「おじいちゃん、おばあちゃんが子育てに口を出して困ってます。どうすればいいんでしょうか?」
子育てや人権参観日の講演後の質疑応答に、ときどきそんな質問があります。
「すごくストレス溜まってるんです」
そうおっしゃる方の表情を見ると、本当に悩んでいることが伝わってきます。
都会から田舎に嫁いで来て相談相手もいないくて、よけいにストレスが溜まるのだと話されました。
同居していない家庭でも、同じような悩みは多いはずです。
私自身も、消防士として働きながら2人の子どもを育ててきました。
同居していたわけではありませんが、共働きだったこともあり、私の実家や妻の実家で面倒を見てもらうこともありました。
妻の両親、私の両親と、それぞれ価値観が違って、時には戸惑うこともありました。
なぜ祖父母は口を出すのか
父母も義父母も、すでに他界してしまった今となっては、彼らの気持ちもわかるようになりました。
孫の幸せを心から願っているからこそ、自分の経験を伝えたくなる。
良かれと思って、アドバイスしているんですね。
ただ、その伝え方が、時代とともに変わった子育ての常識と合わないことがあったり、中にはトゲのある言い方をするおじいちゃん、おばあちゃんもいるので、言われる方はよけいにイライラが蓄積します。
たとえば、祖父母世代が子育てをしていた頃は、「抱き癖がつくから泣いてもすぐに抱っこしない方がいい」と言われていました。
でも今は、「たくさん抱っこして安心感を与えることで、自己肯定感が育つ」と言われています。
祖父母世代が「常識」だと思っていたことが、実は現代では違うことがたくさんあります。
それを知らずに、「こうした方がいい」とアドバイスするから、若い世代との間に摩擦が生まれてしまう。
おじいちゃん、おばあちゃんも知識の更新が必要
私が講演でよくお話しするのは、「誰も悪くない」ということです。
けれど、おじいちゃん、おばあちゃんも、かつての子育ての知識や経験を上書きしないといけないのも事実です。
祖父母世代は、自分たちが学んできた子育ての知識で、精一杯孫を愛そうとしている。
若い世代は、最新の情報を学びながら、自分たちなりの子育てをしようとしている。
どちらも間違っていません。
ただ、時代は変わりました。
医学や脳科学の研究が進んで、子育てに関する知識がアップデートされてきました。
そのことを、おじいちゃん、おばあちゃんが理解しないといけません。
ただ、おじいちゃん、おばあちゃんも、性格はいろいろです。
素直に聞いてくれる家庭もあれば、角が立ってしまって一緒にいることが辛くなる場合もあるかもしれません。

実は、私自身も同じ経験があります。
子どもたちが幼かった頃、母親が「こうした方がいいよ」「ああした方がいいよ」と、アドバイスのつもりであれこれ口を出してくることが、とてもうるさく感じられました。
忙しくて余裕がないとき、疲れているときは特に、腹立たしくて仕方がなかった。
「もうかまわないでくれよ!」
そんなふうに強い口調で言ってしまったことが、何度もあります。
母は、黙って引き下がりました。
でも、今になって思い出すのは、あのときの母の寂しそうな顔です。
ただ孫のことが心配で、可愛くて、何かしてあげたかっただけなのに。
母はもう、この世にいません。
あのときの母の顔を思い出すたびに、胸が痛みます。
やみくもに拒絶しないで、
「今はこうすることが常識になっているんだから」
と、じっくり話せばよかった。
そんな後悔が、今も心に残っています。
今は孫がいるので、あの時の母の気持ちがなおさらよくわかります。
具体的にどう対応すればいいのか
では、実際にどうすればいいのでしょうか。
講演の質疑応答でいただいた質問に、いつも私がお答えしている内容をご紹介します。
感謝の気持ちを伝える
まずは、感謝の気持ちを伝えてみましょう。
「いつも孫のことを気にかけてくれて、ありがとうございます」
「おじいちゃん、おばあちゃんがいてくれて、本当に助かっています」
この一言があるだけで、祖父母の気持ちは全然違います。
自分たちの存在が認められている、必要とされている、と感じられると、人は嬉しいものです。
「そんなこと絶対に言えない!」
そんなふうにストレスがさらに溜まるようなら、無理はしないでください。
子育ての方針を穏やかに伝える
次に、自分たちの子育ての方針を、穏やかに伝える ことです。
ポイントは、「否定しない」ということ。
「昔のやり方は間違っている」と言ってしまうと、祖父母は自分たちの子育てを否定されたように感じてしまいます。
そうではなくて、
「時代が変わって、今はこういうふうに言われているんですよ」
「最近の研究で、こんなことがわかってきたみたいなんです」
というふうに、情報として伝えてみてください。
協力者になってもらう
そして、祖父母を 「協力者」 として巻き込んでいくんです。
「最近、虫歯が心配になってきて、お風呂の後は水と麦茶だけにしようね、と子どもと約束したんです。協力お願いします!」
このように、子どもとの約束を守らせるために、祖父母に協力をお願いする形にする。
すると、祖父母も「お約束はなんだったかな?」「ママやパパに聞いてからね」と、親の方針を尊重してくれるようになります。
「我が家の枠組み」を決める
また、「ここまではOKだけど、ここからは絶対にダメ」という枠組み を家族で決めておくことも大切です。
たとえば、「ゲームは禁止」という枠組みがあれば、祖父母がゲームをプレゼントしようとしても、子ども自身が「うちはダメなんだ」と説明できるようになります。
枠組みを理解した子どもは、柔軟に対応する力も身につけていきます。
タイミングと伝え方を工夫する
祖父母に何かをお願いするときは、タイミングと伝え方が大切 です。
角が立たないように、相手を責めることにならないように、伝える時を見計らう。
孫が帰った後の落ち着いた時間に、一対一でゆっくり話す。
そんな配慮も、円滑なコミュニケーションには欠かせません。
祖父母の甘やかしとどう向き合うか
「でも、おじいちゃんおばあちゃんが甘やかしすぎるのが心配です」
そんな声もよく聞きます。
たしかに、何でも買い与えたり、わがままを全部聞いたりすると、子どもに悪い影響が出ることもあります。
祖父母にとっては孫を可愛がるのは、生きがいかもしれませんが、それでは困ります。
たとえば、なんでも孫に買い与えてしまうという場合は、何度でも「◯◯を買ってやるのはやめてください」と言う必要があります。
そんな場合は、「そのかわりに、△△を買ってやってください」と、必要なもので、もっと高額なものをお願いするのもいいかもしれません。
反対に、祖父母が厳しすぎると感じるケースもあります。
孫に立派に育ってほしいという愛情の表れであることが多いのですが、この場合も『子どものことを思ってくださっているのはわかります。ただ、今は少し見守る形でお願いできますか』と穏やかに伝えてみてください。
ただし、甘やかしの場合も厳しすぎる場合も、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
子どもが萎縮してしまうほどの厳しさや、人格を否定するような関係であれば、親として毅然と子どもを守ることが最優先です。
距離を取ることも、大切な選択です。
「じいちゃん、ばあちゃんは口を出さないでね」
私が、高齢者が対象の講演会や、たまにある「孫育て講演会」などでは、
「くれぐれも息子、娘たちの子育てに口を出さないようにしましょう」
と伝えています。
「ああすればいいのに、こうすればもっとよくなるのに、などと思っても、ぐっとこらえて見守りましょう。
我々じいちゃん、ばあちゃんは、後方支援が一番大事なんです」
「彼らも、今は大事な「親育ちの」の期間を過ごしているのです。
その邪魔をしないように、手助けやアドバイスは最小限にしましょう」
そんなふうに話しています。
私たち夫婦も、よくお互いに反省しあいながら孫たちに接しています。
孫可愛さにメロメロになって、ついつい孫の言いなりになっていたりします。
ときどき息子たちに叱られて、謝ることもあります。
さらに個人的な話ですが、母のあの頃の寂しそうな顔を、今でもときどき思い出します。
あのとき、「口出しするな」ではなく、「一緒に考えよう」と言えていたら、
あるいは「こうしてくれると助かるよ」と言っていたら、
母はきっと、笑顔で協力してくれたと思います。
おじいちゃん、おばあちゃんが口を出すのは、孫が可愛くて仕方がないから。
お父さん、お母さんがイライラするのは、自分たちの子育てを必死に守りたいから。
どちらも、子どもへの愛情です。
ぶつかることもあるでしょう。
簡単にはいかないことも、あるでしょう。
それでも、 世代を超えた愛情の中で育つ子どもは、豊かに育ちます。
まずは、冷戦状態にならないように、小さなことでも話し合ってみてください。





