社を支え、地域を支えて行く一番力強いはずの世代の命が多く失われているというのが現実です。
現在では心の健康問題で休職されている人がいる企業が、いない企業の数を上回っています。昨年の労働安全衛生法の改正により、従業員50名以上の事業所にメンタルチェックが義務づけられることになりました。
メンタルチェックはとても大切なことですが、日頃の予防があってこそのチェックなのではないでしょうか。これからは勤労世代の方にも話を聞いていただきたいと考えていたところへ、労務管理講習会で話す機会をいただいたことも、実にタイムリーだと感じました。
心に変調を来す原因の多くは、人間関係の悪化にあります。ハラスメントだけではなく、たとえ悪意がなくとも、個性の異なる者が複数いれば、衝突することもあります。
同じ言葉をかけられても、受け取り手の心の状況によっては悪意にしかとれないことだってあり、少しの気持ちの行き違いが、大きなストレスに変わることもあります。
そうならないためには、日頃の心のメンテナンスが必要になります。窓を開けて部屋の空気を入れ替えるように気分転換を図り、笑うことや、泣くことや、時には相談し、愚痴をこぼすことで、心にかかった負荷を軽減することが必要になります。
残念ながら、働き盛りの人ほど、人前はおろか、自分一人の時間でさえ、感情を露わにすることを潔しとしない人が多いようです。
そんな方々を全員満面の笑顔にすることが、私の目標です。
(新聞の月一コラムに掲載されたエッセイです)