泣いたっていい

泣く若い女性

以前、テレビニュースで「涙活(るいかつ)」の話題を取り上げていました。

初めて耳にする言葉でした。心のデトックスのために泣ける歌や話を聞くという「泣く活動」イベントの紹介でした。

参加者は若い女性が多く、ほとんどの人がハンカチで顔を覆い、泣くために来ているのですから当然ですが、人目をはばからず泣いていました。

最近は「笑って健康」というテーマの講演依頼を多くいただくようになった私ですが、後日いただいたアンケートを拝見すると、多くの方が「何度も涙が流れました」ということを書かれています。

爆笑していた人が、後半はハンカチを手に泣いておられる様子が、ステージから客席を見てもよく分かります。

子供の頃、「吉本新喜劇」が大好きだった私は、自身のライブや講演も「笑い」と「涙」の両面備えることを理想としてきましたので、会場がそういうムードになると達成感を覚えます。

笑いが健康のためにいかにいいかということは、ご存じの方も多いと思います。一方で、「泣く」ことは「笑い」以上に心の健康にいいのだという学説もあるようです。

一般的に、日本人は欧米人に比べ、感情を表に出すことをよしとしない国民性だと言われています。
特に男性は、悲しい出来事があっても、ぐっと涙をこらえるべきだと考えています。

私自身も、「さすがに心の進退窮まった」という時期がありましたが、泣くことなど思いもよりませんでした。
何年も経過してから、「ああ、あの時、自分は誰かに胸の内を聞いてもらいたかったんだなあ」「本当は泣きたかったんだなあ」と気づきました。

その後に作った歌で「泣いたっていい」という曲があります。

かっこ悪くったっていい
顔をぐしゃぐしゃにして
ハナミズ流したっていい
少しくらい声が出たっていいと思うよ
泣きたいときには泣こうよ

何年も何年も泣くことなんて忘れてたんだろう
だから何年分もまとめて泣いたらいいさ
悲しいときには泣こうよ 

その歌を聞いた産業カウンセラー協会の方が、「まさしく、これからの時代に必要なこと」と言って下さいました。

発達心理学者のポール・バルテスは「理想の人生とは、悲しみや苦しみを味わい、それを乗り越えた人生」だと言っています。

胸を痛める出来事に出くわしても、心を壊すことなく困難を乗り越えるためには、「涙」は必要なものなのだ、と年を取ってわかってきました。

(新聞の月一コラムに掲載されたエッセイです)

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