「人に合わせすぎて疲れた」と感じたら|元消防士が見つけた自分を守る判断基準

サラリーマンが居酒屋で乾杯をしている風景

「今夜一緒に飲みに行こうよ」
「金曜日はうちの課の全員でビアガーデンだ!」

そんな上司の声がオフィスに響き渡るとき、部下の多くは気づかれないように深い溜め息をついている。
そんな職場は少なくありません。

「本当は早く帰りたいのに、断れない」

職場の飲み会に限らず、私達は他人の誘いを断りきれずに、自分の貴重な時間を不本意なことに費やしてしまうことがあります。

断ることで雰囲気が悪くなる。 断れば付き合いが悪いと言われ、人間関係が悪くなる。 そんなことを考えて、ついつい付き合ってしまう。

「職場の付き合いだから仕方ない」

消防士だった頃の私も、そう自分に言い聞かせて、飲み会に参加していました。

人に合わせすぎて疲れた。自分がどうしたいのかも分からなくなってきた。そんなとき、どうすれば自分の大切なものを見失わずにいられるのでしょうか。私自身の経験から考えてみます。

目次

「断ったら関係が悪くなる」と思っていた

夜の繁華街

私が所属していた署は、24時間勤務の隔日勤務制でした。
非番日には、飲み会が頻繁にありました。

妻のことが気になりながらも、誘いを断れば「付き合いが悪い」と思われるのではないか。そんな心配が先に立ち、参加していたのです。

飲み会に限りません。業務でも、ほかの人が受け持つはずの仕事を振られたり、サービス残業を求められたりすることがありました。

当時は、火災原因調査報告書など、火災発生から何日後までという提出期限が、火災の規模に関わらず決められていたので、サービス残業してでも報告書を仕上げるのは当たり前だと考えている上司もいました。

「断ったら、関係が悪くなるんじゃないか」

そう思って引き受けていました。自分のことを優先するのは、わがままではないか。冷たい人間だと思われないか。その迷いもありました。

妻の「心細い」を聞きながら、優先できなかった

人気のない夜の住宅街

私は消防局に32年間在職していました。

所属していた署は、24時間勤務の隔日勤務制。 一日置きにしか家にいられないのに、頻繁に飲み会が開催される職場でした。

妻のことが気になりながらも参加していました。

実は、当時の妻はうつ病で苦しんでいたのです。

一日置きにしか家にいない。 その貴重な在宅の日も、飲み会に出かける。 妻がどんなに不安だったか。

気にはしていたものの、「職場の付き合いだから仕方ない」
そう自分に言い聞かせていたのです。

しかし、妻の状態が悪化していくと、さすがに優先順位を考えざるを得なくなりました。

飲み会を欠席することが増えました。

しかし、意外なことに、日頃から良好だった人間関係は、飲み会に行かなくても良好なままでした。

逆に、元々良好ではない間柄が、酒席を共にして和気あいあいとなることはほぼありませんでした。
むしろ、酔いにまかせて日頃のうっぷんを吐き出し合うことになり、さらに悪化することさえありました。

飲み会に行かなくても、大切な人間関係は壊れなかった。

この発見は、私にとって大きな転機でした。

人に合わせ続けると、自分の考えが分からなくなる

一家団らんで夕食を食べる親子

人から誘われたり、仕事を頼まれたりしたとき、私は「自分はどうしたいか」より先に、「相手はどう思うか」を考えていました。

それを繰り返すうちに、妻との時間も、自分の心身の状態も、後回しになっていました。自分が何を大切にしたいのか、はっきり見えていなかったのです。

消防士として救急現場に出たときには、親の期待や仕事上の重圧に苦しみ、心身の調子を崩した方に接することもありました。

自分を傷つける行為に至った方を搬送したこともあります。

事情は一人ひとり違いますが、無理を重ねている人の姿は、私自身の生き方を考えるきっかけにもなりました。

他人を尊重することと、自分を犠牲にし続けることは違います。誰かが無理をして仕事を引き受け続ければ、本来は職場全体で考えるべき問題が見えにくくなることもあります。

自分の気持ちを確かめる、小さな方法

妻に脱サラの意思を伝える男性

妻のうつ病をきっかけに飲み会への参加を減らした私ですが、変わったのは出欠だけではありません。

「自分が本当に大切にしたいものは何か」

初めて、真剣に考えるようになりました。

妻との時間。家族の健康。自分自身の心身の状態。そして、本当にやりたいことに使う時間。

大切なものが見えてくると、誘いや頼み事への向き合い方も変わります。人に合わせすぎて、自分の考えが分からなくなったときは、次のような小さな問いから始めてみてはいかがでしょうか。

1.すぐに返事をしない。
迷っているなら「少し考えてから返事をします」と伝え、自分の気持ちを確かめる時間をつくる。

2.「行くべきか」より「本当はどうしたいか」を考える。
誰かをがっかりさせないための答えと、自分の希望をいったん分けてみる。

3.守りたいものを一つ書き出す。
家族との時間、休息、健康など、今回の選択で大切にしたいものを言葉にする。

4.小さなことから希望を伝える。
たとえば「今日は家で過ごしたいので、今回は欠席します」。
相手を否定せず、自分の都合を伝える言い方もあります。

    この飲み会は、大切な時間を使ってまで行きたいものか。この仕事は、今の自分が引き受けられるものか。

    「断る」ことが目的ではありません。自分が大切にしたいものを守るために、選ぶのです。私はそう考えるようになってから、断ることへの罪悪感がずいぶん薄まりました。

    もし今、人に合わせすぎて疲れているなら、次の誘いに答える前に「私はどうしたいだろう」と一度だけ自分に聞いてみてください。すぐに大きく変わらなくても、その小さな間が、自分の気持ちを取り戻す一歩になると思います。

    心のセルフケアについては、こちらにも書いています。
    心の傷を自分で癒やす

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