自殺予防講演会は、「命を大切にしましょう」と一方的に呼びかけるだけの講演ではありません。
私は32年間、消防士として救急、火災、救助など、数多くの現場で命と向き合ってきました。
救うことができた命があります。
どれだけ力を尽くしても、救えなかった命もあります。
自ら命を絶った方の現場では、亡くなった方だけでなく、そばで泣き続ける家族の姿も目にしてきました。
私自身も、親しい友人や身内を自死で失った経験があります。そのたびに、「何かできることはなかったのか」という思いを抱えてきました。
こうした消防・救急現場での実体験を通して、
- 苦しい気持ちを一人で抱えないこと
- 心が弱っている人を孤立させないこと
- 励ます前に、その人の苦しさを受け止めること
- 必要な支援へつなぐこと
の大切さをお伝えします。
重いテーマだけに終始せず、穏やかなユーモアやオリジナルソングも交えながら、自分自身の命や、身近な人との関わりについて考えていただく講演です。
心の苦しさは、一人ひとり違う

消防を3月に早期退職した翌月から、私は妻と二人で、毎週大阪へ通いました。日本メンタルヘルス協会の授業を一緒に受けるためです。
そこで、妻と同じように心の病気を経験した方や、心に大きな傷を負った方たちと出会い、親しく交流するようになりました。
お話を聞く中で知ったのは、同じ心の病気と呼ばれていても、症状も苦しさも一様ではないということでした。
回復までの道のりも、病気との向き合い方も、一人ひとり違います。
自分の経験だけを基準にして、
「こうすれば元気になる」
「この言葉をかければ大丈夫」
と決めつけることはできません。
私自身、心の病気になった妻を何とか元気にしようとして、かえって妻の気持ちを十分に受け止められなかったことがあります。
相手が求めていたのは、立派な助言ではなく、まず「つらい」という気持ちを分かってもらうことだったのかもしれません。
だから講演でも、正しい答えを一方的に伝えるのではなく、相手の苦しさを否定せずに受け止めること、話を聴くこと、必要に応じて専門機関や周囲の支援につなぐことの大切さをお話ししています。
私は、心理・医療の専門的な治療を行う立場ではありません。
32年間の消防・救急現場、心の病気になった妻を支えた経験、日本メンタルヘルス協会での学び、そして心にさまざまな苦しさを抱えた方たちとの交流を通して感じたことをお伝えしています。
この講演でお伝えする3つのこと

1.生きていること自体に価値がある
消防・救急現場では、成績も、肩書きも、誰かからの評価も関係ありません。
ただ、生きていてほしい。
その願いしかありませんでした。
自ら命を絶とうとしたものの一命を取り留めたご夫婦が、意識を取り戻したあと、抱き合いながら、
「よかった。本当によかった。生きていてよかった」
と泣いて喜ばれた姿が、今も記憶に残っています。
うまくいかないことがあっても、夢が破れても、誰かの期待に応えられなくても、命の価値が小さくなるわけではありません。
講演では、消防・救急現場で出会った命の姿を通して、生きていること自体の価値をお伝えします。
2.励ます前に、苦しさを受け止める
心がつらそうな人を前にすると、私たちは何とか励まそうとします。
「頑張って」
「しっかりして」
「気にしすぎだよ」
相手を思って伝えた言葉でも、すでに精いっぱい頑張っている人には、重荷になることがあります。
そんなときに必要なのは、正しい答えや強い励ましではなく、
「つらかったね」
「話してくれてありがとう」
「一人で抱えなくていいよ」
「何か私にできることはある?」
と、苦しさを受け止める言葉かもしれません。
大切なのは、決められた言葉を使うことではありません。相手の気持ちを否定せず、理解しようとすることだと思います。
3.声をかけ、話を聴き、支援につなぐ
身近な人の苦しみを、家族や友人だけですべて解決することはできません。
それでも、いつもと様子が違う人に声をかけること、話を聴くこと、一人にしないことには意味があります。
特別な言葉が見つからなくても、
「あなたのことを気にかけています」
という思いは伝えられます。
自分たちだけで支えることが難しい場合は、医療機関や相談窓口など、必要な支援につなぐことも大切です。
話を聴くことは、すぐに答えを出すことではありません。その人の命を孤立させないための、小さくても大切な関わりではないでしょうか。
中学生・高校生向け講演
中学生・高校生は、友人関係、家族、勉強、進路、自分自身への不安など、大人には見えない苦しさを抱えることがあります。
講演では、恐怖を与えるために救急現場の話をするのではありません。
火災現場から救出した少年の泣き声を聞き、私が心の中で願った、
「生きていてくれ」
という思いをはじめ、命と向き合った実体験を、年齢に配慮しながらお話しします。
生徒たちに持ち帰ってほしいのは、次の言葉です。
- うまくいかない自分にも価値がある
- 苦しいときは、一人で答えを出さなくてよい
- 家族、先生、友達など、話せる人に話してほしい
- 身近な人が元気を失っていたら、声をかけてほしい
夢があるから偉いわけでも、夢がないから悪いわけでもありません。
夢が破れたり、目標を達成できなかったりしても、それで人生が終わるわけではありません。
生きているだけですごい。
そんな思いを、実体験と歌を通してお伝えします。
一般・地域住民・支援者向け講演
一般向けの講演では、家族、友人、同僚、地域の人など、身近な人の心を支える関わりについて考えます。
主な内容は次のとおりです。
- 心が弱っている人への声のかけ方
- 励ましや正論が負担になる場合
- 苦しさを否定せずに話を聴くこと
- 孤独や生きづらさを抱える人を孤立させない関わり
- 家族や支援者自身の心を守ること
- 医療機関や相談窓口など、必要な支援へつなぐこと
自治体、社会福祉協議会、福祉団体、民生委員・児童委員、傾聴ボランティア、地域団体など、対象や開催目的に合わせて内容を調整します。
重いテーマを、歌と言葉で心に届ける

自殺予防は、とても重いテーマです。
暗い話ばかりが続けば、聞く方の心に大きな負担をかけてしまうこともあります。
この講演では、消防・救急現場での体験だけでなく、日常の中で感じた温かさ、家族への感謝、穏やかなユーモアも交えてお話しします。
さらに、講演テーマに合わせて作ったオリジナルソングを、ギターの弾き語りでお届けします。
言葉だけでは伝えきれない思いも歌に込めながら、命や人とのつながりについて考える時間にしたいと思っています。
参加者からいただいた感想
自殺や命のことを題材に講演するには勇気がいると思います。暗い話だけにせず、歌を交えながら、命の尊さと言葉の大切さを伝えていただけてよかったです。
悲惨な現場を知っている元消防士さんだからこその言葉の力があり、命の重みを感じました。私も「ありがとう」を伝えたくなりました。
私も助けられなかった命があり、ずっと心に引っかかっていました。今日のお話を聞いて、生きていくことそのものが大切であると気づきました。
中学生・高校生からも、次のような感想をいただいています。
僕も、悩みは友達や両親に話してみます。
友達が苦しんでいたら、とことん話を聞いてあげようと思います。
今ある命を大切に、一生懸命生きます。
演題例
- 救急現場で学んだ命の重さ
~心を支える人のつながり~ - うつの家族と向き合うとき
~もしも「死にたい」と言われたら~ - 救急現場が教える命の大切さ
~人を生かす言葉の力~
対象者や開催目的に応じて、内容や演題を調整します。
主な講演実績
- 滋賀県精神保健福祉協会
- 鬼北町地域自殺対策講演会(愛媛県)
- 枚方市自殺予防対策事業普及啓発講演会(大阪府)
- 能美市自殺防止対策講演会(石川県)
- 井原市「こころの健康講演会」(岡山県)
- いのちをつなぐ総合相談会(福井県)
- 「眠れてますか?」睡眠キャンペーン(鳥取県)
- 「うつの家族と向き合うとき~もしも『死にたい』と言われたら~」(兵庫県西宮市)
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