いつもと同じように過ごしている日々が、すべてお父さんやお母さん、友達など、みんなのおかげで成り立っていて、そのどれもが当たり前ではなく幸せなんだと思った。
これは、中学校で人権講演を行ったあと、一人の生徒が書いてくれた感想です。
毎日を過ごせること。
家族や友達がそばにいること。
言葉を交わし、笑ったり悩んだりできること。
普段は当たり前に感じていることが、決して当たり前ではない。そのことを、生徒自身の言葉で受け止めてくれました。
中学校で伝えた命の大切さと言葉の重み

2018年5月7日、米子市にある米子市日吉津村中学校組合立箕蚊屋中学校で、生徒の皆さんに向けて人権講演を行いました。
講演では、私が消防士として経験した現場のエピソードをもとに、
- 命の大切さ
- 言葉の重み
- 人とのつながり
- 幸せとは何か
についてお話ししました。
約1時間、写真やエピソード、ギターの弾き語りを交えながらの講演でした。
体育館に集まった生徒の皆さんが、こちらを見ながら真剣に聴いていることが伝わってきました。
私の中学生時代といえば、体育館に集まると騒々しくなり、先生からしょっちゅう叱られていました。
その頃の自分を思い出すと、箕蚊屋中学校の皆さんの姿が、なおさら印象に残りました。
中学生にどこまで話せばよいのか
中学校や高校で講演する機会が増え始めた頃、私は講演内容について悩みました。
消防現場で経験した出来事を、中学生にどこまで話してよいのだろう。
厳しい現場の話は、控えた方がよいのではないだろうか。
そんな迷いがあったのです。
しかし、自分の中学生時代を振り返ると、私はビートルズを繰り返し聴き、小説をたくさん読んでいました。
まだ十分に理解できていなかったかもしれません。それでも、大人が触れる作品に少し背伸びをしながら接することで、いろいろなことを感じ取り、吸収していました。
中学生には、大人が思っている以上に豊かな感受性があります。
そこで私は、内容を必要以上に簡単にするのではなく、一人の人間として向き合い、大人に話す内容に近い形で伝えることにしました。
「当たり前の日々が幸せだと思いました」

講演後、生徒の皆さんが感想を書いてくれました。
命について考えた生徒は、次のように綴っていました。
当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃないと思いました。今、こうしていられることが幸せだと思いました。
今ある命を大切に、いっしょうけんめい生きていきたい。
私が消防や救急の現場で目にしてきたのは、それまで続いていた日常が、突然失われてしまう現実でした。
朝起きて、家族と話し、学校へ行き、友達と同じ時間を過ごす。
何も特別なことが起きない一日は、物足りない一日ではありません。
いつもの一日を過ごせること自体が、大切な幸せなのだと思います。
生徒の感想を読み、その思いが伝わったことをうれしく感じました。
「いてくれてありがとう」と伝えたい
家族や周囲の人への感謝について書いてくれた生徒もいました。
自分を支えてくれる人がいるのに、当たり前だと思っていて感謝を伝えていませんでした。「いてくれてありがとう」と伝えようと思います。
僕は家族みんなに「いてくれてありがとう」や「産んでくれてありがとう」と伝えてみたいです。
身近な人ほど、感謝の言葉を伝えるのは照れくさいものです。
「分かってくれているはず」
そう思っていても、心の中の感謝は、言葉にしなければ相手に届かないことがあります。
講演をきっかけに、家族の存在を見つめ直し、「ありがとう」と伝えてみようと思ってくれたことは、私にとっても心に残ることでした。
言葉は人を傷つけることも、支えることもある
講演では、言葉の重みについてもお話ししました。
その話を受けて、ある生徒は次のように書いています。
私は普段の会話で、この言葉で相手は傷つかないかなとか、あまり考えていないので、気をつけたいです。
何気なく口にした言葉が、相手の心を深く傷つけることがあります。
反対に、短いひと言が、つらい思いをしている人の心を支えることもあります。
大切なのは、立派な言葉を言うことではなく、目の前にいる人の気持ちを想像することではないでしょうか。
言葉の力については、こちらの記事でも紹介しています。
周りの人を笑顔にできる人になりたい
講演を、自分の将来やこれからの行動へ結びつけた生徒もいました。
「いてくれてありがとう」と私が思っている人はたくさんいるから、私も人からそう思ってもらえる人になりたいです。
将来の夢はまだ決まっていないけど、人を笑顔にできる仕事に就きたいです。
また、別の生徒は、
困っている人がいたら、すかさず声をかけるようにする。
と、自分の目標を書いてくれました。
講演を聴いて終わるのではなく、自分はこれからどのように生きたいのか、周りの人とどのように関わりたいのかまで考えてくれたのです。
一枚一枚の感想を読みながら、私は目がウルウルしてきました。
しっかり聴いてくれたんだな。
たくさんのことを、自分の生活に重ねながら考えてくれたんだな。
そんなことを感じました。
幸せとは、最後まで自分の人生を生きること
学年通信では、講演について「命の大切さ」「言葉の重み」「幸せとは何か」を中心にした内容だったと紹介していただきました。
その中で、ある生徒が「幸せ」について、次のように書いていました。
幸せとは、「自分が自分らしく、失敗したり後悔したりすることもあるけど、あきらめず最後まで生き抜くこと」だと私はとらえました。
さらに、
最後まで生き抜くためには、周りの人の支えや関わりが必要で、自分一人じゃないんだと感じました。
とも書かれていました。
生きていれば、失敗することもあります。
後悔することも、思うようにいかないこともあります。
それでも、一人で生きているのではありません。自分を支えてくれる人がいて、自分の言葉や行動によって支えられる人もいます。
生徒の感想を読みながら、私自身もそのことをあらためて教えてもらいました。
感想に綴った思いを、ときどき思い出してほしい
講演を聴いた直後に感じたことを、毎日の生活の中で持ち続けるのは簡単ではありません。
私自身も、感謝することや大切な思いを伝えることを、つい後回しにしてしまいます。
それでも、生徒の皆さんが感想に書いてくれた言葉を、何かのときに思い出してくれたらうれしく思います。
自分の命を大切にすること。
周りの人の存在を当たり前だと思わないこと。
誰かを傷つけるのではなく、支えるために言葉を使うこと。
そして、ときには自分自身も誰かに支えてもらうこと。
私も、今ある日常への感謝を忘れず、大切な思いを言葉にして伝えていきたいと思います。
箕蚊屋中学校の生徒の皆さん、先生方、本当にありがとうございました。
中学校・高校の人権講演会をお考えの方へ
中学校や高校の人権講演会では、32年間の消防・救急現場で経験した出来事をもとに、命の大切さ、言葉の重み、人とのつながりについてお話ししています。
写真や実際のエピソード、オリジナルソングの弾き語りを交えながら、生徒の年代に合わせて講演を構成しています。
保護者を対象にした講演については、こちらの記事でも紹介しています。
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