いつも安全には気をつけているのになぜ?安全大会で話すこと

安全大会が始まる前の会場風景

労働衛生安全大会の講演では、たくさんの交通事故や労災現場での体験のうち、特に印象深かったエピソードをお話しています。

労災事故に関しても、救急隊として、また救助隊としてさまざまな業種の現場で活動してきました。

建築現場での転落 墜落事故
掘削作業中に重機が土砂に埋まった事故
製造工場の製造ラインで負傷した事故
プレス工場でのプレス機械の事故
草刈り作業中の草刈り機でのケガ
丸ノコで木材加工中でのケガ

業種によって事故内容はさまざまです。

目次

メンタル面が原因の事故は表に出てこない

厚生労働省が発行する労働災害の統計では、事故発生状況や被害者の属性、事故原因、業種別の発生状況などが報告されています。

しかし、事故当事者のメンタル面に関する調査などは行われていないようです。 そもそも明らかな精神異常などによる行為であれば分析もできるのでしょうが、人の心理まで客観的に解析することは困難でしょう。

企業側が行う内部調査や、治療・リハビリテーションにおいては、被害者のメンタル面も含めた健康状態の評価が行われることがあるようです。

しかし、企業の内部調査や労災保険による評価の結果は、プライバシーの問題もあり、一般には公開されることはありません。

かつて私が勤務していたのは地方の小さな消防局でした。 労災事故の当事者や関係者が、個人的に顔見知りであることも少なくありません。

もちろん、個人情報をこちらから求めて聞き出すようなことはありませんが、調査中に関係者がいろいろと話してくれることもあります。

「最近、いつもと様子が違っているなとは思ってたんですが」
「ちょっと気になっていたけど、大したことはないと思っていた」

と語る上司の方たちもいました。

ケガをした当事者も、家庭的な心配事を抱えていたり、抑うつ状態になっていたりしていることもありました。

心配事やストレスで集中力がなくなる

安全大会で歌っている石川

実際の労災事故の事例をみてみましょう。

意識が乱れて起きた転落事故 建築現場で、高所で作業を行っていた作業員が、突然意識を失い、転落事故を起こしてしまいました。 後に、その作業員には精神的なストレスにより抑うつ状態であったことが判明しました。

真夜中に起きた機械事故 工場で、夜勤を行っていた作業員が、機械の故障により負傷しました。 その作業員には家庭内の問題による精神的なストレスがあり、それが原因でいつもはちゃんとやっていた機械の点検を怠っていたことが分かりました。

厚生労働省発表の「労働災害原因要素の分析」を見ると、「不安全な状態」「不安全な行動」という客観的事実に対する分析はなされているものの、なぜそいう状況になったのか、なぜそういう行動をとったのかという心理状態までの分析はなされていません。

しかし、このようにストレスや心配事が原因で起こる労災事故は、様々な業種で発生しています。 ですから、メンタルヘルスの問題も労働災害対策において非常に重要な要素となっています。

人間は、普段は強いように見えても、心配事が重なって心に余裕がなくなると、つい集中力が欠けることがあります。

日頃から心にストレスを溜めないことが、安全面でも非常に大切だということ、ストレスを溜めないために、イライラやショックを受けたときの対策についても今後このブログに書いていこうと思います。

良好なコミュニケーションでチームワークづくり

社員同士が良好なコミュニケーションを取り、互いに理解し合うことで、生産性の向上や業務効率の改善につながり、また事故を未然に防ぐことにもつながります。

安全に対する情報を共有することも大切ですが、挨拶を交わすという基本的なことも忘れないでください。

雑談を交わす中で、相手の顔色が悪いとか、普段と様子が違うということも察知できることもあります。

緊張を強いられざるを得ない現場もあるでしょうが、休憩時間にはできるだけリラックスして会話を交わすことのできる環境づくりも大事です。

私のいた消防署で、一時期とても嫌なムードになっていたことがあります。

ただでさえ現場活動で大きなストレスを感じる業種なのですが、署内にいるときもリラックスできないとなると、24時間緊張がほぐれない状況になります。

同僚を気遣う余裕もなくなり、保身に走り、小さなミスを報告しないという状況になりました。

そうなると普段では起きるはずのないミスが発生するようになりました。

人間関係がうまくいかないために、マニュアルにはないもうひと言を伝えなかったために、起こった事故もありました。

消防も、相手が自然現象だったり、人間の制御から外れた機械だったりするので、予想もつかないそれらの動きをマニュアル化することなど到底ムリな話です。

労災事故こそ発生しませんでしたが、職員同士のコミュニケーションがいかに大切かは十分理解できました。

救助現場での危うかった状況などのエピソードなどは、ブログ記事には書けませんが、安全大会の講演ではお話しています。 講演の事前相談でご要望いただければお話させていただきます。

アンケートにあった感想

安全大会が始まる前の会場風景

安全大会での講演は、めったにアンケートを取られることがありませんが、過去に私が講師を務めさせていただいた一般社団法人鳥取県管工事業協会様の専門工事業加点研修会では、試験と同時にアンケートを取られました。

その後にアンケート結果を送っていただきましたので、そのごく一部を紹介させていただきます。

「いつもの講義と違って、大変楽しく、ためになる内容でした」

「身近な人に、軽いうつ病のある人がいるため、参考になった」

「自社の教育資料として活用したいと思います」

「たいへん心に残る研修会でした。またこの講習に参加したい」

「今までの中で一番よかったです。心の奥に残りました。元気を頂きました。2時間があっという間に感じました」

「実際のいろいろな現場の話は印象に残りました。身近な人の悩みとか聞いてあげるようにしたいです」

とても嬉しいお言葉たくさんいただきました。

「安全」という言葉は地味だが、一番大切なもの このことをリアリティーを持って再認識していただくことを目標に、さらに精進していきたいと思います。

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