「笑い」と「感謝」がシニアの健康寿命を延ばす

高知県大豊町での講演風景

私たちは、気づけば長い人生を歩み、人生経験を積み重ねてきました。
責任が重くのしかかった仕事を勤め上げ、子育ての苦労、親の介護、そして今は自分自身の健康への不安。

もっと楽しく過ごせると思っていたのに、意外に不自由に感じる毎日。
もっと笑って過ごせると思っていたのに、気づくとぼんやりと不安な気持ちを抱えている。

そんなふうに感じてしまうのは、何もあなただけではありません。

先日、高知県大豊町で開催された社会福祉大会で、私の消防士時代の現場体験での体験をお話しました。

高知県へは、実に40年振りに来ました。
まだ瀬戸大橋もない時代です。とても楽しみにして、機材を車に載せて約4時間半かけてやって来ました。

心に余裕を持ち、今ある眼の前の幸せにあらためて感謝することが、幸福感を高め、同時に免疫力を高めることになるということを知ることになるきっかけとなればとても嬉しいです。

消防士として多くの現場を経験してきた中で学んだのは「幸せは つかむものではなく 気づくもの」
この言葉の意味を、この日は会場の皆さんといっしょに考えました。

目次

心の余裕が生まれるストレス解消法

ヨガをする2人の女性

日常生活で疲労やストレスが蓄積すると、心に余裕がなくなり、言わなくていいことを言ってしまうことがあります。
これは誰にでも経験があることだと思います。大切なのは、この事実を認識し、対策を講じることです。

心身ともに免疫力を上げていくことが重要になります。

免疫力というと身体的な健康を思い浮かべがちですが、心の免疫力も同じように大切です。
心の免疫力が低下すると、ちょっとしたことでイライラしたり、人を責めたくなったりします。

逆にいいますと、気持ちがイライラしたり、誰かを責めたい気持ちなったりすることは、疲労やストレスが蓄積したことへの警戒アラートです。

ふだんから意識して自分の感情に耳を傾けるようにしましょう。

効果的なストレス解消法には、こんな方法があります。

飲食の節制と十分な睡眠や休養
規則正しい食事と質の良い睡眠は、心の安定の基盤です。夜更かしや暴飲暴食は、翌日の感情コントロールに大きく影響します。

リラクセーション(呼吸法、ヨガ、瞑想など)
深呼吸や瞑想は、副交感神経を活性化させ、心を落ち着かせる効果があります。1日5分でも続けることで、ストレス耐性が向上します。

趣味・適度な運動
趣味や、ウォーキング、ガーデニングなどの適度な運動は、ストレスホルモンの分泌を抑制し、生きがいを感じさせてくれます。

感情の表現(笑う、泣く)
シニア世代になると、感情を素直に表現することがより大切になります。
友人、家族と一緒に笑ったり、感動した時に素直に泣いたりすることで、心の健康が保たれます。

今回の講演でも、オリジナルソングを聴いていただきました。
大笑いする皆さんの顔を見ながら歌いました。

そして、終盤に大切な人に思いを言葉にして伝えることの大切さをテーマにした「いなくなるなら」では、たくさんの方がハンカチで涙を拭いていました。

こちらのブログ記事「笑いで認知症予防 – 明るく楽しく健康づくり」に、笑いで免疫力を高めることについて書いています。

人とのつながりを大切にする
シニアになると、一人で抱え込みがちになります。
お一人住まいの方は、家族に会いに出かけたり、リモートで話したり、古い友人、近所の人たちとのつながりを大切にし、心の内を素直に話すことで、心の負担が軽減されます。

これらの方法で心に余裕を持つことができれば、自然と人を思いやる言葉が出てくるようになり、免疫力も上がります。

人生経験が教えてくれた「幸せに気づく」ということ

三世代の家族の笑顔

消防の現場活動で学んだ大切な教えがあります。

それは「幸せは つかむものではなく 気づくもの」ということです。この気づきは、悲惨な現場での活動体験が増えれば増えるほど、強く胸に刻まれました。

救急車で病院に搬送される父親に、必死に語りかける家族の姿。
火災で長年住み慣れた家を失い呆然自失の人の表情。
大切な家族を失い、悲しみのどん底に落とされた人の叫び声。

それらの一つ一つが、当たり前だと思っていた日常がいかに貴重なものかを教えてくれました。

毎朝、家族が「おはよう」と声をかけてくれること。
孫が「おじいちゃん、おばあちゃん」と駆け寄ってくること。
家族と、友人と、近所の人と何気ない会話を交わしながら過ごす穏やかな時間。

これらすべてが、実は計り知れない価値を持つ「幸せ」だったのです。

人生経験が教えてくれた感謝の大切さ

家族へ感謝の花束を渡す画像

交通事故で亡くなった幼い子どもを搬送した経験があったからこそ、成人した自分の子どもたちに「生まれてきてくれてありがとう」と伝えることができました。
その小さな命が教えてくれたのは、後年子どもたちが無事に成人し、今では孫たちを連れてきてくれることが、どれほど奇跡的で尊いことかということでした。

バイクの単独事故で亡くなった若い方を救急搬送した経験があったからこそ、今では亡き母に「生んでくれてありがとう」と伝えることができました。
その若い命を前にしたとき、苦労しながら自分を産み育ててくれた母への感謝の気持ちが溢れてきたのです。

そして父にも「育ててくれてありがとう」と伝えました。
照れくさくて長年言えなかった父への感謝を、言葉にして伝えることの大切さを、現場での経験が教えてくれたのです。

これらの言葉を伝えたとき、家族の表情がどれほど輝いたことか。
そして、私自身の心がどれほど軽やかになったことか。
感謝の言葉は、伝える側にも受け取る側にも、計り知れない力を与えてくれるのです。

シニアの感謝が健康寿命を延ばす科学的根拠

書道に打ち込むシニアの女性

近年の研究によると、幸福感が寿命を延ばすことが科学的に証明されています。「感謝」を日常的に表現することで健康寿命が大幅に伸びるという研究結果が注目されています。

感謝の気持ちを持ち、それを言葉にして表現することで、以下のような生理的変化が起こります:

  • ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑制される
  • 幸せホルモン(セロトニン、オキシトシン)の分泌が促進される
  • 免疫機能が向上する
  • 血圧が安定する
  • 心拍数が安定する

これらの変化は、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病のリスクを下げ、結果として健康寿命の延伸につながるのです。

つまり、シニア世代が家族や孫たちへの感謝を日常的に表現することは、単なる道徳的な行為ではなく、科学的根拠に基づいた最高の健康法でもあるのです。

まとめ

笑顔で食事する親子

「言葉は思いを伝えるためにある」ということを思い知らされた現場を経験しました。
不用意に放ったたったひと言が、人の命を奪ってしまった現場にも出動しました。
亡くなった子どもに、必死になって愛情を伝える父親の声に涙を流したこともありました。

本来、言葉とは大切な人に愛情を伝えるために生まれてきたのではないか、と私は考えるようになりました。

せっかく大きな力を持つ言葉を使うなら、人を傷つけたり苦しめたりすることに使うより、出会う人が笑顔になる言葉を口にしていきましょう。

どんな世代の人でも、幸せは遠くにあるものではなく、今この瞬間、身近にあるということ
それに気づき、感謝の気持ちを言葉にして伝えることで、人生はより豊かなものになります。

今日から、「ありがとう」を意識して伝えてみませんか。
感謝の言葉が、きっとあなたと大切な家族の人生をより豊かにし、健康寿命を大幅に延ばしてくれるはずです。

今回は、たくさんのスタッフ方々にお世話になり、とても温かい感想の言葉をたくさんいただきました。
そして参加された方が次々に声をかけてくださいました。
とてもあったい気持ちで帰路につきました。
ありがとうございました。またお会いしましょう!

項 目内 容
タイトル令和7年度大豊町じんけん講演会
日 時2025年9月7日(日)
演 題救急現場が教えてくれた命の輝き
~心を支える人のつながり~
場 所高知県大豊町 大豊町総合ふれあいセンター
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