食卓から始まる人権意識

人権意識は食卓から

2024年1月28日、兵庫県の加古川市立平岡北小学校校区人権講演会の講師を務めました。

参加対象は、平岡小学校の生徒の保護者、先生、そして校区の住民で、演題は「消防現場で学んだ人生の大切なこと」、サブタイトルが「笑顔があふれる町に」と、地域の大切なつながりについてもお話しました。

人権意識の基礎は家庭の食卓から始まるのではないか、という話でスタートしました。

目次

食卓の会話が未来を作る

皆さんは、「人権」という言葉を聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。難しい法律の話や、学校の授業で習うような堅苦しいテーマだと感じる方もいるかもしれません。しかし、私が講演活動を通して強く感じているのは、人権意識は決して特別なものではなく、私たちの日常生活、特に家庭での食卓から育まれるものだということです。

私が講演でよくお話しするのが「人権意識は食卓から」というテーマです。もちろん、学校での人権教育や、読書を通して知識を得ることも大切です。しかし、最も根本となるのは、家庭での日常的な会話ではないでしょうか。

もし、家庭内で差別的な言葉が飛び交っていたら、子どもたちはどうでしょうか。幼い心に、正しい人権意識が育まれるとは考えにくいでしょう。

親子の触れ合い方や、日々の会話の内容が、子どもたちの偏見のない柔軟な思考を育む上で非常に大切なのです。

コロナ禍で気づいた差別の現実

かつてのコロナ禍の数年、残念ながら多くの差別や偏見が浮き彫りになりました。
感染者やその家族が店舗への入店を拒否されたり、県外ナンバーの車に心無い言葉の張り紙がされたり、SNSで個人情報が晒されたりする事件もありました。

私の住む鳥取県でも、県外ナンバーの車に投石したり、傷つけたりする事例がありました。また、感染して治癒した人が学校でいじめに遭うという報道もありました。

全国的にも、夜遅くまで営業している飲食店に投石する人、誹謗中傷の張り紙をする人々の報道が後を絶ちませんでした。不安や恐怖が、いかに簡単に私たちの社会を分断してしまうのか、そのことを痛感させられました。

東日本大震災後、県外へ移住した子どもたちが「放射能がうつる」といじめられたというニュースを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。これも、根っこは同じように、家庭での不確かな情報や偏見に基づいた会話が原因になっているのではないかと推察しています。

コロナ禍で生まれた差別も、東日本大震災時のいじめも、その根っこは、私たちの心の中にある偏見や、無知、そして不安からくるものではないでしょうか。

救急現場で学んだこと ~不用意な言葉は凶器になる~

ある自損行為現場に救急隊として到着したとき、すでに亡くなっていたケースがありました。
しかも、その自損のきっかけとなったのは、その方に不用意にかけた一言でした。

その時、私は「言葉は使い方ひとつで命を奪う凶器になるのだ」と痛感しました。
私たちの何気ない一言が、誰かの心を深く傷つけ、時には命を奪ってしまう可能性があることを思い知らされました。
不用意な言葉が、思い込みや無知からくるものであったり、心無い差別からくるものである場合もあるでしょう。
だからこそ、私たちは、日々自分が口にする言葉、文字にする言葉について、意識することも必要ですが、相手の心の状態を思いやり、推測することが必要だと知りました。

子どもたちは、親の言動をよく見て聞いています。
親が建前と本音を使い分けていることも、子どもたちはすぐに察知します。だからこそ、親として、日頃の言動には十分注意しなければなりません。

親である私たちは、子どもたちに「差別は絶対にいけない」と教えるだけでなく、なぜ差別がいけないのか、差別を受けた人はどんな気持ちになるのかを、私たち自身の言葉で語りましょう。

子どもの気持ちを我が事として想像できる親でありたい

私が、講演会で必ずお話しするのが「食卓での会話」についてです。
家族で食卓を囲む時間は、ただ食事をするだけの時間ではありません。そこは、家族のコミュニケーションを育み、互いの心を繋ぐ大切な場所です。

家族でどんな会話を交わすのか、どんな話題を話すのかは、子どもたちの人権意識を育む上で非常に重要な要素になります。

ニュースを見ていて、もし、差別的な発言をしてしまったり、根拠のない不安を煽るような発言をしてしまったら、子どもたちはどう思うでしょうか。もしかしたら、子どもたちは、学校で同じような発言をしたり、行動をしたりしてしまうかもしれません。

だからこそ、私たちは、食卓での会話を大切にし、正しい知識を基に、冷静に話し合ったり、テレビの悲しいニュースに対して思いやりのある言葉を口にする必要があるのです。

今回のコロナ禍を通して、私たちは、不安や恐れが、いかに簡単に差別や偏見を生み出してしまうのかを目の当たりにしました。
だからこそ私たち大人が、正しい知識を身につけ、冷静な判断力を養うことが大切です。そして、何よりも、相手を思いやる心を育てていくことが重要だと感じました。

子どもたちには、自分と違う意見や価値観を持つ人を尊重し、多様な人々が共生できる社会を築いていけるように、私たち大人が、日頃の言動を通して手本を示す必要があります。

未来へつなぐために

加古川総合文化センターの外観写真
講演会場となった加古川総合文化センター

感染症への警戒感が薄れていく中でも、あの時期に起きた差別や偏見の記憶を心に留め、同じ過ちを繰り返さないよう、次の世代にもしっかりと伝えていく必要があります。

そのためにも、日々の食卓での会話を大切にし、思いやりの心を育んでいきましょう。私たち大人が正しい知識と冷静な判断力を持ち、子どもたちに寄り添いながら、共に成長していきたいと思います。

これからも、ぜひご家庭での親子の会話を、人権意識の育つばとしても大切にしていただければ幸いです。

項 目内 容
タイトル加古川市立平岡北小学校校区人権講演会
日 時2024年1月28日(日)
演 題消防現場で学んだ人生の大切なこと
~笑顔があふれる町に~
場 所兵庫県加古川市 加古川総合文化センター
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