震度6弱の地震が鳥取県中部を襲い(2016年10月21日発生)、ようやく余震の間隔は間違になってきたものこの原稿を書いている今日現在、まだゼロとはならないようです。
回数が減少したことに安堵したい気持ちと、警戒を怠ってはならないという張りつめた気持ちと、行きつ戻りつする日々が続いています。
昼の時間帯に襲われたので、職場やショッピングセンターや体育館や、それぞれさまざまな場所で地震を体験されたことと思います。
普段過ごしている家の内部の変貌や、窓ガラスが壊れ、棚から商品が落下散乱し、悲鳴が飛び交う商店の情景が、いまだに脳裏から去らない方も多いのではないでしょうか。
恐怖心がほんの少し薄らぎかけた時に、またも襲ってくる余震に、一人住まいの高齢者の方の不安はたとえようもないほど大きいだろうということは、想像に難くありません。
ボランティア募集のニュースを見て、「何もできない自分が歯がゆい」と自分を責める方もいました。あれほどの揺れを体験したのですから、誰の心も無傷ではいられません。
収束したという実感が得られるまでは、どことなく重苦しい気持ちが続くのではないでしょうか。
それでも仕事はすぐに再開され、日々の業務に、あるいは平常時以上の激務に追われている方もたくさんいらっしゃるでしょう。
まずは自分のできることをやり、日常を取り戻すことが大事なのだと思います。
私は、心が揺れるたびに、かつて阪神淡路大震災のあと、総務省消防庁から通知された消防職員の惨事ストレス対策を思い起こします。
その中に、イライラしたり、過敏になったり、感情が湧かない、出来事を思い出しそう
な場所を避けるなどの反応が出てくるが、それは「異常な状況に対する正常な反応でる」ということが書かれていました。
1人になると不安になったり、気持ちがどんよりと曇りがちになったりすることは、心が弱いのではなく、当たり前のことだということです。
自衛隊のメンタル官だった下園壮太氏の著作に、惨事後のイイラ対処法として、「仲間と愚痴る」「笑い、ユーモア、音楽の活用」ということを挙げられています。さらに、もっとも効果的なストレス解消法は、「人に相談する・悩みを打ち明ける」ことだと言われています。
地震の数日後に白壁土蔵群周辺の知り合いを訪ねました。
あちらこちらで、立ち話をする方々の姿が見られました。
みなさん、相手の被害の説明に耳を傾け、お互いに励ましあっていました。
顔を合わせて話しあうことで、張りつめていた気持ちが和らぐという実例を目にした思いでした。
忙しくて何もできないながらも、まずは身内から、離れて暮らす家族や友人に電話をかけたり、メールで話し相手になることも、大きな救いになるのではないでしょうか。
そして、自分の心の声を聞いてあげることも、忘れないでほしいと思います。
(新聞の月一コラムに掲載されたエッセイです)