022年11月16日、鳥取県米子市の米子食品会館大ホールで開催された、山陰酸素工業株式会社様の「創立75年記念安全大会」で講演させていただきました。
演題は、「心の健康づくりで災害ゼロに」です。
消防・救急現場で経験した労働災害や交通事故を通して感じてきた、心の状態と安全の関係、そして何事もなく家へ帰ることの大切さを、オリジナルソングも交えながらお伝えしました。
コロナ禍により1年遅れで開催された記念安全大会
山陰酸素工業様では、5年に一度、安全大会を開催されています。
本来は創立75周年を迎えた前年に開かれる予定でしたが、コロナ禍の影響によって中止となり、この年に1年遅れで開催されました。
まだ新型コロナウイルスへの警戒が続いていた時期です。
当日は、協力会社43社から会場参加とWeb参加を合わせて約130名が出席されました。Webによる同時配信は、山陰酸素工業様にとって初めての試みだったそうです。
会場だけでなく、離れた場所からも参加できる形を整えながら、安全について共に考える大会となりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 行事 | 山陰酸素創立75年記念安全大会 |
| 日時 | 2022年11月16日 |
| 演題 | 心の健康づくりで災害ゼロに |
| 場所 | 鳥取県米子市・米子食品会館大ホール |
| 主催 | 山陰酸素工業株式会社 |
| 参加 | 協力会社43社、Web参加を含め約130名 |
「ご安全に!」の挨拶から始まった安全大会
安全大会は、山陰酸素工業の並河社長による「ご安全に!」の挨拶で始まりました。
続いて協力会社を代表して、株式会社新協工業の原野専務取締役から、年末までの無事故・無災害を目指そうという激励がありました。
大会では、山陰酸素工業様の75年の歩みが紹介されたほか、実際に起きたヒヤリハット事例の共有も行われました。
クレーン作業中の空調機破損や、足場からの転落未遂などについて、発生時の状況と再発防止策が説明されました。
事故に至らなかった出来事も、そのままにせず、次の事故を防ぐために共有する。
安全な職場をつくるうえで、とても大切な取り組みだと思います。
安全宣言に続き、大会の最後に、私が記念講演を担当しました。
救急車を追いかける家族にお願いしていたこと

講演では、消防士として働いていた頃の救急現場についてお話ししました。
救急車で傷病者を病院へ搬送するとき、ご家族が自家用車で救急車のあとを追って来られることがあります。
出発前には必ず、
「救急車は緊急走行しますが、そちらは速度違反や信号無視をせず、普通どおりの運転で病院へ向かってください」
とお伝えしていました。
それでも、大切な家族の容体が心配で、救急車のすぐ後ろを必死に追いかけて来られることがありました。
救急車を追っていたご家族の車が事故に遭ったこともあります。
家族が救急搬送されるという非常時に、冷静でいることは簡単ではありません。
しかし、一人の事故や病気を心配するあまり、さらに別の事故を起こしてしまっては、悲しみが広がってしまいます。
大変なときほど平常心を保つことの難しさと大切さを、救急現場で何度も感じました。
心配事が頭を占めていた私自身の経験
これは、事故に遭った方だけの話ではありません。
私自身も、大きな心配事を抱えていた時期に、考え事をしながら車を運転していたことがあります。
いつもの道を通って目的地には着きました。
ところが、到着してから振り返ると、途中の景色をほとんど覚えていなかったのです。
前を見て運転していたはずなのに、頭の中のかなりの部分を心配事が占めていたのだと思います。
幸い、事故は起きませんでした。
しかし、途中で危険な状況が起きていたら、いつものように素早く対応できたかどうかは分かりません。
心配事や疲労があれば、必ず事故が起きるということではありません。また、労働災害の原因を、働く人の心の状態だけに求めてはいけません。
設備、作業手順、人員配置、教育など、職場として整えるべき安全対策が大前提です。
そのうえで、眠れない日が続いていないか、頭から離れない心配事を抱えていないか、いつもと様子が違っていないか。
働く人の心身の状態にも目を向けることが、安全を支える一つの要素になると、私は現場経験を通して感じています。
同僚の変化に気づいたときの声のかけ方については、次の記事で詳しく書いています。
同僚の「いつもと違う」に気づけますか?|元消防士が考える心の健康と安全
事故の先にある家族の日常
私は32年間の消防士生活で、多くの事故や災害の現場に出動しました。
事故が起きる前まで、そこにはいつもと変わらない日常がありました。
朝、家族に「行ってきます」と声をかけて仕事へ向かう。
仕事を終えたら、「ただいま」と言って帰ってくる。
家族と食卓を囲み、何気ない会話を交わす。
その当たり前の日常が、一度の事故によって突然失われてしまうことがあります。
安全は、会社の損失を防ぐためだけのものではありません。
働く人の命を守り、その人の帰りを待つ家族の日常を守るものです。
講演では、厳しい事故現場の話だけでなく、笑っていただける話や、家族をテーマにした歌も交えました。
「梨の歌」に込めた家族への思い

この日の講演では、ギターを弾きながらオリジナルソングも歌いました。
山陰酸素工業様のホームページでは、家族の映像とともに歌った「梨の歌」についても紹介していただきました。
安全について学ぶ時間の中で、自分の家族や、帰りを待っている人のことを思い出していただく。
それも、私が安全大会で歌をお届けしている理由の一つです。
「今日も無事に帰ろう」
そう思えることが、慣れた作業をもう一度確認し、仲間に声をかける力になるのではないでしょうか。
会場とWeb配信でつないでくださった皆様へ

コロナ禍のなか、会場の設営だけでなく、初めてのWeb同時配信の準備もあり、担当された皆様は大変だったことと思います。
講演終了後には、私が持ち込んだ音響機材の片づけまで手伝っていただき、記念撮影にもご一緒いただきました。
安全大会を企画し、会場とWebの両方で参加できる環境を整えてくださった山陰酸素工業の皆様、協力会社の皆様、本当にありがとうございました。
山陰酸素工業様のホームページにも、当日の安全大会の様子が掲載されています。
「山陰酸素創立75年記念安全大会」を開催しました!|山陰酸素工業株式会社

何事もない一日が、いちばん幸せ
私は消防士として、事故によって突然日常を奪われた方や、そのご家族を数多く見てきました。
だからこそ、何事もなく仕事を終え、無事に家へ帰れる一日は、決して当たり前ではないと感じています。
大きな出来事が起きなくてもいい。
今日も無事に仕事を終え、いつもの食卓を囲む。
そんな平凡な一日こそ、かけがえのない幸せです。
安全大会で私がお伝えしたいのは、事故の怖さだけではありません。
皆さんが無事に帰ることを、心から願って待っている人がいる。
そのことを、ときどき思い出していただきたいのです。
今日も一日、ご安全に。
安全大会・労働衛生大会の講演について
私は、32年間の消防・救急現場での体験をもとに、安全大会や労働衛生大会で講演しています。
労働災害、慣れと過信、睡眠不足やストレス、職場の声かけ、チームワーク、無事に家へ帰ることの大切さなどを、実際の現場体験とオリジナルソングの弾き語りを交えてお伝えします。
安全について知識を学ぶだけでなく、自分自身や同僚、帰りを待つ家族のことを思い、安全を自分の問題として考えていただける時間を目指しています。
安全大会、労働衛生大会、企業研修などを企画されている方は、講演案内をご覧ください。

