心の健康づくりで災害ゼロ

安全大会で歌う石川達之

救急車で傷病者を病院に搬送するとき、家族の方が自家用車で救急車のあとを追いかけることがよくあります。

事前に、
「救急車は緊急走行しますが、そちらはスピード違反や信号無視は絶対にしないで、普通どおりの走行で病院に向かってください」 と、必ず伝えています。

夜間に走行する救急車

それでも、病気やケガをした家族のことを心配するあまりに興奮状態となり、制限速度を超えて走行する救急車にぴったりくっついて走る人も多くいらっしゃいました。

救急車自体が交通事故を起こすこともありますが、救急車を追いかけて走行する関係者の車が事故にあったこともあります。

たいへんなときこそ平常心を保つことが重要だということを、思い知らせてくれる出来事です。

目次

心配事や疲れが「いつもの判断」を奪う

他人事ではなく私自身も、かつて大きな心配事をかかえていた時期に、くよくよと考え事をしながら車を運転していて、目的地についてハッとしたことがあります。

通いなれた経路なので、ちゃんと目的地に着いてはいるのですが、道中の景色の記憶がなかったのです。

運転している時点では、ちゃんと目の前を見ていたのですが、思考の何割かは心配事に占められていたことを証明されたような気持になりました。

何事もなかったので無事に到着したわけですが、何か危ない状況が発生していたら、とっさに回避できたかどうか疑わしいものでした。

過労運転であれば、違反点数は25点、その上免許取り消しの行政処分を受ける思い罰則を受けます。

しかし、罰則以前の問題として、 心配事や疲れを抱えた状態では、ふだんできている判断ができなくなる

これは交通事故だけの話ではありません。

労働災害の現場でも、まったく同じことが起こるのです。

事故の裏側にある「心の問題」

労災事故が起きると、状況によっては救急隊だけではなく、救助工作車も出動します。

救急隊は応急処置をしながら病院へ向かいますが、工作車で出動した救助隊員は、その後、事故の状況を調査します。

そのとき、ケガをした人の同僚や上司から話を聞くと、こんな言葉が出てくることがありました。

「最近、考え事が多かったみたいで…」

「何か悩み事があるのか、ずっと元気がなかった」

ふだんはとても慎重に、安全に気をつけながら仕事をしている方です。

それでも、悩み事や心配事に心をとらわれてしまうと、いつもどおりのパフォーマンスができなくなる。

そして、その状態で事故が起こるのです。

労災事故の統計には、「心配事があった」「悩みを抱えていた」という項目はありません。

でも、 現場で調査すると、事故の背景にメンタル面の問題が見えてくることが少なくなかった のです。

睡眠不足や過度の疲労だけではなく、家庭の悩み、職場の人間関係、将来への不安。

そういった目に見えない「心の状態」が、安全に直結していることを、私は現場で何度も思い知らされました。

日頃からできる心の健康づくり

そんな状態にならないために、日頃からのメンタルヘルスが大事です。

安全大会の講演でも、いつもお伝えしていることをいくつかご紹介します。

仕事を離れて打ち込める趣味を持つ

休みの日には、仕事から完全に離れる時間を作ってください。

趣味でもスポーツでも、何でもいい。

仕事のことを忘れて没頭できるものがあると、心のリフレッシュになります。

笑う、泣く — 感情を動かす

映画やドラマ、バラエティー番組を見て、笑ったり泣いたりすること。

笑うと免疫力が上がることがわかっていますし、涙にはストレスホルモンを体の外に出す働きがあります。

「たかがテレビ」と思われるかもしれませんが、感情を動かすことは、立派なストレス解消法です。

悩みを一人で抱え込まない

悩み事や心配事は、一人で抱え込まずに家族や友人、職場の同僚に話してください。

すぐに解決できないこともあります。

でも、 ただ話を聞いてもらうだけでも、気持ちは楽になる ものです。

「こんなこと話しても仕方ない」と思わなくていい。

話すこと自体に、心を軽くする力があるのです。

心が疲れたときに必要なのは弱音とグチ。

睡眠の変化に気づく

心の不調は、 睡眠の乱れ として最初に現れることが多いです。

「最近よく眠れない」「夜中に目が覚める」「朝早く起きてしまう」

そんな変化が2週間以上続くようであれば、体からのサインだと思ってください。

自分自身のことだけでなく、職場の仲間にも気を配ってほしい。

「最近、眠れてる?」

そのひと言が、事故を未然に防ぐきっかけになるかもしれません。

睡眠不足が招く労災事故~眠りの質が命を守る

講演の様子 — 山陰酸素工業「創立75年記念安全大会」

安全大会で話す石川

11月16日、山陰酸素工業株式会社さんの「山陰酸素創立75年記念安全大会」でお話をさせていただきました。 演題は「心の健康づくりで災害ゼロに」。

山陰酸素工業さんとその協力会社43社が参加で、リモートでの参加も含めて130名の方の参加があったそうです。

メンタルヘルスについてお話をさせていただき、あるエピソードでは笑っていただき、壮絶な現場活動の体験談は真剣に聞いていただきました。

山陰酸素工業安全大会終了後の記念撮影写真

ありがとうございました。

こちらの記事に、メンタル面の問題から起こった労災事故について書いています。
「安全」への取り組みは地味だが一番大切なもの

山陰酸素さんのホームページのお知らせに掲載していただきました。
https://www.sanin-sanso.co.jp/news/「山陰酸素創立75年記念安全大会」を開催しま/

項 目内 容
タイトル山陰酸素工業「創立 75 年記念安全大会」
日 時2022年11月16日(水)14:05~
演 題「心の健康づくりで災害ゼロに」
場 所鳥取県米子市旗ヶ崎 米子食品会館大ホール
主 催山陰酸素工業株式会社
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