「今夜一緒に飲みに行こうよ」
「金曜日はうちの課の全員でビアガーデンだ!」
そんな上司の声がオフィスに響き渡るとき、部下の多くは気づかれないように深い溜め息をついている。そんな職場は少なくありません。
「割り勘で飲んで、みんなの愚痴を延々と聞くなんてちょっと…」と、心の中で思いながらも言い出せない人が多いことでしょう。
たまの飲み会なら親睦を深められて楽しいと感じる人がいたとしても、その回数が多くなるとうんざりしてしまいます。
職場の飲み会に限らず、私達は他人の誘いを断りきれずに、ついつい自分の貴重な時間を不本意なことに費やしてしまうことがあります。
断ることで雰囲気が悪くなる
断れば付き合いが悪いと言われ、人間関係が悪くなる
そんなことを考えて、ついつい付き合ってしまうことが多くないでしょうか?
しかし、時間は有限です。 貴重な時間を無駄にして後悔しないための自分軸で生きることの重要性についてお話します。
自分を優先することは我儘ではない
お酒など飲まずに本当は家に帰り、家族と過ごす時間が欲しいと思っている人が多いはずです。
しかし、その想いを押し殺して、居酒屋の暖簾をくぐる人がほとんどでしょう。
同様に、友人や仲間からの頼み事に対しても、本当は忙しいのに断れず、結果的には後悔することも多いでしょう。
日本人は欧米人のようにドライに自己主張できずに、他人のために行動する傾向があります。
しかし、その行動が本当に自分の内面に沿ったものなのでしょうか。
自分のことを優先することは我儘ではないか、他人の感情を理解できない冷たい人間ではないかと悩んでしまうこともあるでしょう。しかし、お人好しになって常に他人に合わせて生きていると、心のバランスが崩れてしまうこともあります。
それを避けるためには、「自分軸」を見つけることが大切です。
自分軸とは何か?
自分軸とは、自分自身の価値観や信念、優先順位を明確に持ち、それに基づいて行動することです。
「断ることは悪いことなのか?」
「自分を優先することは我ままなのだろうか?」
と疑問に思ったら、それは自分軸がはっきりしていない証拠かもしれません。
自分軸が明確になると、大切なものを見失うことなく、自分の生き方を選ぶことができます。
私ごとですが、私の妻は私が消防局に在職中にうつ病になりました。
所属していた署は、24時間勤務の隔日勤務制でした。
一日置きにしか家にいられないのに、頻繁に飲み会が開催される職場だったので、妻のことが気になりながらも参加していました。
しかし、妻の状態が悪化して行くと、優先順位を考えざるを得なくなり、欠席することが多くなりました。
お酒の席を共にすることで親睦がはかれるという利点を否定するわけではありません。
しかし、私のいた職場の飲み会は、酔いが進むとその場にいない者の個人攻撃など、生産的とはいえない酒席の方が多かったのです。
家庭の事情ということで欠席することが多くなってわかったことがあります。
日常勤務で元々関係性が良好ではない間柄が、酒席を共にして和気あいあいとなることはほぼない、ということでした。
むしろ、酔いにまかせて日頃のうっぷんを吐き出し合うことになり、更に悪化することさえあります。
元々良好な人間関係を気づいていた相手とは、お酒を飲まなくても良好なままでした。
飲み会への不本意な参加は、他人軸で生きることのほんの一端です。
業務でも、他人が受け持つはずの仕事を振られたり、サービス残業を求められたりすることもありました。
しかし、妻との時間を最優先に置かねばならなくなって気づいたのは、もっと自分自身のことも優先していいのだということです。
その事に気づいてからは、他人から「つき合いが悪い」と言われることは気にせず、自分自身の価値観で生きることを意識しています。
自分軸を見つけ、大切なものを守る
自分軸を持つことで、本当に大切なものを見失わないようになります。
私たちは、無意識のうちに自分の大切なものや時間を他人に譲って生てしまいがちです。
しかし、自分軸を明確にすることで、それを防げるのです。
「自分軸」という言葉は抽象的に聞こえるかもしれませんが、実は非常にシンプルな概念です。
それは、自分自身が何を最も大切に思うか、何を優先するかということを明確にし、それに基づいて行動するということです。
つまり、自分軸とは、自分の人生を自分自身でコントロールし、自分の大切なものを守るための思考方法とも言えるでしょう。
それを持つことで、人生はより充実し、幸せになることができます。
自分軸を見つけることは、自己理解の一環でもあります。
それは自分自身の思考を深め、自分自身の感情や願望に向き合うための重要な一歩となります。
そして、自分軸を明確にした上での行動は、後悔や自己否定のない、自分らしい生き方を可能にします。
4.心の健康のための自分軸
他人軸で生きて、自分や自分の家族、自分の価値観を犠牲にした先には、本当の幸福は存在しません。
親の過大な期待に応えようとして、無理をし続けた末にメンタルを壊す。
上司を失望させないために、過剰な業務を抱え込む。
同僚に嫌われないために、疲れていても無理をして付き合う。
私は消防士時代に、そんな他人軸で生きた末に心を壊し、自損行為に走ってしまった人を、何人も救急搬送して来ました。
他人を尊重することと、他人軸で生きることとは、根本的に違うのです。
他人軸で生きて、自分を犠牲にすることで、本来は職場全体の問題として改善すべき点が、うやむやになってしまうことだってあります。
最初は、断ったり、自己主張したりすることに、勇気がいるかもしれません。
後で気に病むこともあるかもしれません。
しかし、唯々諾々と従っていれば、いつまでも幸せになれません。
「これが自分軸だ」と自分で納得して、前に進みましょう。
自分軸で生きると同時に、他人の存在を尊重し、他人の価値観を理解し、互いが自分らしい幸せを実現する第一歩として、自分軸について考えてみましょう。
メンタルをセルフケアする方法についてこちらに書いています。
心の傷を自分で癒やす