感謝することが、人が生きていく上においてとても大切なことは、誰もがよく知っている事ですよね。
感謝の念を持つことで、幸福感が高まったり、ストレスを軽減したり、免疫機能を向上させることなどが知られています。
それが十分に分かっていても、日常生活では眼の前の忙しさなどにかまけて、つい忘れがちになってしまうものです。
私もそうでしたが、消防士だった頃に出動した救急現場で、感謝の素晴らしさに大きな感動を覚えた経験があり、日常生活の中で事ある毎に思い出し、感謝ができるようになりました。
そのエピソードをお話したいと思います。
感謝がまったくない異様な光景
最初に、感謝がまったくない異様な光景を見た救急出動についてお話します。
ある山間部の一軒家に救急出動しました。
「おばあちゃんが倒れて意識がない」 という要請で駆けつけた私たちは、居間に横たわっている心肺停止状態のおばあさんを発見しました。
おばあさんには目もくれず、高校生の兄と中学生の妹はコタツに入って、テレビゲームに夢中でした。
この異様な光景は、衝撃を受けました。
どんな家族の歴史があったのかなど、もちろん私達にはわかりません。
たとえどんな事業があったにせよ、目の前で家族が倒れていて、しかも呼吸もしていない状態ならゲームどころではないはずです。
寒々とした気持ちで救急車へ収容しました。
愛情が伝わる家族関係
それとは間逆な救急現場がありました。
寝たきりのおじいさんの呼吸状態が悪くなったという要請内容でした。
おじいさんがいたのは、何かあったらすぐに運び出せるように玄関のすぐ横の部屋でした。
部屋に入ると、息子夫婦と2人の孫娘がおじいさんのベッドを囲んでいました。
心配そうにおじいさんを見守り、涙ぐみながら話しかけていました。
おじいさんは小さな声で「ありがとう、ありがとう」とくり返していました。
その一瞬で、おじいさんに対する家族全員の強い愛情が伝わってきました。
救急車内での涙
救急車にはお母さんと孫娘の一人が同乗しました。
搬送中も、酸素マスクをしたおじいさんの手を孫娘が握りしめていました。
「おじいちゃんは、いつでもお前たちのことを・・・」 酸素マスクをしていて声が小さい上に、救急車の走行音でその先は聞き取れませんでした。
なんとか聞き取ろうとして耳を寄せて聞いていた孫娘は、急に肩を大きく震わせました。
その背中にお母さんが腕をまわした。
呼吸が苦しくて荒い呼吸を続けながらも、おじいさんは家族に感謝の言葉を伝えていたのです。
この時のことをこちらにも書いています。
火災・救急出動で感じる愛のある部屋とすさんだ部屋
感謝の大切さにあらためて気づく
おじいさんを病院に収容して、署に帰る道中、私は自分の家族について考え、大切な友人や知人のことを考えました。
日常生活ではついつい忘れがちな感謝の言葉。
思っていても口にしなかったり、言わなくてもわかってくれているはずだと伝えなかったりすることが多かった私は、あらためて感謝の大切さを教わりました。
おそらくあのおじいさんは、常日頃から誰に対しても感謝ができて、しっかりと感謝を伝えていた人だったのでしょう。
特に家族に対しては深い愛情を、心残りのないように毎日言葉にしていたんだと思いました。
感謝を忘れない生活
生きていると、いろいろと大変なことがあります。
予想もしなかった困難や、悲しい出来事もあります。
人は悩み事があったり、心に余裕がなかったりすると、ついつい感謝を忘れがちです。
でも、そんな困難なときこそ感謝の思いを持ち、しっかりと伝えることで、よりよい生活が送れます。
心理学的にも、社会学的にも感謝することには大きなメリットがあります。
幸福感の向上、ストレスの軽減、コミュニケーションの向上、免疫力の向上など、たくさんあります。
子育て期間も、親と共に過ごす時間もたっぷりあるようで、過ぎてみれば一瞬です。
後悔が残らないように、普段から感謝することを習慣にしていきましょう。