コロナ禍だからこそ「優しさ」と「思いやり」小学校PTA講演会

学校保護者会の人権講演会では、消防現場で肌で感じてきた命の重さや、人権について深く考えさせられた経験に加えて、子育てについてもお話します。

親であれば、どんなに一生懸命になって子どもに関わってきても、悩むことがあります。
愛情を持って育てても、
「本当にこれでいいのだろうか?」
と不安になることもあります。

一生懸命だからこそ悩み、強い愛情があるからこそ不安になります。
その場その場で、自分が子どもにした対応についての答えが見られるわけではありません。
ひと月後、一年後、もしかしたら子どもが大人になったときに、親である自分への解答に気づくことになるかもしれません。
それでも、今この瞬間に、子どもに対する思いを言葉にして伝えることはとても大切です。

10月12日に、兵庫県美方郡新温泉町の浜坂東小学校の「PTA人権講演会」の講師を務めさせていただきました。

コロナ禍なので、広い体育館に約30名の保護者さんと先生に、十分過ぎるほどの距離を取って聞いていただきました。

今回の講演の演題は「消防現場で学んだ優しさの意味~人を生かす言葉の力~」というテーマでお話しました。

「優しさの意味」という言葉は、今回はじめて使わせていただきました。
いつもは「命の重さ」とか「生きることの輝き」という言葉を使っていました。

コロナ禍で、誰もがストレスを蓄積している時期です。
人と触れ合うことで、苦しさを乗り越えたり、楽しく盛り上がったりしていたことができなくなりました。

子どもも親も、元気なつもりでいても、心のどこかが疲れ、いつも不自由を感じているのではないでしょうか。

兵庫県美方郡新温泉町の浜坂東小学校の「PTA人権講演会」で話す石川

私が消防現場で学んだことの中のひとつに、
「思いやり」「優しさ」の力の強さの発見がありました。

「思いやり」も「優しさ」も、ありきたりで言い古された言葉ではあります。
しかし、そのさりげない言葉の力は、実際には日頃の我々の想像を超えた力を持っています。

救急車のストレッチャーに横たわる我が子を心配そうに見守る両親

苦しそうに眉間にしわを寄せて目を閉じた母親の手を握り、励ます子ども

荒い呼吸をくり返す息子に、大きな声で呼びかける父親

意識を取り戻した我が子を、号泣しながら抱きしめる母親

強い愛情による切ないまでの思いやりが、その場に満ちていました。
そんな思いやりや優しさのおかげで、誰もが成長させてもらっていたのだ、と改めて思い知らされました。

多くの人たちがそんな思いやりや優しさを持っているはずなのに、新型コロナウイルスに対する恐怖と不安で、お互いを非難中傷したり、攻撃したりするニュースを見るたびに、心の中が寒々とします。

学校では、医療従事者の子どもたちがいじめにあっているという報道もありました。
子どもたちが学校でそんな言動や振る舞いをしているということは、テレビニュースを見ただけではないはずです。
家庭で両親が口にする非難の言葉を聞いていて、そんな行動をとった子もいるでしょう。

「思いやり」が欠けることで、口にしたひと言が、鋭い刃物となって心を傷つけることがあります。
傷つけられた人が、一番つらい悲しい選択をした現場にも出動してきました。

相手をそこまで傷つけ、追い詰めたことに、後になって気づいても、もう遅いのだということを想像することもできなかったのでしょう。

今一度、親である大人である私たちがあらためて「思いやり」「優しさ」について考えてみる必要があるように思います。

子どもたちの存在が、日々の閉塞感をやわらげ、荒みそうになる気持ちを和ませてくれていることに感謝の思いを持って、「思いやり」と「優しさ」を伝えて行きましょう。

広い体育館で、多くの人が涙を拭いていました。
そして、笑顔を浮かべて聞いてくださいました。

今回の講演は、教頭先生が、2016年に新温泉町小学校に赴任されていたときに聞かれた私の講演を覚えていてくださって、実現しました。
本当にご縁に感謝しています。

保護者会役員の方々、保護者のみなさま、ありがとうございました。

項 目内 容
タイトル新温泉町立浜坂東小学校PTA人権講演会
日 時令和2年10月12日(月)14:30~15:45
演 題「消防現場で学んだ優しさの意味~人を生かす言葉の力~」
場 所兵庫県美方郡新温泉町高末 新温泉町立浜坂東小学校体育館
主 催新温泉町立浜坂東小学校PTA
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