2025年6月21日(土)、よなご傾聴しあわせの会さん主催の講演会「心を込めてリッスン~笑って泣いて心の健康講演会」で講師を務めました。
幸せの会さんのメンバーは約20人で、会場が広いので、できればたくさんの方に参加していただきたいと、参加無料で事前予約の必要もいらないと広報されました。
当日は、準備した椅子が足りなくて補充され、会場いっぱいの参加者さんの笑顔であふれていました。
傾聴の必要性を痛感した消防士時代

私が消防局を早期退職して、すでに15年近くになります。
今は、消防士も「傾聴」について学ぶ機会が作られているようですが、当時は「傾聴」という言葉も、消防内部ではまだ取り上げることがありませんでした。
しかし、私自身はその重要性を肌で感じる現場を何度も経験していました。
救急現場での対応や、搬送中の救急車の中で傷病者につきそう関係者の方に接する時。
火災現場での原因調査で、関係者に質問調書を録取する時。
自分の業務の遂行だけに注意力を奪われて、住民への対応がおろそかになると、大きなトラブルに発展します。
「消防は自分らの用事だけ優先している。わしらがどんな思いをしているのか知ろうともしない。わしらは、今晩寝る家さえ無くなったんぞ!」
激怒した住民は、消防士の言葉に耳を傾けるどころか、憎しみさえ抱きます。
救急搬送時でも同様です。
家族の病気やケガで不安な思いで付き添う家族に、配慮を欠いた発言をした者もいました。
訴訟問題に発展しかけたような事例もありました。
「あなたが大切なんだ」という思いを持って接したい

いつもは元気いっぱいの人も、心が弱っているときには、普段通りの心の動きではなくなります。
元気な時とは違う感じ方や考え方をするようになります。
そんな心理状態の人に、
励ましのつもりで言った「気にし過ぎだぞ」とか「考えすぎだぞ」という言葉が、よけいにその人を苦しめることになります。
心の弱った人は、アドバイスをもらって、それを自分への非難だと受け取るようになります。
アドバイスが欲しいわけではなく、自分の苦しさを表現したい、つらい状況をわかってもらいたい、共感して欲しいというのが本心です。
簡単ではありませんが、心から寄り添うことが「傾聴」です。
私自身も、その「傾聴」ができずに、心の病気の家族の気持ちを苦しめた過去があります。
これからも「傾聴」を意識して寄り添って行こうと考えています。
ストレスを笑いと涙で解消

傾聴ボランティアは、感謝されてやり甲斐も大きいのですが、反面、なかなか意思の疎通ができなくて、つらい言葉を聞くこともあるそうです。
人と関わる仕事では、どうしても避けられないストレスがありますが、それは傾聴ボランティアも同じです。
相手の深い悩みや苦しみを受け止める時、聞き手側にも心理的な負担がかかります。
だからこそ、定期的にストレスを発散する機会が必要になります。
私の講演時間は、60分~90分が多いのですが、この日は質問タイムを入れて最長2時間とのお話だったので、いつもより歌を多めにやりました。
最初の方言ソングでは笑いすぎて涙を拭く人があちこちに。
今回の講演では、参加者の皆さんに思いっきり笑って、感動して涙を流していただきました。
男性の参加者さんも、何人もの方が涙を拭っている様子が見えました。
感情を表に出すことで、日頃溜まっていた心の重荷を軽くしてもらえたのではないでしょうか。
傾聴ボランティアを続けていくためには、支援する側の心の健康も大切です。笑いと涙でリフレッシュできる時間が、皆さんの活動の支えになれたとしたら、こんな嬉しいことはありません。
傾聴の必要性が高まる時代背景

現代日本において、傾聴のニーズはかつてないほど高まっているようです。
2024年4月に施行された「孤独・孤立対策推進法」に関連して実施された内閣府の全国調査(令和5年)では、孤独感を感じる人が約4割に上ることが明らかになっています。
WHO(世界保健機関)も2023年11月に「社会的つながりを育む委員会」を新設し、孤独・孤立問題を「世界的な公衆衛生の優先課題」として位置づけています。
これからの日本社会において、米子傾聴の会さんのような心の弱った人の話に耳を傾けるボランティア活動はますます必要な時代になります。
高齢化の進展、核家族化、地域コミュニティの希薄化といった社会構造の変化により、一人で悩みを抱え込む人々が増加しています。
日本財団の自殺意識調査によると、自殺のリスクを抑える最も重要な要因は「家族に居場所があること」と「人間同士は理解や共感ができると考えていること」とがわかっています。
つまり、誰かが自分の話を聞いてくれる、理解してくれるという実感こそが、生きる支えになるります。
家庭で、地域で、職場で、一人ひとりが傾聴の心を持ち、身近な人の小さな変化に気づき、声をかけ合う。そんな地域のつながりが、これからの時代にはますます必要になってくるのは間違いありません。
それだけに、私たち個人の心身の健康も、人との触れ合いを絶やさないことが、維持することになり、自殺予防にもつながる重要な要素となっています。
私自身も、今後も講演活動を地道に続けて行こうと、あらためてあらためて決意を新たにしました。
参加者の反響(アンケートより)

アンケートの感想を送っていただきましたので、その一部をご紹介します。
よなご傾聴しあわせの会さんの方で、内容を抜粋されたものをまとめられているので、いただいた原文のまま掲載させていただきます。
笑いと涙だと感情が洗われました。 ありがとうの言葉を 101歳の母に伝える。
人生において指針となりました。 聞く聴くに心を切り替えていきたいと思います。
本当に久しぶりに生のいい声を聴き楽しみました。 今後 CD で音楽を聴きます。
母に産んでくれてありがとうと伝えます。 これからの人生機嫌よく生きていきます。
ストレスの対処方法や家族砥のコミニケションに非常に参考になった。
家族に優しい言葉をかけようと思いました。 身内に鬱の人がいるので声掛けの参考になりました。
日々明るい気持ちで暮らしていけます。 87 歳です大変面白く聞き、 元気になりました。
人の心に寄り添う大切さを学んだ。お母さんありがとうの歌を聴き感激した。
今ならまだ間に合うことがたくさんあるような気がしました。
長年うつ病を患っているので元気づけられました。
研修というと身構えるが自分自身の荷物が少し軽くなった気がする。 他者への受容、共感、非常に大切ですね。
お友達に聞き参加しました。 一日一日を大切にして、毎日楽しく生きていこうと思っています。
ほんとうに温かいお言葉をたくさんいただきました。
そして、このブログ記事のタイトルにも使わせていただいた感想がこちらです。
おもしろい、 とにかくおもしろい。 笑って、 笑って、 そして泣いた。
残りの人生、たくさんの人に出会いたい!
54歳になって遅すぎると言われながら早期退職をしたのですが、
「自分の人生であとどれくらいの人に出会えるかわからないが、もっとたくさんの人に出会いたい」
と思ったのもきっかけの一つでした。
ふつうは高齢期に向かうにつれて、身辺を整理し、友達さえも断捨離する人が少なくありません。
しかし、私は自分の講演を通じて、たくさんの人に出会い、思いを共有したいという気持ちがありました。
今回も、まさにその思いが叶った講演でした。
本当に感謝でいっぱいです。
私自身も笑ったり泣いたりしながら、心身の健康に留意して、これからもたくさんの人に出会いたいと思います。
項 目 | 内 容 |
---|---|
演 題 | 泣いて笑って心の健康講演会 ~心を込めてリッスン~ |
日 時 | 2025年6月21日(土) |
主 催 | よなご傾聴しあわせの会 |
場 所 | 鳥取県米子市淀江 米子市淀江文化センター |