子育てをしていて、ついつい子どもに怒ってしまうとか、激しく叱ったあとに 「どうして自分は、こんなに可愛い子なのに、あんなに強く怒ってしまうんだろ」
と後悔したり、自己嫌悪に陥ってしまうことがあると思います。
子どもに対して怒りの感情を抑えることは、親として難しい課題のひとつです。
怒りを抑える方法は「アンガーマネジメント」という言葉も有名になり、基本的なことはよく知られるようになってきました。
方法論はわかっていても、実践するのはなかなか難しいものです。
今回は、そんな怒りはどこから来ているのか、ということについてお話したいと思います。
私が消防士時代に出動した救急現場のエピソードもお話させていただきます。
なぜ自分が怒ってしまうのか、という理由がわかれば、子どもへの向き合い方も変わってくると思いますので、参考にしていただけたら嬉しいです。
「怒り」は理由もなく突然やってくることはない
子育てをしているときって、体力も気力も使いますから、ほんとに毎日疲れることが多いと思います。
ついつい大きな声で子どもを叱ってしまうことがあるのですが、感情を爆発させているので、なんで自分はこんなに怒っているんだろう、なんて考える余裕もありません。
私も経験がありますが、あとですごく後悔するんですよね。
叱りすぎてしまって、あとで自己嫌悪に陥ることもあります。
持て余すことが多いこの「怒り」という感情ですが、実は、ふいに湧いて来た感情ではありません。
たとえば、道を歩いていて、何の理由もないのに突然「あー、頭にきた!」と怒りが湧いてくることなんてないですよね。
怒りは第二次感情
「怒り」の感情が沸き起こるには、そのきっかけが必ずあるはずです。
心理学では「怒りは第二次感情」だといいます。
「第二次」というからには、「第一次」があるわけです。
感情と表情に関する研究を長年やった心理学者ポール・エクマン(Paul Ekman)によれば、 喜び、悲しみ、怒り、恐れ、驚き、嫌悪 の6つの感情を基本感情として提唱しています。
心理学やカウンセリングの分野では、その中の「怒り」の感情は、「第二次感情」で、その他の「第一次感情」に対する反応だといわれています。
たとえば、悲しい、苦しい、不安だとか、最初にそんな感情があったのちに「怒り」が沸き起こるわけです。
「怒り」は感情の中でもとても強いエネルギーを持っていますから、元の「第一次感情」のことに気づかないことが多いようです。
たとえば、小学生の子どもが、いつもは5時には帰ってくるのに、門限を破って遅くなってから帰ってきたとき、子どもに、
「こんな時間まで何をしてたの! お前なんかもう夕食なんか食べなくていいから!」
と怒ったときに、子どもがふてくされた態度でもしたら、さらに大きな声で叱ることになります。
その「怒り」の元の第一次感情は、暗くなってもまだ帰ってこない子どものことが心配で、何かあったらどうしようという不安があったわけです。
そもそもは、子どものことを愛するがゆえに、心配して怒ってしまったわけで、どうでもよい存在であれば怒ることもありませんよね。
ただ、怒られた子どもの方は、親が自分を心配してくれたことより、怒られたことで頭がいっぱいになります。
この場合、怒りという第二次感情に流されずに、自分の第一次感情の「可愛い子どものことが心配、不安なんだ」ということの方を意識すれば、叱り方も違ってきます。
逆に、子どもが癇癪を起こしてオモチャを振り回して投げたりするのを見て、
自分が忙しいときとか、疲れているときは特に、
「何をやってるの、壊れるじゃないの、悪い子ね!」
なんて怒ってしまいがちなんですが、子どもの怒りにも第一次感情があるわけなんですね。
どうしてヤケを起こしているのか、第一次感情に気づこうとすると、
「寂しかったのね」とか
「お母さんにもっとかまって欲しかったのね」
という子どもの心の心に気づくようになります。
「叱る」ことと「怒る」ことは違います。
時には叱ることも必要です。
子どもは、親が自分の怒りを爆発させているのか、それとも自分が悪かったので叱っているのかの違いはよくわかっているものです。
日頃から子どもを無条件に愛してあげていれば、いくら叱られるような事をしていても、やがて優しく成長し、たとえ回り道をしたとしても帰ってきてくれます。
そんな私の体験をこちらに書いています。
無条件の愛情は裏切られない
ふだんから意識したい第一次感情
自分の怒りも、自分以外の人の怒りも、その第一次感情はなんだろう、とふだんから考えるようにしたら、だんだん怒りに注ぐエネルギーが少なくなります。
そうなると、コミュニケーションがうまくいくようになります。
しかし、そうは言っても、すぐには激しい怒りに流されずに第一次感情についてじっくり考える、というふうにはならないと思います。
そんなときには、怒ってしまった後からでも、
「今日、私があんなに激しく怒ってしまったのはどうしてなんだろう?」
と、考えるようにしてみてください。
頭でわかっても、親子、夫婦など関係が近ければ近いほど、第一次感情を考えることが難しくなります。
それでも、そう考える習慣がつけば、叱りすぎて自己嫌悪に陥る回数も減ると思います。
習慣って、なかなか簡単にはつかないものですから、諦めずにやってみてください。
勘違いしてほしくないんですが、「怒り」の感情自体が悪いと言っているわけではありません。
感情そのものにいいも悪いもありません。
それに「叱る」ことがダメだということではありません。
命に関わる場合や、怪我をしそうな場合には、叱ることも必要だと思います。
ただ、怒りを爆発させることは、コミュニケーション的にも、自分の健康面でもよくないということですね。
怒りにかられて夫の額をノコギリで切った奥さん
まだ私が若手消防士だった頃、夫婦ケンカで奥さんの怒りが爆発して、ご主人の額をノコギリで切ってしまったというケースで救急出動したとこのことがありました。
ケンカの発端はなんだったのかまでは、救急活動とは関係ないので聞いてはいないのですが、
ノコギリを持ち出した奥さんも、
「もっと私を大切にしてよ」とか「ちゃんと私の話を聞いてよ」
なんていう第一次感情があったんじゃないかと思います。
お互いに、相手の第一次感情について考えることができたら、救急車まで出動して、近所の人がゾロゾロとのぞきに来るようなことはなかったと思います。
まとめ
今回は、「怒り」は第二次感情で、その「怒り」にはきっかけとなる第一次感情があるというお話をしました。
子育てでイライラしてついつい過剰に怒り過ぎてしまうということも、よくあると思います。
そんなときも、自分の「怒り」の元である第一次感情はなんであるのか、と考える習慣をつけていただくことによって、怒りすぎてしまう回数が減り、自己嫌悪に陥る回数が減ります。
最初はなかなかうまくいかなくて、やっぱり怒ってしまったわ、と後悔することもあるかもしれませんが、イラッときたり、ムカッときたら、まず相手の第一次感情について考えてみることをあきらめずに続けていきましょう。