先日、コロナ禍中での避難についてのニュースを見ました。
私自身は、今まで一度も、町が指定している避難所に避難したことがありません。
2016年に鳥取県中部地震を体験しましたが、昼間に起きた地震で、私は仕事で出かけていました。
とはいっても、災害に対して無関心でいるわけにはいきません。
一応、元消防士で現職の頃には、土砂崩れの現場に救助出動したり、非番の日にボランティアで復旧作業を手伝ったこともあり、災害現場の悲惨さを目にしたことは何度もあります。
防災士の資格も持っているので、「もしもの時に備えておかなければ」という防災意識をあらためてしっかりと持っていないといけないと再認識しています。
避難勧告が出たら、空振りで終わってもいいから避難しなくてはいけない、と考えています。
しかし、このコロナ禍の中で避難所に避難することは、3密(密閉・密集・密接)の真っただ中に飛び込むことになるんじゃないか、と心配になります。
おそらく、このタイトルでここまで読み進めていただいたということは、あなたも同じような思いをお持ちなのではないでしょうか。
テレビニュースでは、いまいちどうしていいのかわからなかったので、いくつかの自治体のホームページをめぐりました。
残念ながら自治体のホームページの多くは、欲しい情報が探しにくいですね。
「なんだ、そんなのニュースで見て知ってるよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、そのあたりの情報を私なりにまとめてお伝えしたいと思います。
コロナ禍となってからの避難で特に強調されている点は、
手ぶらで避難所に行くのではなく、感染防止グッズを持参すること
在宅避難、分散避難、避難所避難かを慎重に判断すること
主にこの2点です。
避難所には感染対策グッズを持って行く
私自身は避難しなかった鳥取県中部地震のとき、避難所には主に高齢者の方が避難されていました。
地震の規模や時間帯によっては、かなりたくさんの高齢者が同じ空間で長時間過ごすことになります。
各自治体は、3密にならないように避難所の数を増やす方向に進んでいるようです。
たとえば学校の体育館だけではなく、教室も開放して相互に距離をとるなど、いろいろと考えられているようです。
自治体によっては違いがあります。
私の住む鳥取県では、
各市町村では、避難所の十分な換気やスペースの確保等の準備を進めております
とあります。
町のホームページを確認してみましたが、コロナ感染対策での避難所対応についてはまだなんの情報も掲載されていません(2020年5月24日現在)。
避難するときは何に気をつければいいか
今までの避難所への避難について言われていなかった感染対策グッズを持参することがあげられています。
マスク
手洗石けん
アルコール手指消毒液
体温計
使い捨て手袋
ペーパータオル
除菌シート
(松山市ホームページ)
これ、ちょっと意外でした。
個人の家庭では、消毒液とかマスクとか蓄えがなくなっている家庭が多いので、自治体がマスクや消毒液は容易してくれるんだろうなあ、となんとなく思っていました。
体温計にいたっては、行政担当者が額でピッと検温してくれるだろうと思っていました。
しかし、考えてみれば災害時であれば安否確認や怪我人の対応など、てんてこ舞いになりますよね。
自分の体調管理は自分でやらないといけなくなりますよね。
高齢者の方や、持病のある人などは特に体調管理が重要になりますから、日に何度も検温するためにも忘れずに持参してください、ということなんですね。
避難所への避難以外の選択肢を考えておく
私の住む町の防災マップでは、避難場所に避難することを前提にしています。
「避難場所へ行くことが困難な場合は、安全な場所に避難してください」と記載されています。
自治体によっては「避難所以外に避難することも選択肢に入れておく」ということが、実は数年前から言われていたようですが、今回のコロナの件からはなおさら重要になりました。
今までも、避難所に行かずに車中泊を選ぶ人もいました。
あえて自宅にとどまる人もいました。
ペットを連れて避難所に行けない人や、プライバシーの問題などから自宅や車中泊を選ぶ人もいたと思います。
そして、今回のこのコロナ件での3密を避けるという目的から、あえて避難所への避難以外も選択肢に入れて考える必要があるようです。
地震、洪水、津波、土砂崩れなど、災害の種類によって安全性が確保されている場所を、それぞれ考えておく必要がありますね。
他県のホームページをいろいろと見ていくと、在宅避難か避難所避難かを慎重に判断しましょう、と記載されている自治体が多くなっています。
「避難所避難」はわかりますが、「在宅避難」って言葉そのものの意味はわかるものの、
避難=避難所という考えがしみついているので、ピンときませんでした。
在宅避難とは、自宅の安全性が確保されている場合は、自宅に留まるということです。
分散避難とは、親戚や知人宅、テント泊、車中泊など自治体が指定した避難所以外に避難することです。
実家の高齢な父をどこに避難させるか
私の住んでいる町内に実家があって、今年96歳になる父が兄家族と一緒に住んでいます。
深刻な持病もなく、元気そのものですが、コロナ感染リスクがとても高い年齢です。
避難所に連れて行くことが命取りになるリスクは、どうしても高いです。
在宅避難を選ぶとしても、私のうち、あるいは息子の住んでいるマンション3階の部屋、父の兄弟である叔父や叔母の家など、災害の種類によって選択する必要があります。
津波被害の経験の土地柄ではありますが、もしものときにはどこの家が標高が高い土地に建っているか、河川から離れているかなどを調べ、家族で話し合わなければなりません。
もうひとつ大きなハードルがあります。
それはガンコな父が、素直に自宅を離れることを承諾するか、という点です。
避難勧告の放送を聞いてから説得していたのでは、口論に発展し、親子関係に亀裂が入るおそれすらあります。
そうなるとなおさら事前に父の了承を得ておく必要があります。
かなり難題ですが、命にはかえられません。
自治体の指定する避難所は安全か?
現在は、どこの市区町村もハザードマップが作成されています。
我が町も、全戸に配布されています。
ところが、町内在住の知人に「開いてみた?」とたずねても、ほぼ誰も目を通していませんでした。
同じ地図上に、洪水などによる浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定区域の3種が色分け、色線で分けてあります。
しかし、ルーペを使わないと判断できないほど小さく、色分けも微妙な違いなので入りくんだ土地は判断するのがかなり難しいようです。
高齢者が見て判断基準にすることは、困難だと思われます。
やはり、地域で話し合ったり、自治体の防災担当に直接たずねたりということが必要になります。
ほぼ平野部に住んでいるので、高台の存在自体が近くにないのですが、ハザードマップを見れば、我が家の直近の指定緊急避難場所に指定してあるのが地元公民館です。
しかし、我が家より標高の高いところにあるんですが、海に近くなります。
津波の心配があるときは、まっさきに選択肢から排除しなくてはなりません。
そんなふうに避難場所も、状況によって選択しなくてはならなくなります。
「災害・防災の心理学(木村玲欧 著)」の中にも、
「避難3原則」の1番目に、
想定にとらわれるなとあります。
東日本大震災のとき、想定にとらわれてしまったがゆえに、尊い命を失った人が大勢いたことを、具体的に挙げられています。
「人が死なない防災(片田敏孝 著)」にも、
「想定にとらわれるな」
「ハザードマップを信じるな」
とあります。
東日本大震災の津波は、当時のハザードマップの想定をはるかに越えていて、浸水想定区域外にいた大勢の人が亡くなってしまったことを挙げられています。
そいう目線で、ハザードマップも、あくまで判断材料として参考にするという考え方でなければならないということですね。
自分の住んでいる場所が、海抜何メーターに位置するのか、避難場所は何メーターくらいなのか、どれくらいの危険度が想定されているかなど、基本的なことを知るにはハザードマップを見るのが一番便利です。
紙モノで配布されていなかったり、紛失されたりしたときは、どこの自治体もホームページに掲載されいますので、ネット検索して確認してください。
まとめ
コロナ感染の心配がなくなるまでは、避難するときには、非常持出し袋に感染対策グッズを入れて避難。
高齢者の家族がいる家庭では、在宅避難、分散避難について事前に相談しておく。
特にコロナ感染対策ではありませんが、これも重要です。
ハザードマップで現状や想定を把握し、過信はしない。
なにかのきっかけがないと、自治体のホームページで災害対策などを確認することはないと思います。
しかし、災害も新型コロナも想定することが難しい対象ですので、これを機会にいろいろと家族で話し合ってみることは大切ですね。