【救えなかった命から学んだこと】 四国で初自殺予防講演会

鬼北町での自殺予防講演会の様子

2024年9月29日(日)、初めての四国での講演会でした。

愛媛県の鬼北町という町での講演で「自殺予防」がテーマでした。
演題は「救急現場で学んだいのちの重さ ~心を支える人の つながり~」。

鬼北町「自殺予防講演会」のチラシ画像

近年、自殺者は年間2万人を超える状況が続います。
若年層、特に小中高生の自殺が増加しており、都市部でも地方でも同じ問題を抱えています。

今回も、私の講演は自殺者数の推移についてより、その背景にある心の問題についてお話しました。

目次

初めて訪れた鬼北町と鳥取県の鬼

鬼北町の道の駅の鬼の像

最初の講演依頼メールを見て驚いたのは、「鬼北町」という町名でした。
一度見聞きしたら忘れられないインパクトがあります。

調べてみたら、鬼北町は、日本で唯一「鬼」の文字が入る自治体だそうです。

鬼北町入りして、まず最初に鬼がいる道の駅「広見森の三角ぼうし」に行きました。
なんと、そこには大きな赤鬼がいました。

鳥取県の伯耆町にも巨大な鬼がいるので、とても親近感を感じました。
ただ、色は緑色です。

鳥取県伯耆町の鬼の像

私の家から、鬼北町まで約400Kmの旅でした。
時間にして約6時間。
もちろん、前泊しました。

初めての土地で講演することが多いのですが、毎回新鮮な気持ちで向かいます。
観光をする時間的な余裕はないのですが、道中はいくらか旅心が生まれるようです。

チラ見ですが、瀬戸大橋からの風景を遠望して旅情を味わいました。

自損行為現場が「人には何が大切か」を教えてくれた

鬼北町自殺予防講演会会場になった近永公民館の外観

消防士だった頃、自損行為現場で活動した件数は少なくありませんでした。

未遂であっても、こちらの心は重くなりますが、すでに手遅れだった場合は、言葉で表現できない感情に満たされます。

救えなかったことへの徒労感なのか、自責感なのか、
亡くなった人の人生の重さに圧倒されるのか、
なんとも言えない重苦しさを抱えることになりました。

その重苦しさは同時に、一番大切なことを教えてくれました。

大切な人には、心の中の思いを伝えなければいけないということでした。

なかなか言えなかった大切な言葉

鬼北町講演終了後の質疑応答
講演終了後の質疑応答コーナーで感想を話す参加者さん

当時は、何度もそんな思いを経験したのに、いざ現実となると、伝えたつもりでも言葉足らずでした。

妻がうつ病になり、何年も苦しむ姿を見てきたのに、どうしていいのかわからず、途方にくれる日々を過ごしました。

ようやく言葉にして、大切に思う気持ちを伝えましたが、それでもまだまだ足りなかったのです。

今回の講演では、「家族の病気で学んだこと」ということで、当時もっとかけてあげるべきだった言葉をお伝えしました。

「家族の病気で学んだこと」のスライド

・苦しさへの理解 「苦しかったね」「つらかったね」

これらの言葉は、相手の感情や経験を否定せずに受け止めることで、感情的な孤立感を和らげます。
この言葉をかけられた相手は「自分は理解されている」「自分の感情は正当だ」と感じ、自己承認欲求が満たされやすくなります。

・居場所があることを伝える「ずっとそばにいるよ」「いつも味方だよ」

この言葉で、相手は自分が孤立していないという安心感を得ます。
特に、心の居場所があることを感じると、自分がどんな状況でも受け入れられているという感覚が生まれ、自己肯定感が高まります。

・存在価値を認める「あなたが大切なんだ」

「あなたが大切なんだ」と存在価値を肯定されると、相手は自分の存在そのものに価値があると感じます。
自己承認の最も根本的な部分は、自分が他者にとって意義ある存在であると認識することです。このような言葉をかけることで、自己肯定感が強化されます。

もちろん、自損行為に至るまでには、その人にしかわからない苦しみや悩みがあるに違いありません。
簡単に断じることはできませんが、それらの3つのことは、大切な人に自殺を思いとどまらせ、心の傷が回復に向かうことへ力を与えてくれることなのです。

私自身がもっともっと妻に言葉をかけてあげるべきだったと後悔している点でもあります。

そして、その3つのことは、自損行為を防ぐ効果だけに限らず、日頃の人間関係でも相手の成長を促したり、コミュニケーションが良好になったりと、とても大切なことです。

心中をしようとした中高年夫婦を救急搬送したエピソードも話しました。
救急病院へ向かう救急車の中で、夫が意識を取り戻し、二人で抱き合って喜び合っていた光景を、こちらのブログ記事に詳しく書いています。
「生きていてよかった」と泣いた夫婦【命の講演会で話すこと】

たくさんの人と話せる幸せ

鬼北町自殺予防講演会で歌う石川

講演の始まりには、全員が私の存在などまったく知らなかった人ばかりですが、終了後はたくさんの方から話しかけられました。

介護士の方、社会福祉関係の方、元消防士の方から、面白かったという感想や、講演の内容を今後の仕事に活かしていきたいという思いを聞かせていただきました。

また、「私の妹が鳥取に嫁いでいます」とか、「鳥取砂丘に行ったことがある」とか、鳥取のことも話されました。

控室に戻ると、色紙が何枚か置かれていて、サインを求められました。
久しぶりにサインして、つけくわえた言葉の文字を見て、あまりのヘタさ加減に、我ながら呆れました。

鬼北町の講演会終了後に控室でした石川のサイン

今後、講演の内容をさらに充実させるのとともに、字も練習しようと心に決めました。

項 目内 容
タイトル愛媛県鬼北町自殺予防講演会
日 時2024年9月29日(日)
演 題救急現場から学んだ命の重さ
~心を支える人のつながり~
場 所愛媛県北宇和郡鬼北町大字近永
近永公民館
主 催鬼北町役場
地域自殺対策強化事業
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