やりたいことをやる人生にしよう

太陽を見上げ両手を広げる人

やりたいことを1ミリもやらずに死ぬのか

ふいに、そう思う瞬間がありました。

やりたいことがある。
でも、今から始めるのは遅すぎるんじゃないか。

今までどうしてやりたいことをやらずにいたのか、あらためて考えてみました。

生活費や住宅ローン、教育ローンの返済を、ずっと実行できないとの言い訳にしてきたことに気づきました。

そんな私だったんですが、自分に言い訳できない出来事が起きました。
それは 職場の先輩の死でした。

目次

消防士として見てきた命の儚さ

煙の中の消防車

救急現場や救助現場でショッキングな光景を目にするたびに、人間はいつ死ぬのか分からないことを見せつけられてきました。

「朝、起きたら、隣で寝ていた主人が息をしていないんですよ」

「仕事に行かなきゃいけないのに起きてこないので、起こしに部屋に行ってみたら、動かないんです」

そんな119番通報を受けて、救急出動することが何度もありました。

えー、眠ってるんじゃないの?
そう思うくらい安らかな表情で目を閉じている人もいました。

「昨夜は、いつもと変わりなかったので、まさかこんな・・・」

「どうにかならないんですか? 助けてください!」

家族の反応もまちまちでした。
若い人もいれば、高齢の方もいました。

そして、救急現場では家族の絆も見えてきました。

「この人を何とか助けてやってください。この人がいなくなったら、私は生きていけないんです!」
泣きながら夫の手を握る妻の姿。

「お母ちゃん、死なないで! 苦労ばっかりかけて、何もしてあげてないのに」
泣きながら母親に声をかける女性の姿。

「お母ちゃん、いっぱい愛してるよ」
意識が薄れていく母親に必死で声をかける娘の姿。

救急車の中で、その短時間に、家族の関係性や人生の縮図が見えることがありました。

中には、呼吸停止していたためにCPRしながら搬送した末、結局亡くなった人もいました。

助けられなかった悔しさを感じながら、別の思いも持ちました。

そばにいてくれる人の存在を、いつの間にか当たり前だと思っていたことに気づいた。

妻や子どもや両親。
かけがえのない存在なのに、気づけばいろんな事を後回しにしていた。

大切だと思っていても、思いを言葉にすることもなかった。

会いたがって頻繁に電話をくれる母に対しても、いつでも会えると思い、たまにしか実家に帰らなかった。

「やりたい事があるのにどうして踏み出さないんだ?」

数分前までは呼吸をしていた人を心臓マッサージしながら考えました。

何度もそんな事を考えたのですが、現場活動が終わり、日常生活に戻るとしだいにそんな思いも薄らいでいきました。

関連記事: ほんの一瞬でこの世からいなくなった若者たち|救急隊員が抱えた無力感と命の尊さ

そんなことをくり返しながら、日々が過ぎていきました。

このままでいいのかという気持ちと、今の安定を手放すなんてできないという逆の気持ちもありました。

先輩の死が教えてくれたこと

ある日、数カ月後に定年退職の日を迎える先輩に聞いてみました。
「◯◯さん、退職後は何をして過ごすんですか?」

「退職したら朝から晩までパチンコやるわ」
満面の笑顔でそう答えました。

非番の日も非常招集がよくあるので、ずっと束縛されている感覚がある職業でした。
何の心配もなくギャンブル三昧の生活をしたいのだと、ほがらかに笑った顔を今も覚えています。

その先輩が体調を崩し、医師の診察を受けると癌が見つかりました。
半年前には人間ドックも受けていたので、まさかという気持ちだったようです。

病院のモニター

本人の意思もあり、しばらくは仕事を続けながら通院。
その間にも痩せて、だんだん無口になっていきました。

定年退職の日は、病院のベッドの上で局長から退職辞令を渡されたそうです。

その数カ月後に他界。

病院の無人のベッド

24時間勤務なので、一般的な会社員の先輩後輩の関係とは異なり、文字通り寝食を共にした仲でした。

現場では、危険な状況下で協力しながら活動しました。

休憩時間には雑談で爆笑し、非番の日はよく飲んだものです。

本当にやりたいことを1ミリもやらずに死んで後悔しないのか?

自問する日が続きました。

「石川君、本当に今のままで後悔しないのか?」

仮眠室で横になっていると、頭の中で先輩の声が聞こえました。

「人間はいつ死ぬかなんて分からないぞ。やりたい事をやれよ」

それは自分が勝手に作り上げた空耳かもしれませんが、妙にリアリティーのある声がいつまでも耳に残っていました。

それでも、すぐには決断できなかった

先輩の死をきっかけに、私は動き出そうと思いました。

でも、すぐに早期退職願を出したわけではありません。

「本当に大丈夫なのか?」

「家族を路頭に迷わせるんじゃないか?」

そんな不安が、何度も私を襲いました。

躊躇したり、思い詰めたり、決断の前を行ったり来たりを何年も繰り返しました。

ずっと胸中に重たいものが積もり、年々その重さを増してきて、耐えきれなくなりました。

だから、私は少しずつ準備を始めました。

在職中にできる範囲で、県主催のイベントや自治体の講演会に出演させていただきました。

その活動をブログで発信し、少しずつ講演依頼が入るようになりました。

交通安全イベントで歌う石川

そして、妻に想いを伝えました。

「大事な人生を、思いっきり生きたい」

妻は、
「あなたがやりたいなら、応援するよ」
そう言ってくれました。

数年かかりましたが、ようやく退職願を提出する決心がつきました。

やりたいことをやる人生へ

それから早期退職願を提出し、ようやく講演家の道を歩み始めました。

正直、理想通りにはいきませんでした。講演の依頼が思ったほど来ない時期もありました。

でも、続けられたのは——

「やりたいことをやっている」という実感があったから です。

それは「やりたくないこと」での困難ではなく、 「やりたいこと」をやる上での困難 でした。

その違いは、大きかった。

今は、一時は諦めかけていたやりたい事をやっています。
たくさんの人に出会い、生きがいが感じられる生活を送っています。

「◯◯さん、ありがとうございます。おかげでやっと本気で生きているって実感が持てましたよ!」
心の中で先輩に感謝を伝えました。

今日を生きられなかった人たちが教えてくれたこと

テーブルの上の朝食

若い頃は、明日がやってくることに疑いを持ちませんでした。

自分が元気なことは当たり前で、来年も、再来年も、5年後も、10年後も、ずっと元気でいられる。

そんな錯覚をいだいていました。

でも、救急現場で今日を生きられなかった人たちに出会うたびに、思いました。

誰だって死ぬ。予兆もなく突然死ぬことだってある。
確率が低いというだけで、若ければ死なないというわけじゃない。

よく考えてみれば当たり前のことなのに、そんな当たり前のことを、いつしか忘れていたのです。

朝、いつものように目覚める。
今日、こうやって朝日を感じながら、大切な家族と語らい、出社して同僚とあいさつをかわす。

そんな平凡な日常こそ、最大の感謝に値することなのだと気づきました。

関連記事: 当たり前にある日々は、当たり前じゃない-救急車内のドラマ

そして、同時に気づいたのです。

「今日」しかないのなら——

本当にやりたいことを、いつまで先延ばしにするのか。

大切な人に伝えたい想いを、いつまで言葉にせずにいるのか。

救急車の中で泣き崩れる家族の姿を見るたびに、この2つの問いが胸に突き刺さりました。

「お母ちゃん、死なないで! 苦労ばっかりかけて、何もしてあげてないのに」と泣く女性。

「お母ちゃん、いっぱい愛してるよ」と必死で声をかける娘。

もし、日頃から想いを伝えていたら。
もし、やりたいことを我慢せず、自分らしく生きていたら。

明日がないとわかったとき、後悔することは少なかっただろう。

今を大切に生きる とは、2つの意味があるのだと思います。

1つは、 自分らしく、やりたいことをやって生きること。

もう1つは、 大切な人に、想いを伝えながら生きること。

この2つは、別々のものではありません。

どちらも「後悔のない人生」を生きるために、欠かせないものなのです。

今日から、1ミリだけ動いてみる

講演のベンチに座る夫婦の後ろ姿

もちろん、大切な人を失えば、誰だって「ああもしてあげればよかった」「こんなこともやってあげられたのに」と後悔することはあるでしょう。

それでも、感謝を伝えられていたなら、「やりたいことを我慢せずに生きていた」なら、喪失感も、自分への後悔も、いくらか癒やされていただろうと思います。

では、私たちは今日から何をすればいいのでしょうか。

いきなり大きく変える必要はありません。

まずは、 1ミリだけ 、動いてみてください。

やりたいことに、1ミリだけ近づく

・やりたいことについて、情報を集めてみる
・できる範囲で、小さく始めてみる
・信頼できる人に、想いを話してみる
・今は夢みたいな話だと思えても、将来の計画を、紙に書き出してみてください

大切な人に、想いを伝える

小さな 「ありがとう」「大切に思っているよ」 という言葉で十分です。

直接言葉にすることが恥ずかしいなら、手紙やメールでもいい。
一緒に散歩をする、食事を作ってあげる、それだけでも想いは伝わります。

私も、脱サラを実行するにあたって、最初は「本当に大丈夫かな?」と不安でした。

でも、「感謝」を言葉にして伝え、今生きていることに感謝できるようになって、不安は薄らいでいきました。

やりたいことに向かって、一歩ずつ進んでいくうちに、道が見えてきました。

踏み出さないと道は見えてきません。

でも、踏み出せば、必ず道は開けます。

後悔のない人生を、一緒に

住宅街に朝日が登る風景

これを読んでいるあなたに、先輩の言葉をもう一度伝えます。

「人間はいつ死ぬかなんて分からないぞ。やりたい事をやれよ」

人生は一度きり。

朝、目覚めることができる今日という日を大切に。

やりたいことに、1ミリだけでも近づいてみてください。

そばにいてくれる人に、小さな感謝を伝えてください。

この2つが揃ったとき、あなたの人生は「後悔のない人生」へと変わっていきます。

たとえ何年先でも、何歳になっても、お互いに本当にやりたい事をやりましょう。

まずはほんの小さな事からでも、今日から始めてみましょう。

後悔のない人生を、一緒に歩んでいきましょう。

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