「今、こんなにかわいい子が何年かしたら『うるせぇなぁ、クソババア』なんていうようになったらどうします?」
私がそういうと、悲しそうな表情になる人、苦笑いをする人、さまざまな反応がありました。
「そこまでひどいことを言うかどうかは分かりませんが、反抗期は必ずやってきます」
大きなため息をつくお母さんがいました。
「でも、安心してください。心配したり、不安になったり、悩むこともこれから多くなるかもしれませんが、子どもたちもたいへんなんです。成長して自立するために、愛してくれて大事にしてくれた親に反抗しなきゃいけないんですから」
5年ぶりに兵庫県新温泉町の温泉小学校に行きました。
授業参観後に、保護者の方が対象の人権子育て講演会でした。
悩みに悩み、大いに心配し、試行錯誤した我が家の子育てについて、何箇所も穴があいた我が家の壁の画像も見ていただきながらお話しました。
私は、保育園から高校までの保護者の方にお話する機会が多いのですが、子どもさんが高校生になると、保育園や小学校の保護者さんの反応とは、違ってきます。
「うちの子、口をきかなくなって、話しかけても無視するんです」
「部屋に入ろうとすると、すごく怒って私のこと怒鳴るんです」
「あんなにお母さん、お母さんってくっついてきた子が、怖い顔してにらむんですよ」
こんなに愛情を注いでいるのに、どうして冷たい態度を取るのか、親は自分の反抗期のことは忘れてしまって、心配したり、さびしくなったりします。
私もそうでした。
何かあったらすぐに相談してきた息子たちでしたが、中学生の2年生くらいからだんだん口数が減ってきました。
こちらが問いかけたことには答えるんですが、自分から話しかけてこなくなりました。
子どもの反抗期は、自立して生きていくために必要なものだといいます。
私自身、とても激しい反抗期を送りましたが、早く大人になりたい、大人として扱ってもらいたいという欲求がとても強かったのは覚えています。
それなのに一人で生きていく自信がなく、その矛盾を腹立たしく感じていました。
その後、聞いた言葉に、
親子の愛情が深ければ深いほど、子どもは強い絆を断ち切って自立するために、反抗が強くなるのだそうです。
つまり、子どもの反抗が強いほど、お互いの絆が強かった証になるわけです。
そう考えると、気持ちがとても楽になりました。
子どもがイライラして口答えするのを見ながら、これも親の愛をちゃんと感じていたからこそなんだなぁ、と思うと心に余裕ができました。
成人し、社会人になった息子たちと当時のことを話すと、
「なんで壁に穴をあけるほどムカついてたのか、まったく覚えてないけど、ムシャクシャしてたんだろうなぁ。お父さんやお母さんの気持はよくわかってたんだけど」
と言っていました。
私自身も、反抗期の頃のことを思い出すと、よくわかりました。
親に文句をいいながらも、気持ちの中では申し訳ないという気持ちもちゃんとありました。
そんな親と子どもの成長期を過ぎると、ふたたびなんでも話し合えるようになります。
抜けるまでは出口のないトンネルの中にいるような気持ちになりますが、抜けてみると、子育てという大事業を成し遂げた達成感と、子どもたちとの親密感で幸せな気持ちになります。
校長先生は、
「申し訳ないんですが、授業参観のあとの講演なので、なかなか残る保護者は少ないんです」
とすまなさそうにおっしゃいましたが、たくさんの方が残って聞いたくださいました。
後半は、大半の方が涙を拭いながら聞いておられました。
終わったあとも、何人かのお母さんと子育て話は続きました。
今回の講演で私をご指名いただいたのは、保護者の役員さんでした。
5年前の講演を聞かれた方がいて「あのときの講師の話を聞かせたい」と提案していただき、即決したそうです。
役員の皆さん、ありがとうございました。
そして先生方、参加された保護者さん、ありがとうございました。
今度は、お子さんが反抗期の頃に呼んでいただきましたら、子どもが反抗期のときに作った歌を歌いたいと思います。
項 目 | 内 容 |
---|---|
講演会タイトル | 新温泉町立温泉小学校PTA人権講演会 |
日 時 | 2021/10/29(金)14:30~16:00 |
演 題 | 「命を大切にする子育て」 |
場 所 | 兵庫県美方郡新温泉町 新温泉町立温泉小学校 |