あなたの経験と学びが誰かを救う(とっとり琴浦熱中小学校での授業)

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2025年1月23日(土)、鳥取県東伯郡琴浦町にあるとっとり琴浦熱中小学校で授業を担当しました。

熱中小学校とは、「もういちど7歳の目で世界を…」をテーマに、大人のための学びの場を提供する地域活性化プロジェクトです。2015年に山形県高畠町で始まり、現在では国内外で20校以上に拡大しているそうです。

今回は、いつも私が主に行っているような「人権」とか「心の健康」のような講演テーマの指定もなく、「授業」という形態なので、今までの講演では話したことのない内容にしようと思いました。
そう考えると、とても新鮮に感じられて、ワクワクしました。

考えに考えた末に決めた授業タイトルは「あなたの経験と学びが誰かを救う」です。

どんな職業経験も、どんな人生経験も、どんな学びも、とても価値があるものだと思います。
それなのに、多くの人は、
「自分の経験なんて月並みで、とりたてて人に話したりどこかに発信するような資格も、価値もないよ」
と、経験・学びを伝えることを尻込みします。

しかし、特定のジャンルを除けば、発信することも人に伝えることも資格など必要ありません。
逆に、生まれながらの天才の話や世界的に成功した人の話では、一般の生活を送る人には何の参考にもならなかったり、心がまったく動かなかったりします。

自分と同じような普通の人間が、困難を克服したり、自分の経験したものと同じ挫折を乗り越えた話の方が、私たちの心により深く響くということがよくあります。
あなたの経験はきっと誰かの励みになり、勇気を与え、時には人生の転機のきっかけにもなる可能性を秘めています。

乏しい経験値ではありますが、私なりに葛藤しながら試行錯誤した脱サラとその後の講演家としての歩みを、経験豊富な生徒の皆さんが発信するきっかけになることを願って、授業内容を組み立てました。

今回の記事を、まだまだこれから地域貢献や社会と関わりながら生きがいを作り出して行こうという方々に、少しでも参考にしていただけたら幸いです。

とっとり熱中小学校ホームページ

目次

脱サラ前の葛藤

琴浦熱中小学校の外観

脱サラすることにもがいた人間として、少しでも参考にしていただける部分があればと思い、一般論ではなく、生の私の体験を書いてみます。

60歳定年の時代に、50歳で脱サラを考え始め、54歳になってすぐに脱サラしました。

54歳といえば、一般的には脱サラするには遅過ぎると言われる年齢です。
同僚は「安定した地方公務員という職業を捨てるなんて馬鹿だなぁ」という反応と、「自分も何かやれたら脱サラしたいなぁ」と羨ましがる反応を示す者に分かれました。

正直、公務員という安定した職業を捨てて、鳥取県では前例がない講演家になることへの不安はありました。
しかし、このままで自分の人生が終わったら、きっと後悔するに違いないという確信がありました。

講演家の道がいかに困難であっても、いくらなんでも野垂れ死ぬことはないだろう、という気持ちもありました。

そんなネガティブな思いばかりではなく、思い切って踏み出せば、今までの生活では出会えなかった全国のたくさんの人に出会えるかもしれない、という希望がありました。

講演という仕事を通して、誰かの辛い心を楽にしたり、明るくしたり、よりよく生きることの手助けができて、一緒に成長していきたいという強い気持ちがありました。

脱サラしてからの挫折と模索

琴浦熱中小学校の授業で話す石川

情熱がなければ脱サラに踏み切ることはできませんが、情熱だけで簡単に物事は進まないのだ、ということを思いしらされました。

脱サラ後数年は、なかなか講演依頼が入りませんでした。

脱サラする前は、講演内容さえよければ口コミで広がり、数年後には全国あちこちで講演をやっているだろう、という漠然とした根拠のない自信がありましたが、現実は甘くありませんでした。

まったく講演の仕事のない月もありました。
退職金は教育ローンや住宅ローンを一括で返済したため、残り少なくなっていました。

そしてメンタルヘルスを学ぶために鳥取県から大阪へ毎週通い、受講料、交通費、宿泊費はどんどんかさんでいきました。

のんびりと講演依頼を待っていられる状況ではないことは明白でした。

消防士を32年間勤めて、他の職業を経験していないので、もちろん営業経験もありません。
それでも講演依頼件数の少ない現状を打破するために、意を決して営業に回ることにしました。

講演業を始めて気づいたのは、基本的に鳥取県内で開催される多くの講演会は、テーマによって違うものの、地元の学校の先生や、講演テーマに関連した自治体や国の機関の担当者であることが多いのです。

鳥取県では職業講演家という概念がなかったのです。
大きな講演会を企画する場合は、企画会社に依頼するのが一般的だということも、自治体の方から聞きました。

そんな悪戦苦闘を続けるうちに、ようやく少しずつ依頼が増えて来るようになりました。

あなたの経験と学びを伝えよう

脱サラして講演活動をしていることを、ホームページやブログで知った方から、たまに脱サラ相談や起業相談の電話やメールがくることがあります。

話していると、「あなたは講演ができる人だけど、自分には何もないから」と、自分の力量を低く見積もる人が多いことに気づきました。
そう言われる私もかつては「自分には、人に伝えるだけのものなんてない」と思っていました。

いろいろと話していくと、誰でも伝える価値のある経験と知識を持っているのだと思うようになりました。
今何かを学んでいる人や、これから学びたいと思っている人は、なおさら外に向かって伝えていく価値があります。

そんな内容を授業の中で話していると、メモを取る方、熱心にうなづく方など、自ら学びの場に足を運んでいる方ばかりなので、まっすぐに聞いていただけているのが肌で感じられ、感動しました。

誰の経験・体験にも無駄はない

経験や学びを伝えるのは、何も講演やセミナーに限ったものではありません。
文章であったり、動画であったりと、いろんな方法があります。

時代を超えて多くの人に求められるテーマにはこんなものがあります。

職場での困難克服や成功体験

健康上の困難の克服

経済的困難からの脱出

精神的な苦悩の克服

社会貢献や地域活動の経験談

楽しみながら取り組んでいる活動体験

もちろん、これらはごく一部です。
まだまだたくさんのテーマがあります。

悩みや疑問に答えてくれるものだけではなく、聞き手・読み手の苦しい状況と重ね共感することのできる内容であれば、たくさんの方に求められます。

誰かを救うことを生きがいに

「誰かを救う」というと大げさに感じられるかもしれませんが、誰かの気持ちを楽にさせてあげられたり、生活の中での困りごとへのヒントを与えたり、行動を起こすために背中を押したり、いろんなことが「救う」につながります。

誰かに喜んでもらったり、感動してもらったりすることが、伝える側の喜びになり、もっともっと伝える内容や伝え方の技術を向上させたくなります。

これこそ「生きがい」と呼べるものじゃないでしょうか。

私も、講演後に手紙や葉書、メールで感謝の言葉をいただいたり、アンケートの感想に、
「来るかどうか迷っていたけど、講演を聞いて本当に来てよかったと思いました」
「今まで自殺を何度か考えたことがあったけど、今日の話を聞いて、何があっても生き抜こうと思いました」
「ずっと学校を休んでいて、今日はたまたま保健室に行こうと思っていたら、歌も歌う人の話があると聞いて講演を聞きました。聞いているうちに、こんな自分でいいんだと思えて気持ちが楽になり、学校に来てよかったと思いました」

そんな言葉が書かれていることがあります。

読みながらこちらも涙が出るのですが、自分の言葉や歌が心に届いたのだと感じられて、とても大きな喜びを感じました。

「人の役に立つ」というと大業を成し遂げなければならないと考えがちですが、自分では小さな体験や知識だと思っていることでも、発信することで誰かの役に立つことができます。

何歳になっても生きがいを作ることはできる、と私は考えています。
日本は超長寿社会になっていますが、生きがいを持つことは健康寿命を伸ばすことに大きな働きをしてくれます。
心身ともに健康で生きるためにも、「そのうちやろう」ではなくて、「よしやろう!」と決めて、まずは一歩を踏み出しましょう。

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